【第十六回】茶屋の名残がいっぱい
3日目 雑色~新子安 ④
womoライターで寄り道担当の妻【こしあん】と、下調べと三脚担当の夫【つぶあん】。
「あんこは、こしあんかつぶあんか」のような、ある意味どうでもいいけれど永遠のテーマを時おり議論しながら、東海道五十三次を“コマ切れ”で歩きます。お供は磐田市イメージキャラクター「しっぺい」です。
日頃まったく運動せず、極度の面倒くさがりである二人が、どこまで頑張れるか、どうぞ笑いながら見守ってください。(筆者:つぶとこし)
第十六回 茶屋の名残がいっぱい
前方になかなか立派な橋が見えてきました。鶴見川橋です。
東海道を歩くようになって気づいたことのひとつ、橋の上は川を渡る風が冷たくて、かなり涼しいということ。歩き疲れた体にはとても有り難い場所。気力ゲージ・体力ゲージ共にアップします!
橋を渡った先にあったのは『鶴見橋関門旧跡』。
安政6(1859)年6月、横浜開港とともに神奈川奉行は、外国人に危害を加えることを防ぐため、横浜への主要道路筋の要所に関門や番所を設けて、横浜に入る者を厳しく取り締まったとのこと。文久2(1862)年8月の生麦事件発生により、さらに警備は厳しくなり、川崎宿から保土ヶ谷宿の間に20か所の見張番所が設けられたとのこと。今では考えられないですけどね。
生麦事件については、この先に事件発生現場があるので、次回詳しくご紹介します。
いかにも旧道らしい良いカーブが見えてきたところに『信楽茶屋』というラーメン屋さんがあります。
【らーめん信楽茶屋】
江戸時代にこの場所に『信楽茶屋』という茶屋があり、とても繁盛していたそうです。その由緒ある茶屋を復活させたいという熱い想いでオープンしたラーメン屋さん、と知ったら、立ち寄らないわけにはいかぬ!
というわけで、つい2時間ほど前に川崎宿の名物「奈良茶飯」を食べたばかりですが、ラーメン、がっつり食べちゃいました~。
歩いているとね、思ってる以上にお腹すくんですよ~。
一番人気だという「岩のり煮たまご塩ラーメン」。
スープはエビやホタテ、貝類など、海鮮の旨味が広がる塩味。磯の香りあふれる岩のりがどっさりのっていて、スープでとろけた岩のりがもちもちの麺にからみます。個性的でありながら、尖った部分はなく、歩き疲れた体にしみる優しい味わいです。
お腹いっぱいになりすぎて、やや鈍い足取りで京急鶴見駅方面へと向かいます。
次のお目当ては、江戸時代からの銘菓「よねまんじゅう」です。
民謡『お江戸日本橋』の中でも「六郷渡れば川崎の万年屋、鶴と亀とのよねまんじゅう、こちゃ神奈川急いで保土ヶ谷へ」と唄われるほど有名で、鶴見周辺ではよねまんじゅうを売るお店がたくさんあったそうです。
明治に入り、街道を歩く人が少なくなると、よねまんじゅうを売るお店もなくなっていきました。しかし昭和57(1982)年に『清月』というお店が発起人となり、鶴見の菓子組合でよねまんじゅうを復活させたそうです。
【御菓子司 清月】
http://homepage2.nifty.com/seigetu/new/top.html
『清月』は、ちょっとだけ東海道からはずれた京急線の線路沿いにあり、駅のガード下の分かりにくい交差点に迷いながらもお店を発見すると……
し、し、閉まってるではないか!!!
定休日は確認したのに……なぜ……近づいてみると貼り紙が。
……臨時休業でした……うううぅぅぅ。GW明けだしね、しょうがない。いつかまた来ます。
ガックリ肩を落としながら東海道に戻り、京急鶴見駅前の商店街を進みます。ここらへんはいくつも道が分かれているので、けっこう迷いやすいですね。
いろんなお店があって賑やかだなぁ、鶴見には初めて来たけれど、そこそこ東京に近いし、暮らすにも結構便利な街だなぁと思いながら歩いていると、すーーーっごく魅力的な看板を発見!
「珈琲あんぱん」!!! もう絶対、買う。誰にも止められない。問答無用で入店。小さいお店ながら、店内はお客さんでいっぱい。これは期待できます。
珈琲あんぱんを見つけると、「ご購入はお一人様20個まで」と書かれている。20個って、どんだけ~。
無事に購入し、外にあったテーブル席に座ると、このお店は古くは『覇王樹(さぼてん)茶屋』という茶屋だったことが判明。街道を歩く旅人で賑わっていたそうです。
偶然立ち寄ったお店にそんな由緒があったとは!!!
今は『エスプラン』という名前のパン屋さんですが、覇王樹茶屋から数えると11代目になるそうです。
【ESPLAN/エスプラン】
この時はお腹いっぱいだったので、家に帰ってから食べましたが、これが想像以上の美味しさ!! ほろ苦いコーヒーあんとあっさりめの生クリームが絶妙で。いや~、これなら20個以上買いたくなるのもわかります。近所にあったら毎日通っちゃう。
あまり美しくない写真でスミマセン……。ちゃんとナイフで切ればよかった(>_<) こういうところに大雑把さが出てしまいます……。
当初のお目当てだった「よねまんじゅう」は買えなかったけれど、思いがけず、東海道の歴史を大切にするお店の美味しい新名物に出会えたのは、本当に嬉しい出来事でした。
まさに、捨てる神あれば拾う神あり。
つづく
【つぶとこしがこれまで歩いたルート】
連載履歴
つぶとこしの『コマ切れ東海道あるき旅』 文章担当の妻【こしあん】と写真担当の夫【つぶあん】。日頃まったく運動せず、極度の面倒くさがりである二人が、東海道五十三次を“コマ切れ”でゆるゆると歩きます。