WOMO

Original

【第十七回】さまざまな時代の歴史の重みにふれる

3日目 雑色~新子安 ⑤

womoライターで寄り道担当の妻【こしあん】と、下調べと三脚担当の夫【つぶあん】。
「あんこは、こしあんかつぶあんか」のような、ある意味どうでもいいけれど永遠のテーマを時おり議論しながら、東海道五十三次を“コマ切れ”で歩きます。お供は磐田市イメージキャラクター「しっぺい」です。
日頃まったく運動せず、極度の面倒くさがりである二人が、どこまで頑張れるか、どうぞ笑いながら見守ってください。(筆者:つぶとこし)

「コマ切れ東海道あるき旅」連載一覧

第十七回 さまざまな時代の歴史の重みにふれる

賑やかな鶴見銀座商店街を進んでいくと、国道15号(第一京浜)にぶつかります。


ここで一瞬、迷いそうになりましたが、国道を渡り、真ん中の細い道へと進みます。
何の変哲もない住宅街を歩き、ふと横を見ると現れたのがコレ!!!


暗くて怖すぎるんですけど(*_*)

昭和初期で時が止まったかのような廃墟感。しかしここは今も現役で利用されている、JR鶴見線の「国道駅」(無人駅)のガード下なんです。
初見の私たちは、あまりの魔界ぶりに足を踏み入れる勇気はありませんでしたが、地元の人にとっては、向こう側の国道15号とこちら側の生麦魚河岸通りを結ぶ便利な通路。今も現役で営業している焼鳥屋さんもあるようです。
戦後すぐの昭和ムード満点のガード下、やはり、映画やドラマのロケにもよく使われているそう。

また、外壁にはいくつかの穴が開いており、実はこれ、機関銃が撃ち込まれた痕で、第二次大戦中、アメリカ軍による横浜大空襲の際にできたものだとか。

すぐそこには、あんなに賑やかな商店街があり、少し遠くには高層マンションなども建ち並ぶ住宅街。
最初は暗くて怖いだけのガード下と思っていましたが、ここだけぽっかりと、人々を過去へと誘う異空間は、忘れてはいけない歴史を思い出させてくれる貴重な場所でした。
これもたぶん、東海道を歩かなければ知ることもなかった場所。


生麦魚河岸通りを進むと、京都の伏見稲荷大社の簡易版みたいな鳥居が見えてきました。「道念稲荷神社」です。江戸時代末期には創建されていたようで、毎年6月第一日曜に行われる「蛇(じゃ)も蚊(か)も祭り」は300年以上続く伝統行事で、横浜市の無形民俗文化財に指定されています。長さ約20mの萱で作った大蛇を担ぎ、「蛇も蚊も出たけ、日和の雨け、出たけ、出たけ」と大声で唱えながら町内を回るというもの。かつて悪疫が流行したとき、萱で作った蛇体に悪霊を封じ込めて海に流したことに始まると伝えられています。

そして10分ちょっと歩くと、「生麦事件発生現場」に到着。今は普通の民家となっていました。
「生麦事件」。遠い昔、歴史の授業で習ったけれど、ネーミングにインパクトがあるだけで、内容はあんまり覚えていない……。
はい、ここでおさらいです。


文久2年(1862年)8月21日、薩摩藩の島津久光の一行が江戸からの帰路、東海道沿いの生麦村で、川崎大師へと向かうイギリス人4人と遭遇。イギリス人が馬を下りずに行列の通行を妨害したとして、藩士が刀で切りつけて1人が死亡、2人が負傷。イギリスは幕府・薩摩藩に賠償請求と藩士の引き渡しを要求したが、薩摩藩はそれを拒み、薩英戦争に発展。この戦いではイギリス側のほうが損害が大きかったものの、イギリス・薩摩の双方に、お互いのことをよりよく知ろうとする機運が生まれ、力を認め合い友好関係を深めていく。近代化の必要性を痛感した薩摩藩は、攘夷論から開国論に転じ、明治維新の流れができたと言われる。

うんうん、なんか思い出してきましたね!

こちらが明治時代の生麦事件発生現場です。


【長崎大学付属図書館 幕末・明治期日本古写真メタデータ・データベース】より


発生現場から10分ほど歩いたところに「生麦事件碑」があります。


ちょうど向かい側にはキリンビールの横浜工場があります。工場見学ができて、レストランなども併設されているようで、「あー、ビール飲みてーーー、ちくしょーーー」と叫びながら、ひたすら歩き続けなければいけない悔しさ。


キリンビール横浜工場


なぜここまでして歩いているのか、また疑問が湧いてきたよ……。自分達で勝手に始めたことだけどね……。
できたて生ビールに後ろ髪をはげしく引っ張られながら、なんとか歩き出します。

頭上には何やら建設中の道路が。2017年3月に開通予定の高速道路・横浜北線を造っているようで、この辺りはちょうど生麦ジャンクションができるみたいです。

最後の力をふりしぼり、第一京浜をよろよろと歩き、途中のコンビニでユンケルを飲むつぶあん。
今回は京急線の新子安駅をゴールとしました。


これにて3日目の旅は終了。京急雑色駅~新子安駅まで約10km、休憩・昼食・かわさき宿交流館の見学時間等をすべて含め、約6時間の旅でした。
さらにこの後、横浜駅まで電車に乗り、予約した高速バスの時間までインターネットカフェで休憩がてら時間をつぶし、ようやく帰宅の途についたのでございます……。もう、ヘトヘトです(-_-;)


つづく

【つぶとこしがこれまで歩いたルート】

連載履歴

「コマ切れ東海道あるき旅」連載一覧

更新日:2016/10/3
コラムシリーズイメージ

つぶとこしの『コマ切れ東海道あるき旅』 文章担当の妻【こしあん】と写真担当の夫【つぶあん】。日頃まったく運動せず、極度の面倒くさがりである二人が、東海道五十三次を“コマ切れ”でゆるゆると歩きます。

よみものシリーズ