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【第十一回】1ミリもふざけられない雰囲気

2日目 鮫洲~雑色 ②

womoライターで寄り道担当の妻【こしあん】と、下調べと三脚担当の夫【つぶあん】。「あんこは、こしあんかつぶあんか」のような、ある意味どうでもいいけれど永遠のテーマを時おり議論しながら、東海道五十三次を“コマ切れ”で歩きます。お供は磐田市イメージキャラクター「しっぺい」です。日頃まったく運動せず、極度の面倒くさがりである二人が、どこまで頑張れるか、どうぞ笑いながら見守ってください。(筆者:つぶとこし)

「コマ切れ東海道あるき旅」連載一覧

第十一回 1ミリもふざけられない雰囲気

「涙橋」と呼ばれる浜川橋から歩くこと10分、「鈴ヶ森刑場跡」に到着しました。



江戸時代から明治初めの約220年の間に、10~20万人もの罪人が処刑されたと言われています。処刑の方法は、火炙り、磔(はりつけ)、釜茹で、水磔、斬首など、かなり残酷であり、火炙台や磔台の跡、首洗いの井戸などが残されています。

江戸時代は10両盗めば死刑と言われていました。江戸庶民の年収が20~30両なので、現在の価値に換算すると、10両は200万円くらいでしょうか。打ち首の後、見せしめのために鈴ヶ森で3日間さらし首にされたり、火炙りや磔の場合は、市中引き回しの後、鈴ヶ森で処刑されたと言われています。


こういうのを見ると、今は罪人に対して優しくなったよなぁとも思います。罪を重くすればいいってものでもありませんし、冤罪などもあるので、単純な問題ではないですけど。


供養塔もたくさん立てられていて、木々も多く、この場所だけ異空間のようです。処刑された人の4割は冤罪だったとも言われているそうで、その無念さや悲しみが充満しているようにも思えました。


霊感とかまったくないですけど、なんかもう、ただならぬ空気が漂っていて、二人とも無口です(*_*) 絶対、ふざけたりしちゃいけない雰囲気。

写真撮るだけでもめちゃくちゃ緊張するよう。
「この石の上で生きたまま焼き殺された」とか「角柱に縛りつけて刺殺した」とか、さらっと書かれていてドキッとするよう。


ここで処刑された人の中で有名なのは、歌舞伎や落語、映画などさまざまな作品で取り上げられている「八百屋お七」。
自宅の八百屋が火事になり、親とともにお寺に避難したお七。そこで寺小姓と恋仲になります。店が建て直されて寺を離れるも、想いはつのるばかり。また火事になれば寺で暮らせると考え、寺小姓に会いたい一心で自宅に放火してしまいます。……ってお七、それはダメに決まってるでしょう。ものすごい思考回路です。他に会いに行ける方法はなかったのでしょうか。いくらロマンティックが止まらなくても、放火はダメです。
火事はボヤであったものの、お七は放火の罪で火炙りにされてしまいました。



一説によると、当時お七は16歳になったばかり。15歳以下は減刑される規定があったそうで、不憫に思った奉行が「おまえはまだ15歳だろう?」と促すも、お七は自分は16歳であると主張し、罪を受け入れたそうです。


「鈴ヶ森刑場跡」は心霊スポットとしても有名らしいですが、実際にこの地に立つと絶対に面白半分で訪れてはいけない場所、と強く思いました。線香や花が手向けられており、すぐ横にはお寺があります。手を合わせて心から冥福を祈りました。



また少し歩くと、しながわ水族館が見えてきました。


そろそろお腹が減ってきたので、とある天ぷら屋さんに入りました。明治から続く老舗のようで、店構えも立派です。老舗のわりには気取りのない雰囲気でお値段もそんなに高くなく、店内も賑わっていました。


天丼を注文し、お味噌汁は別料金ということにちょっと「えっ…?」と思いながらも、温かいものがほしかったし、せっかくなので注文。ほどなくして、目の前に丼が運ばれてきました。ワクワクしながらフタを開けると……あれ、なんか衣がフニャっとしてる……?
いやいや、そんなまさかと思って口に入れても、サクっとした歯ごたえもなく、海老も小さくて、衣ばかりという印象。
「サクサクだけが天ぷらじゃない、これが昔からの江戸前の味なんだ」と言われたらそれまでですが、残念ながら、サクサク派の私たちの好みではありませんでした。
一番美味しかったのは漬物です(*_*)
接客は良かっただけに残念です。
これならば、半分の値段で食べられる、天丼専門の某チェーン店のほうがよっぽど美味しい(>_<)


美味しい食事や名物に出会うことがこの旅のひとつの楽しみなので、なんとも言えない気持ちで店を後にしました。歩き疲れた体に余計な疲労感が襲う……。


気を取り直して歩き始めると、国道と旧道の分かれ道が見えてきました。


左の道に入ると、旧東海道の面影を残す「三原(美原)通り」です。商店街の店構えが往時を思わせる雰囲気に整備されており、とてもワクワクします。


三原通りについては、次回、詳しくご紹介します!


つづく

【つぶとこしがこれまで歩いたルート】


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更新日:2016/10/3
コラムシリーズイメージ

つぶとこしの『コマ切れ東海道あるき旅』 文章担当の妻【こしあん】と写真担当の夫【つぶあん】。日頃まったく運動せず、極度の面倒くさがりである二人が、東海道五十三次を“コマ切れ”でゆるゆると歩きます。

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