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【第十四回】川崎宿の名物に悶絶

3日目 雑色~新子安 ②

womoライターで寄り道担当の妻【こしあん】と、下調べと三脚担当の夫【つぶあん】。
「あんこは、こしあんかつぶあんか」のような、ある意味どうでもいいけれど永遠のテーマを時おり議論しながら、東海道五十三次を“コマ切れ”で歩きます。お供は磐田市イメージキャラクター「しっぺい」です。
日頃まったく運動せず、極度の面倒くさがりである二人が、どこまで頑張れるか、どうぞ笑いながら見守ってください。(筆者:つぶとこし)

「コマ切れ東海道あるき旅」連載一覧

第十四回 川崎宿の名物に悶絶

江戸より四里半(約17.7km)、2番目の宿場町・川崎宿に到着です。
京都へ向かう旅人にとっては昼食、休憩の地として。江戸に向かう旅人にとっては、六郷の渡しをひかえた最後の宿泊地として。また川崎大師の門前町としても賑わっていました。

旅籠や茶屋がたくさん連なり、なかでも『万年屋』は大名なども利用し、本陣が廃れたほど人気だったとか。幕末のアメリカ総領事ハリスも「暗くて不潔な本陣よりも明るくて清潔な万年屋に泊まって良かった」と絶賛する手記を残しているそう。


万年屋は残念ながら今はもう残ってはいませんが、この先の『東海道かわさき宿交流館』に、万年屋を模して作った休憩スペースがあります。交流館までの道のりも、本陣跡の案内板などがきちんと整備されていて、川崎宿を盛り上げようという工夫が心地いい町です。



こちらが『東海道かわさき宿交流館』です。
2013年10月にオープンした、まだ新しい施設で、入館無料というのも嬉しいポイント。



入るとすぐ『万年屋』風の休憩スペースがあります。こちらに座って、川崎宿についての簡単な解説映像が見られます。


当時の街道の様子を再現したミニチュア人形も展示されています。味があってかわいいです。

2階に上がると、江戸時代の川崎宿の街並みを再現したジオラマや川崎宿にまつわるエピソード映像、広重の東海道五十三次の浮世絵解説などが展示されています。


私たちにとってはとても楽しい施設でしたが、土曜日だというのに他のお客さんはほとんどおらず、ボランティアガイドのおじさんが待ち構えるように立っていて……予想通りグイグイ来られました(^_^;)

がっつりマンツーマンで解説してくれます。いや、まぁ、いろいろな話を聞けて有り難いんですけどね……。人見知りで恥ずかしがり屋で口下手なもんで、こういう場面は人一倍緊張して疲れちゃうんですよ。

さらに、旅人の衣装を着て「六郷の渡し」の浮世絵パネルで記念撮影ができる場所があるのですが、「せっかくだから衣装着て記念撮影しなさいよ、撮ってあげるから!」と、グイグイ押されるがままに……(^_^;)

いや、まぁ、結果的に良い思い出になったので、いいんですけどね……。無料ですし……。

こちらが顔はめパネルです。粋な旅人気分でどうぞ!


館内をひと通り見学したあと、旅の記念に「広重 東海道五拾三次」を購入。一枚一枚、浮世絵の説明がされていて、とっても興味深い内容です。

めくるたびに、京都まで先はまだまだ長いなぁ……と軽く絶望し、遠くを見つめたりもしますが、スタンプラリーのようにクリアしていく楽しさもあります。


さて川崎宿名物「奈良茶飯」は、こちらの交流館でもお土産として売られていますが、二軒隣りの和菓子屋さんのカフェスペースで奈良茶飯が味わえるとのこと。せっかくなのでそちらに行くことに。


「奈良茶飯」とは、お米に炒った大豆や小豆、焼いた栗、粟などを加えてお茶で炊いた炊きこみご飯です。なぜ川崎なのに【奈良】? と思いますよね。

もともとは奈良の興福寺や東大寺において食されていたのが始まりとされています。味わいと腹持ちのよさから、江戸時代に外食文化の先駆けとして広く愛されていたそうです。

川崎宿では『万年屋』によって提供され、十返舎一九の「東海道中膝栗毛」でも紹介されるなど、大人気の名物だったとか。


こちらの和菓子店『東照(とうてる)』さんで、「奈良茶飯風おこわ」が味わえます。

「東照」ホームページ

http://www.tohteru.com/okowa/index.html


店内もシックで素敵ですぅ。テンション上がりますぅ。ずらりと並ぶ和洋菓子に目がくらみますぅ。


前菜(!)にはお菓子のサービス。手前の三角形のお餅っぽいものは「かわっぴら餅」という名物で、写真だと見た目はイマイチですが、これが、むちゃくちゃ美味しいんです! 問答無用でお土産に決定です。

薄いぬれせんべい風の大福といえばよいでしょうか。焼きしょうゆの香ばしさがたまらない、もっちりとした生地の中にあんこがはさまっていて、大変美味しゅうございます~。ありそうでなかった味のハーモニー。そしてあんこは【こしあん】!


「かわっぴら餅」の美味しさに悶絶していると、「奈良茶飯風おこわ」が登場。江戸時代の名物なので、正直、そんなに美味しくもないだろうなぁと、あまり期待はしていなかったのですが……


これがもう、本当にびっくりするほど美味しくて!!
ひと口食べて「うめ~~~」と、悶絶。

こちらの奈良茶飯は、
“うるち米ともち米に勝栗、炒った大豆、粟や小豆を加え、お茶の風味でおこわに仕上げました。素材の味わいを引き出す伝統的な製造法と味付けに現代風アレンジを用いております。”
とのこと。

炒った大豆の香ばしさ、栗や小豆の自然な甘さ、おこわのもちもち感と塩加減が絶妙なんです。歩き疲れた体にもちょうどいい味わい。

お店の方の接客もとても気持ちよくて。
東海道歩きをしなければ、おそらく訪れることもなかった川崎。
そこで素敵なお店に出合えたことが、素直にうれしくて、時代を超えて名物が受け継がれていくことの大切さや有り難さをしみじみと感じました!


つづく

【つぶとこしがこれまで歩いたルート】

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「コマ切れ東海道あるき旅」連載一覧

更新日:2016/10/3
コラムシリーズイメージ

つぶとこしの『コマ切れ東海道あるき旅』 文章担当の妻【こしあん】と写真担当の夫【つぶあん】。日頃まったく運動せず、極度の面倒くさがりである二人が、東海道五十三次を“コマ切れ”でゆるゆると歩きます。

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