【第10回】秋の夜長に……「JFZ」なミステリー3選
秋の夜長をいかがお過ごし?
筆者:こしあん
映画・海外ドラマ、読書、お笑い、カメが大好き。特技はイントロクイズ(80年・90年代ソング限定)。
怖がりのくせにホラーとミステリーが大好きで、生まれ変わったらFBI捜査官になりたい。
休日にどれだけ家にこもっていてもまったく苦にならない超インドア派。
ゆるい解説と小学校から上達していないイラスト(ときどき)で、好きな映画を紹介していきます。
「JFZ」なミステリー3選
秋の夜長をいかがお過ごし? 豆大福ひとつで心を許す女、こしあん姉さんよ。
唐突に「ミル姉さん」風に始まったのは、「秋の夜長をいかがお過ごし?」まで書いて急に思い出したからよ。
「懐かしい~」って思ったあなたはきっと30代以上ね。
あのアンニュイな口調を思い出しながら、読んでみてぇ。
あんまりピンときていない若者は、グーグル先生に聞いてみるといいわ。
じゃあ、始めるわよ。
今回はちょっと趣向を変えて、秋の夜長にぴったりの「JFZ」なミステリー3選をお届けしちゃうわ。
「JFZ」なんだと思う?
J 地味だけど
F ふいに思い出して
Z ゾワゾワする
そんな映画よ。
「人生に刺激がたりないわ~」と嘆くあなた、刺激を求めてめんどくさい恋愛なんかにハマったりする前に、ミステリー映画でハラハラ・ゾクゾクするといいわぁ。
真実の行方(1996年)
とにかく、エドワード・ノートン。どこ切り取っても、エドワード・ノートン。とてもデビュー作とは思えない怪演。
主演のリチャード・ギアを完全に食っちゃってるわ! リチャード・ギアも悔しかったんじゃないかしら……。私も一気にエドワード・ノートンのトリコになっちゃったわぁ。
彼が演じるのは、カトリック教会大司教の殺害容疑をかけられて逮捕される気弱な青年・アーロン。彼が現場にいたことは確かで、凶器を持っており、服も血まみれ。けれど、その時の記憶を失っている。その彼を弁護するのが、リチャード・ギア演じる敏腕弁護士のマーティン。
雨にぬれた子犬のようにおびえるエドワード・ノートンが、母性本能をくすぐるのよねぇ。
伏し目がちで自信なさげな様子に「守ってあげたい、助けてあげたい」、そう思わせるのに、あるきっかけで激しく動揺し、暴力的な人間に豹変するのよ!
不安げにおびえる表情、不敵な笑み、挑発的な態度……くるくると変わる彼の巧みな表情に、ゾワゾワすること間違いなし。
とってもよく練られたストーリーで、いくつも重なる演技の罠、どんでん返しの向こう側。
事件が起きて、その真実を探り、裁判をする、という王道ストーリーなのに、「えっ、どういうこと? あぁ、ソレ系ね~、ふむふむ、ちょっとありがちかしらねぇ……えっ、えーーーまさか?」とワクワクしながら引き込まれ、最後は「やられたーーー」ってひれ伏すことになるわ。
CURE(1997年)
人間の心を不安にさせ、不快感をあおる描写が抜群にうまい作品。
セリフで説明せずに映像と空気感で見せるうまさに「もおぉぉぉ」ってなるわよ。
刑事役の役所広司が、ファミレスで黙々と食事をするシーンとかも、なんだかわからないけれど不安をかきたてられるの。
独特の“間”と、空調や水が流れる音といった生活音、そして空っぽの洗濯機が回る音の不快感や不安感ったら!!!
普段の生活が怖くなるから、もうやめてえぇぇぇ。
人は皆、何かの感情を抑えながら生きている。その感情を噴出し、自分も一線を超えてしまうかもしれないという怖さを感じる作品。日常に潜む危うさを描いた傑作よ。
萩原聖人演じるあやしげな男・間宮にイライラさせられて、感情をかき乱されたら、あなたはもう暗示にかけられている……。
「あんたは誰だ?」
萩原聖人の怪演にゾワゾワと鳥肌たちまくりよ。
個人的には「リング」よりも怖いし、幽霊的なものは出てこないけれど、ジャパニーズ・ホラーの傑作だと思うわ。
怖さの中に、ある種の心の解放も描かれているの。
でも観終わった後もしばらくは、ジワジワとまとわりつくような恐怖感が残るから、覚悟をもって観るべし!
バニー・レークは行方不明(1966年)
これはまったく予想できないオチだったわ。
「ふいに思い出しちゃうトラウマ映画」に認定!
ラストシーンでの、とある登場人物の豹変ぶりがスゴイの。ひえぇぇぇってなって、コワイんだけどなんかちょっと笑っちゃう。
それから、オープニングの演出がスタイリッシュでセンス抜群。
ストーリーは……
アメリカからロンドンへ引っ越してきたシングルマザーのアン。兄が手配してくれた保育園に娘のバニーを預けて、数時間後に迎えにいくとバニーの姿はなく、保育園の園長や職員の誰も娘の姿は見ていないという。兄や警察とともにバニーの行方を捜すものの、バニーの存在を示すものが何ひとつ見つからず、アンの妄想ではないかと疑われはじめ……というもの。
白黒映画なので、静かな不気味さがジワジワと伝わってきて、登場人物がどいつもこいつも怪しく見えてくる!
バニーはどこに行ったの? そもそも存在するの? アンの精神状態ヤバくない? 兄も何か隠してるの? 保育園の園長もなんか意味深!
という感じで、ずっとドキドキしながら、早く早く教えて、真相教えてーーーってなるのよ。
そこにいない人物の存在を証明することや、自分の言葉を信じてもらうことの難しさを実感して、身震いしちゃうわ。
【今日の一口メモ】
どうだったかしら?
どの映画も派手な演出や大きな盛り上がりがあるわけではないけれど、ジワジワジワジワ引き込まれて、ラストに驚きが待っている作品ばかりよ。
人肌恋しくなるこの季節に、わざわざ寒気がするような映画を観なくても……なんて思ったあなた。
気になる相手がもしいたら、「観てみたいミステリー映画があるんだけど……」なんて誘ってみてもいいんじゃない?
その作戦、うまくいくように祈ってるわ。
じゃあ最後に、今日の一口メモ。
「スピード」のキアヌ・リーブスに憧れて、カシオの「G-SHOCK」を買った男に悪いヤツはいない。
今回紹介した映画とは全然関係なくなっちゃったわ。
じゃあ、またいつか会えるといいわね~、チャオ!!
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■真実の行方(1996年)
監督:グレゴリー・ホブリット
出演:リチャード・ギア、エドワード・ノートン
■CURE(1997年)
監督・脚本:黒沢清
出演:役所広司、萩原聖人、うじきつよし
■バニー・レークは行方不明(1966年)
監督:オットー・プレミンジャー
出演:キャロル・リンレー、キア・デュリア
隔週水曜更新。次回の更新は12/7(水)です。
WOMOシネマ伝道師こしあんの『ぐるぐるシネマ迷宮』 筆者だけの思い出調味料満載の懐かし作品から、あまり共感を得られないようなディープな作品まで、密かな魅力いっぱいのシネマ迷宮へようこそ。出口はたくさんあります。