WOMO

Original

【第17回】話題のアカデミー賞受賞作をご紹介……昨年のだけど

前代未聞の大トラブルにざわ…ざわ…

筆者:こしあん
映画・海外ドラマ、読書、お笑い、カメが大好き。特技はイントロクイズ(80年・90年代ソング限定)。
怖がりのくせにホラーとミステリーが大好きで、生まれ変わったらFBI捜査官になりたい。
休日にどれだけ家にこもっていてもまったく苦にならない超インドア派。
ゆるい解説と小学校から上達していないイラスト(ときどき)で、好きな映画を紹介していきます。

アカデミー賞ふりかえり

2017年2月27日(日本時間)、第89回アカデミー賞が発表されました。
最も重要ともいうべき作品賞で、誤って別の作品を発表してしまうという前代未聞の大トラブル!!

本当の作品賞は『ムーンライト』だったのに、プレゼンターが『ラ・ラ・ランド』と発表。実は手違いで、主演女優賞の封筒を渡してしまっていたのです。(主演女優賞は『ラ・ラ・ランド』のエマ・ストーン)

檀上ではすでに『ラ・ラ・ランド』陣営がスピーチを始めているというのに……。
漫画『カイジ』の専売特許「ざわ…ざわ…ざわ…」が、天下のアカデミー賞授賞式で見られるなんて!!
傍観者としてはちょっと面白かったですが、当事者の方々はフクザツですよね……。

主題歌賞、作曲賞、撮影賞、美術賞、主演女優賞、監督賞の6部門を獲得し、予想通りの圧勝ムードだった『ラ・ラ・ランド』。その流れでの、まさかの作品賞間違い。会場からは、どれだけの種類の「オーマイガー」が聞こえてきたことでしょう。
まるでコントのようなオチですが、歴史に残る授賞式だったのではないでしょうか。

さて、今年度のアカデミー賞作品は残念ながらまだ観ていないので、【昨年度】のアカデミー賞作品でお茶をにごしたいと思います。

昨年といえば、親愛なるレオ様が悲願の主演男優賞を受賞しました。1994年に『ギルバート・グレイプ』で助演男優賞に初ノミネートされてから22年。何度もノミネートされながらも、オスカーを手にすることができなかったレオ様。
受賞を知った瞬間、私、本気で泣きましたよ。向こうは私のことなんて1ミリも知らないけどね。

というわけで今回は、レオナルド・ディカプリオが主演男優賞を受賞した『レヴェナント 蘇えりし者』と、同じく昨年のアカデミー賞でブリー・ラーソンが主演女優賞を受賞した『ルーム』を紹介したいと思います。

レヴェナント 蘇えりし者(2016年)

面白いとか面白くないとか、ストーリーがどうとか役者がどうとか、そういったものがいい意味で気にならない、もはや映画という枠を超越した作品。

これ、どうやって撮影したん?! もう何もかもがスゴイ。本気の映画魂にただただ圧倒されます。

クマこえぇぇぇーーーっ!!!
観てるだけで腰抜かしそう。

レオ様は、けっこう序盤で森のクマさんにメッタメタのギッタギタにやられて瀕死の状態になり、「ううぅぅ」とか「ああぁぁ」とか「うおぉぉ」とか「ぐぬぉぉ」しか言わず、中盤で少し回復してからは一人で復讐に燃えているので、引き続きほとんどセリフもなく。しかし、言葉少なに、目と表情と全身で、何より魂で演技をしているのです。

もはや演技というよりも、実際の撮影の苛酷さによるリアルな反応でもありますが……。
ベジタリアンなのに本物のバイソンの生のレバーを食べ、極寒の地で裸になり、雪に埋まり、川に飛び込み、格闘シーンで鼻を折った後もそのまま撮影続行……。

一番びっくりしたのは、レオ様が死んだ馬のお腹をさいて、肉や内臓でも食べるの? と思ったら中身を出して……ぎゃー、入っちゃったよ! 馬の中に入っちゃったよ! 何なの、どういうこと? と「?」マークでいっぱいでしたが、なるほど、寝袋代わりにして寒さをしのいでいたのです。
スゴイ、スゴイよ、イニャリトゥ監督。あんた本当に、変態だな!(最上級のホメ言葉です)。

敵役のトム・ハーディも、撮影が辛すぎて監督と本気の殴り合いのケンカをしたとか。

徹底的に本物にこだわり、照明を一切使わず自然光のみで撮影するため、一日に撮影できる時間はわずか1時間。
苛酷なのに美しい大自然。そこで浮き彫りになる開拓者たちの野蛮さ。
スゴすぎて、言葉にならない。これは、観ないとわからない。とにかく圧巻の一言。

緊迫しっぱなし、力入りっぱなしの157分。心と体ごと作品の中に持っていかれるので、観終わった後はグッタリしちゃう。
そして、野性の心を刺激されたのか無性にお肉が食べたくなって、映画館帰りに「さわやか」に行き、げんこつハンバーグをむさぼり食べちゃったよ……笑

ルーム(2016年)

7年前にある男に誘拐されて「部屋」の中に監禁され、そこで生まれ育った5歳の息子・ジャックと暮らすジョイ。高い天窓からの空しか見ることができず、外の世界を知らないジャック。奪われた人生を取り戻すため、ジョイはすべてを賭けて息子と共に脱出することを決意するが……。

普通の映画であれば、監禁から脱出までを描き、「よかったよかった」で終わるところを、この映画は脱出した後のことまできちんと描いている、というかむしろそちらが主題となっているのが素晴らしいところ。

監禁されていた時とは違う種類の困難が、脱出後に待ち受ける。
「部屋」の中では必死に息子を守り、《母親》だったジョイは、脱出したことで自分の両親と再会し、《娘》という立場になり、失われた7年の歳月を取り戻していく。けれど、ジャックにとってはずっと母親。
そして、初めてみる新しい世界をどんどん吸収し、元気に成長していくジャックとは反対に、世間の好奇の目や実の父親の心ない言動に傷つき(でもこの父親の気持ちもわからなくもない)、心を閉ざしていくジョイ。

そんなジョイのさまざまな側面、複雑な心情を見事に演じたブリー・ラーソン。

現実はずっとずっと続く。「部屋」の中は監禁という苛酷な状況ではあるけれど、ある側面から見れば守られていたのかもしれない。でも、命懸けで手に入れた自由な外の世界のほうが辛いなんて、そんなことあっていいはずがない。
「部屋」の中で息子を守っていた母親を、今度は「部屋」の外で息子が母親を救い、本当の解放へと導く光になる。

単純に「感動作!」とはいえない、もやもやとした複雑な気持ちになる話。だからこそ、リアル。
でも人は、たった一人でも味方がいてくれたら、辛すぎる現実を生きていけるのかな、と思いました。

【今日のまとめ】

これをきっかけに、歴代のアカデミー賞受賞作品を観てみるのもいいですね~。
ここ10年くらいのアカデミー賞受賞作で、私が好きな作品は
2015年『6才のボクが、大人になるまで。』(助演女優賞)
2014年『ダラス・バイヤーズクラブ』(主演男優賞・助演男優賞ほか)
2009年『スラムドッグ$ミリオネア』(作品賞・監督賞・作曲賞ほか)
2007年『ディパーテッド』(作品賞・監督賞・脚色賞・編集賞)
2006年『ブロークバック・マウンテン』(監督賞・脚色賞・作曲賞)
こんなところでしょうか。

ほかにもまだまだ観ていない作品もたくさんあるので、週末、おうちにひきこもって観たいと思います。外出すると花粉がおそってくるからね!


---------------------------------------------
■レヴェナント 蘇えりし者(2016年)
監督・脚本・製作:アレハンドロ・G・イニャリトゥ
出演:レオナルド・ディカプリオ、トム・ハーディ
【公式HP】

■ルーム(2016年)
監督:レニー・アブラハムソン
出演:ブリー・ラーソン、ジェイコブ・トレンブレイ
【公式HP】

隔週水曜更新。次回の更新は3/15(水)です。 

更新日:2017/3/1
コラムシリーズイメージ

WOMOシネマ伝道師こしあんの『ぐるぐるシネマ迷宮』 筆者だけの思い出調味料満載の懐かし作品から、あまり共感を得られないようなディープな作品まで、密かな魅力いっぱいのシネマ迷宮へようこそ。出口はたくさんあります。

よみものシリーズ