なんだか、おもしろくなってきた! 今こそ、静岡茶
【womo5月号|巻頭特集】ワインのように産地や生産者にこだわる。コーヒーのように、品種にこだわる。新しいいれ方で飲んでみる。今、そんなムーブメントがやってきている静岡茶をもっと楽しもう。
県外へ、さらに世界へ 静岡茶の未来を担う、若き茶商たちに聞く
伝統ある静岡の茶業界には、イマドキの感性で静岡茶のさらなる発展、普及に力をそそぐ若手が増えている。その舞台は海外にも。静岡のお茶をこよなく愛する茶商3 名に、その魅力について話を聞きました。
(写真左)
株式会社平岡商店
取締役
平岡 佑太さん(30歳)
オクシズの玉川地区や松野地区のお茶を扱う。5年前からお茶の仕事に携わる。現在はドイツやイタリアへの販路拡大にも注力。日頃から産地の香りを意識してお茶を飲む。
(写真中央)
有限会社和田長治商店
取締役
和田夏樹さん(30歳)
炭火仕上げなど昔からのお茶づくりを大切にしている。日常的にアンテナを張り、他業種とも積極的なコミュニケーションを取る。「静岡茶を世界に」Instagramでも発信中。
(写真右)
株式会社本目浅吉商店
専務取締役
本目哲也さん(31歳)
1868年創業のお茶問屋4代目。海外での商社勤務の後、現職に。静岡茶は数ある嗜好品の1つ、という考えから他県や外国のお茶も楽しむが、朝晩はやはり一杯の静岡茶。
いろいろ飲み比べて 静岡茶の魅力を知る
静岡と並んでお茶どころと言われる京都や鹿児島のお茶に比べ、味わいがすっきりしている静岡茶。ひとくちに静岡茶と言っても、「本山茶」「川根茶」「掛川茶」など、さまざまな産地のお茶があり、それぞれに特徴がある。さらに、製茶問屋ごとの独自の火入れの仕方やブレンドで、味や香りも変わってくるそう。
「だからこそ、いろいろと飲み比べることで、お気に入りのお茶を見つける楽しさがあると思います」(平岡さん)。
「一方で静岡茶でも単一の産地や農家さんのお茶、いわゆるシングルオリジンなどストーリーのあるお茶を求める声も増えているように感じます」(本目さん)。
今、海外でもこうした静岡茶が認められつつある。高品質で美容と健康に良いというイメージもひとつのポイント。
「地元のこんなに貴重な資源、文化を仕事にできることを誇りに思っています」(本目さん)。
3人は、お茶のいれかた教室や呈茶イベントも積極的にこなしている。
「地元の人たちと直接触れ合う機会を通じて、お茶の美味しさ、楽しさをアピールしていきたいんです」(平岡さん)。
「急須でお茶をいれる所作は外国人から見てもCOOL(かっこいい)。本場である静岡茶からそれを発信しましょう!(和田さん)。
折しも新茶の季節。美味しいお茶に親しむには絶好のチャンス。でも、やっぱり急須で上手にいれるのは、まだちょっとハードルが高そう。
「ティーバッグも進化しているので、手軽に美味しいお茶が飲めますよ。これからの季節は、水出しのお茶もいいですね」(和田さん)。
column
知りたい!静岡茶のルーツ
静岡にお茶が伝わったのは鎌倉時代のこと。聖一国師という高僧が中国から持ち帰ったお茶の種を、静岡市葵区足久保の地に蒔いたのが静岡茶の始まりなのだそう。安倍川、藁科川流域は川霧が発生し、質の高いお茶が育つ土地。この地域のお茶は「本山茶」と呼ばれ、江戸時代には将軍家にも献上されていた。明治に入ると、牧之原台地の開墾などで静岡県はお茶の一大産地に。近年では県内で生産される深蒸し茶を日常的に飲むことが健康にいいとメディアで取り上げられブームになった。
聖一国師ゆかりのお茶を手軽に味わえる和カフェ
国道362 号線( 通称藁科街道)沿いにある、古民家を改装した和カフェ「茶の芽」では、焼きたてのお団子やオリジナル和スイーツとともに、本山茶を味わえる。なかでも山のお茶特有の味と香りを引き出した「聖一国師伝説の彩り」は、3年かけて蘇った聖一国師の生家の茶園で栽培されたお茶の新芽を、ひと葉ひと葉丁寧に手摘みした極上のお茶。年間で39 ㎏前後しか生産されないというこの貴重なお茶は、世界緑茶コンテスト2014で最高金賞を受賞している。その味わいは、カフェメニューの「伝説セット」で堪能して。
●和カフェ 茶の芽 [わカフェ ちゃのめ]
054-270-1313
静岡市葵区大原1827/10:00~17:00/月、第4火休/P4台/JR静岡駅から車で約25分
テイクアウトで楽しむ! 新しい日本茶のスタイル
カップでテイクアウトするコーヒーのように、日本茶ももっと気軽に楽しめたらいいのに……。そんなニーズに応えてくれるお茶屋さんを発見!今一番新しい日本茶の飲み方は、エスプレッソ!? さっそく体験しに出かけてみよう。
お茶の味わいを凝縮した煎茶エスプレッソ
隠れ家的なレストランやカフェ、お洒落なセレクトショップが点在する鷹匠界隈。womo 読者にもおなじみのこの街に、一見お茶屋さんとは思えないモダンな店構えの「chagama」がある。店内のカウンター越しには、コーヒーショップで見かけるような本格的なエスプレッソマシン。梅ケ島産の茶葉を使って抽出される煎茶エスプレッソは、お茶の甘み、苦み、渋み、旨みが全て詰まった一杯。飲んだ後に口の中にはすっきりとした余韻が残る。苦みや渋みが苦手な人には、ミルクのまろやかさが優しい味わいの煎茶ラテ(378円)がおすすめ。花見糖入りと無糖があるので、気分やお好みで選んで。「chagama」は、静岡市で140年の歴史を誇る茶問屋「マルモ森商店」の直営店。若い人にもっと気軽にお茶に親しんで欲しいと、全国各地の茶葉を70種類ほど取り揃え、飲みきりサイズでの販売も行っている。店頭に並んでいるお茶は全て試飲が可能。注目のお茶スポット、街中の散策の途中に立ち寄ってみよう。
家でもゆっくりお茶を楽しみたくなるおすすめのお茶と茶器
●chagama [チャガマ]
054-260-4775
静岡市葵区鷹匠2-10-7 パサージュ鷹匠1F/10:00~19:00/月休み(祝日の場合は営業)/Pなし/新静岡セノバから徒歩6分
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自宅でも美味しい煎茶を飲もう
ちょっとしたポイントで、いつもの茶葉もおいしくいただける。煎茶をおいしくいれるコツを教えてもらいました。
教えてくれたのは・・・森 詩緒里さん
若い世代にももっとお茶に親しんでもらいたいと、店舗運営のかたわら、商品開発や海外展開にも携わる。
step1
急須に熱いお湯を入れる。急須が温まったらお湯を捨て、1人分の茶葉4g(カレースプーン1杯くらい)を急須に入れる。
※2人分以上の時は2g×人数分を目安に、急須の大きさに応じて
step2
沸騰させた湯を湯冷ましにとり、75~80℃くらいに冷ます。湯冷ましがなければ湯呑みで代用してもOK。1分ほど置いて、真っ直ぐ立ちのぼっていた湯気が広がるようになるのが目安。
step3
急須にお湯を注いだら蓋をして1分待つ。この時に急須を揺らしたり、何度も蓋を開けないこと。写真のように茶葉のよりがほどけて開いた頃が注ぎ時。二煎目の場合は10秒ほどで注ぐ。
step4
お茶の濃さが均等になるように湯呑みに交互に最後の一滴までしっかりと注ぎきる。注ぎきったら急須の蓋を開けておくことで、茶葉が空気に触れ蒸れすぎを防ぎ、二煎目も美味しくいただける。
フードペアリングの波は日本茶にも お菓子とのマリアージュを楽しむ
相性の良い食べ物と飲み物を楽しむフードペアリング。最高の組み合わせ“マリアージュ”で、お茶の時間がさらに充実しそう。そこで、代表的なお茶の特徴を教えてもらいながら、静岡らしい味が揃う「静岡おみやプロジェクト」の商品とのペアリングに挑戦してみました。
教えてくれたのは・・・茶町KINZABURO 前田冨佐男さん
大正4年創業の製茶問屋「前田金三郎商店」の三代目店主。日本茶インストラクター。ブレンド茶やオリジナルスイーツの開発も手掛ける。
深蒸し茶
深蒸し茶に合うお菓子は・・・ムッシュモイズミ 大人のしっとりショコラ8 個入り 1500円
仏三つ星レストランで研鑽を積んだシェフが作る、コース料理の締めくくりとしても人気のデザート。生チョコのような食感で、上質なクーベルチュール・チョコレートのコクと、静岡産みかんの爽やかさがベストマッチ。
●和・仏食彩工房 ムッシュMoizumi
054-247-1338
浅蒸し茶
浅蒸し茶に合うお菓子は・・・鞠子の宿本舗 月ヶ瀬 むかごろう 5 個入り 1080円
口の中でさらりと溶ける上品な甘さのこしあんを、もっちりとした米粉の生地で巻き込んだ和菓子ロールケーキ。丸子名物とろろ汁にちなんで、山芋の芽「むかご」が、くりくりした目のようで、見た目にもかわいい。
●鞠子の宿本舗 月ヶ瀬
054-259-1762
ほうじ茶
ほうじ茶に合うお菓子は・・・セティボン? しずおか ふんわり金塊フィナンシェ 5 個入り 1296円
「安倍川もち」をイメージしたフィナンシェ。きなことバター、アーモンドが、それぞれの香ばしさを引き立て合っている。口の中で優しくほどける、しっとり、ふんわりと焼き上げられた生地の中には、黒豆入り。
●セティボン?
054-267-7236
玄米茶
玄米茶に合うお菓子は・・・株式会社 片山 大御所のおやつ のりの実 ごま味・かつお味(各15g) 各324円
海苔問屋が作った、木の実のように丸いひとくちサイズの海苔のスナック菓子。サクッとした食感と、磯の香りに「ごま」や「かつお」の香ばしさも加わって、あとを引く美味しさ。他に「みかん味」と「チーズ味」もある。
●株式会社 片山
054-263-2424
●商品協力
静岡おみやプロジェクト/静岡市産学交流センター
054-275-1655
静岡市葵区御幸町3-21 ペガサート6F
●取材協力
茶町KINZABURO
054-252-2476
静岡市葵区土太夫町27(茶町通り)/9:30~18:00(日祝は10:00~17:00)/水休み/P5台/ホームページ kinzaburo.com