【第59回】この池松壮亮が好き! 厳選8作品[その2]
好きすぎて選びきれないので8作品を2回に分けます……[その2]では、2018年・2019年公開作品から4作品をご紹介!
筆者:こしあん
映画・海外ドラマ、Bリーグ、読書、お笑い、カメが大好き。
特技はイントロクイズ(80年・90年代ソング限定)。
怖がりのくせにホラーとミステリーが大好きで、生まれ変わったらFBI捜査官になりたい。
休日にどれだけ家にこもっていてもまったく苦にならない超インドア派。
ゆる~い解説で好きな映画を紹介していきます。
『君が君で君だ』(2018年)
めちゃくちゃ気持ち悪いのに、めちゃくちゃカワイイ。
めちゃくちゃブッ飛んでるのに、めちゃくちゃ泣ける。
【変態と純愛のあいだ】
こんな映画観たことない!
突拍子もない設定なのに、グラグラと心を揺さぶられる青春映画です。
ブラジャーとパンツ姿で、訳の分からない祈りのダンスをする池松壮亮。サイコー!
韓国出身のヒロイン・ソンのことを、彼女が好きな「尾崎豊」「ブラピ」「坂本龍馬」になりきって、向かいのボロアパートから10年間見守り続けている男3人。
普通に見たら完全な変態なのに、ワチャワチャしながら団結してる彼らの行動が愛おしくて、ものすごい熱量の「愛」を感じちゃうんですよね。
むちゃくちゃなのに、彼らなりの独特なルールがあり、それがまた面白いし、深い。
池松壮亮、満島真之介、大倉孝二、3人の演技も素晴らしい。
「僕たちは姫を守っている兵士です」って大真面目に言うの、笑ってしまう。実際にいたら恐怖でしかないけど。
なんでこんなことしてるのか?っていうのを、回想シーンで少しずつ見せていくのが上手いので、その変態性がどんどん薄れていき、彼らのことを応援したくなっちゃう。
それから、ヒロインの変化にも同情してしまう部分もあり、みんな幸せになってほしいって思っちゃうんですよね。
尾崎豊の「僕が僕であるために」が、(だいぶおかしな形だけど)こんなにガツンと響いてきたことはない。
相手のすべてを受け入れ、目をそらさず、理解する。
「君」がどんなふうに変わっても「君」であり、「僕」が「僕」であるために、ひたすら見守り続ける。
いろんな角度から、いろんな球をぶつけられたような感覚。声をあげて笑い、じんわり泣きました。こういう作品、大好きです。
『町田くんの世界』(2019年)
池松壮亮が出てる映画は99.9%の確率で泣く……。
それも、つらいとか悲しいとか単純なものじゃなくて、人生においてジタバタした時に生じる可笑しみと、苦悩の先にあるほんの少しの光を表現するのが抜群に上手い。
なんて人なんだ、あなたは!
なので、だいぶ【池松補正】がかかってしまい、ほとんどの作品が高評価になります。
池松くん演じる吉高と、細田佳央太演じる町田くんがバスを降りて、お互いワケわかんなくてパニックになってワチャワチャしながら言葉を交わすシーン。最高に好き。
笑いながら泣いた。
あの池松くんに飲まれることなく、町田くんを演じ切った細田佳央太もスゴイ。期待の新星です。
町田くんの独特すぎる走り方は笑わずにいられない。でもとても一生懸命でまっすぐなので、その姿に心を打たれます。
展開がファンタジックになり過ぎてちょっと冷めそうになると、池松くん演じる吉高という存在がリアリティを運んでくれる。
そのバランスが素晴らしかった。
私も吉高みたいなタイプの人間なので、町田くんを見つけたら、悪意にまみれたこの世界で、どうすればあなたみたいに生きられるのかと聞いてみたい。
不思議な雰囲気の作品なので、好き嫌いが分かれるかと思いますが、私はこういうの大好きですね。むちゃくちゃだけど不快感はなく楽しくて、泣いたり笑ったり、忙しい。
大切なことをいろいろと教えてくれる、おとぎ話のような。観終わった後に爽やかな余韻を残すステキな作品でした。
まぁ、終盤の風船のくだりはさすがに「えええーー」ってなったけど、池松くんの演技に救われて笑っちゃったのでギリギリOKかなと。
『よこがお』(2019年)
何ともいえないスゴイ作品だった。ちょっとした迂闊さからどうしようもなく追い込まれていく怖さ。人間不信になりそうです……。
自分がこんな状況になったら耐えられないけど、映画として観る分には大好きなジャンルです。
筒井真理子演じる市子と、市川実日子演じる基子、二人の女性の見えない「よこがお」。
市川実日子の、静かに滲み出る独特のあやうさにゾクゾクしました。歩き方、話し方、表情、すべて完璧。
筒井真理子のちょっとくたびれた生活感のある色気、すごくいいですよね〜。昭和のエロスですよ。まさに押し入れね(←映画を観るとわかります)。
黒木瞳でも石田ゆり子でも森高千里でもなく、ワタクシが目指すべきところはここだな!と思いました……笑
池松くんは美容師で、この二人の女性に振り回されるような役どころ。あまり出番はなかったですけど、ワタクシ的にはドギマギしちゃうシーンが多かったわ。
とりあえず、池松くんが担当美容師だったら、まず別の美容院に行って小綺麗にしてからじゃないと恥ずかしくて行けない……。
とにかく、構図やカメラワーク、衣装の色使いとかがすごく良い!
ラストシーン、車のサイドミラーにナナメの横顔を映す、あの余韻が素晴らしい。
動物園でのサイ越しの構図とか、光で顔が見えなくなるシーンとか、信号を渡るスローモーションのシーンも印象的。
現在と過去を織り交ぜながら、少しずつ何が起きたのかを見せていく手法も、こちらにいろいろ想像させる余白があって好きです。
『宮本から君へ』(2019年)
「てめえなんかに負けてたまるかぁぁぁぁぁ」
圧倒的熱量!!! 素晴らしい!!!
感情メーター振り切れました。
なんていい表情をするんだ、池松壮亮。あぁもう、サイコーだよ。圧巻だよ。
この役は彼にしかできないでしょう。またもや、グシャグシャに泣かされました。
池松壮亮と蒼井優、二人の役者魂がすさまじい。感情むき出し。ラブシーンの生々しさにソワソワし、ぶつけ合う熱い言葉に打ちのめされる。
静と動の演技、どちらも素晴らしくてふるえました。
まずドラマ版をイッキ見し、むちゃくちゃおもしろかったので、そのまま本作に突入。
ドラマ版のオープニングとエンディング、曲も映像も大好きです!
ドラマを観ずに映画だけでも充分楽しめますが、ドラマを観たほうがより、主人公・宮本の人物像が分かり、しみ込んでくる度合いが深いかと思います。
暑苦しいし、バカだし、イカれてるし、こんな人、実際に近くにいたら気持ち悪いし怖いけど、ものすっっっごい心を揺さぶられちゃう。こんなまっすぐに全力で来られたら、信じようって思うよね。そこには覚悟があるから。
「大丈夫、オレがついてる。もう泣くな」って、いやもう、その言葉でさらに泣くわ〜。
クズラガーマンは本当に胸クソでした。
でも、敵がクズであればあるほど、非常階段のシーンがね、もう最高に爽快で!
がんばれ宮本、負けんな宮本って、泣きながら応援しちゃってたけど、エンディングになると、あぁ、パワーをもらったのは私のほうだったんだなって気付く。
『宮本から君へ』の「君」は、観ている私たちのことなんですね。
ありがとう、宮本。
ありがとう、池松壮亮。
エンディングの「いききっちゃうんだ」っていうメッセージも胸アツ。
負けてたまるかぁぁぁぁぁ!
くっそーーーカッコいいぜーーー!
泣きすぎて頭イタイぜーーー!
わたしもアツく生ききってやるーーー!
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