【松葉畳店】イ草や畳、畳のへりを使った雑貨を販売するショップが2021/1/30(土)にリニューアルオープン
今回取材に訪れた「松葉畳店」は、この新店コラムでも掲載した「トリコジャムアンドベイク(TORICO Jam & Bake)」からのご紹介。「焼津にすっごく素敵なお店があるので、よかったら行ってみてくださいね」と教えてもらっていた。その取材から間もないタイミングで「松葉畳店」が工場(こうば)をリニューアルし、イ草を使った雑貨を販売するショップを併設したという新聞記事を目にする。ホームページを見てみるとおもしろそうな取り組みをしている。これはぜひ取材にと思い、伊藤謙さん、知美さん夫妻にお話をうかがいに行った。
2021/1/30(土)OPEN! ショップ・焼津「松葉畳店」
「松葉畳店」ではイ草や畳を使った雑貨アイテムの開発・販売を行っている。
「松葉畳店」のショップコーナーには、知美さんが企画したブックカバー、ポーチ、アクセサリーなどのオリジナルのイ草商品が並ぶ。
イ草は国産のものにこだわって使用しているそうだ。
また、無農薬の食用イ草を粉末にしたものを混ぜ込んだクッキーやバスクチーズケーキも販売している。
こちらは静岡市葵区田町にある「夢と創作のアトリエ・クレーヴ」とコラボしてつくってもらった商品。
クッキーはイ草の香りがして塩の粒がアクセントに。
イ草は食物繊維が豊富で、食品としてもおすすめなのだそう。
4個入りだが「やみつきになる味。4個では足りない」とたくさん買う人も多い人気商品だという。
取材中試食させていただいたが、なるほど、確かにやみつきになる味。
(womoライターも2個買って帰るほどおいしかった)
「クッキーはうちの娘も大好きなんです。イ草スイーツはこれからも考案していきたいですね。ちなみにアイスクリームは近いうちに登場予定です」と知美さんは話す。
「国産のイ草の魅力を広めたくて始めたお店。職人たちが手づくりしているものを中心に、私たちの想いに賛同してくれたお菓子屋さんや作家さんにも協力いただいて、一緒にさまざまな商品開発を行っています。御朱印帳は藤枝のお寺とコラボして企画したんですよ」と知美さん。
バッグなどは、自分で縁(へり)を選んでオーダーも可能。
形も相談できるので、自分だけのアイテムをつくってもらうのもおすすめだ。
畳の「縁(へり)」の漢字は「縁(えん)」とも読める。
「縁(えん)を結ぶ」として、贈り物としても最適だ。
ギフトオーダーも可能で、結婚式の引き出物、出産祝いのお返しなどの対応も可能だそう。
玄関マットのオーダーなどもできるので、新築・引っ越し祝いとしても利用可能だ。
「松葉畳店」を紹介してくれた「トリコジャムアンドベイク(TORICO Jam & Bake)」のコラムはこちら↓
「トリコジャムアンドベイク(TORICO Jam & Bake)」
「松葉畳店」ではワークショップも実施。商品が生まれる現場も見学できる
「松葉畳店」は1977年に知美さんのお父さまが創業した畳店。
建物が老朽化したこともあり、今回、建て替えし、2021年1月30日にリニューアルオープンした。
1階が工場で、中2階がショップ、2階が職人たちの作業スペースになっている。
中2階のショップからは、畳が生まれる工場を見学できる。
「2階の作業スペースは、しめ縄、ヘアアクセ、エコバッグなどのイ草を使ったワークショップを企画したり、ペン習字、ヨガ、メイク講座などを開催したりしています」と知美さんは話す。
創業当初は焼津市内だけでも20軒程度の畳店があったというが、今は4軒程度に減っている。
それだけ今、日本の住宅から畳の部屋が減っているのだ。
畳が使われなくなったのは「メンテナンスに費用がかかる」「間取りがうまくいかない」など、理由はさまざま。
畳に使われるイ草は約93%が熊本県が産地。
平成元年には4000軒ほどあったイ草農家は、今は350軒程度までに減少しているという。
イネ科の植物であるイ草は、稲と同様に水田で栽培し、苗から収穫まで1年7か月という年月がかかる。
収穫した後、変色を防ぐために泥水に浸け、泥染めし、乾燥。
その後、一本一本の状態を見て、折れや傷、色むらがないかを確認し、畳表に編まれていく。
この状態までもがイ草農家の仕事で、この後、畳屋へと届けられていくのだ。
「イ草の生産者さんの仕事は本当に過酷で大変。担い手もどんどんと減っている。実は日本の畳のうち、今では約8割が中国などの外国産なんです。でも、日本でつくられた畳は、きめが細かく本当に美しい風合いなんです。触っていただければわかりますが、その違いは歴然としています」と謙さんは話す。
畳の中には黒やピンクの色がついたおしゃれなデザインも増えてきている。
これらはイ草ではなく和紙を使用しているそうで、水などをこぼしてしまうとシミになりやすいそうだ。
「イ草も和紙のものも金額自体はそんなに変わらないですし、当店でも取り扱ってはいます。でも天然のイ草の手触り、香り、風合いにはどうしても劣る。そんなイ草の畳の魅力を知って欲しくて、リニューアルしたんです」と謙さんは話す。
「松葉畳店」ではショップを通じてイ草と畳の魅力を伝えていきたい
知美さんは「松葉畳店」の三女として生まれ、建設会社や靴メーカーの営業、留学、不動産会社といろいろな経験をした後、同じ不動産会社に勤めていた謙さんと出会い、結婚。
二人の子どもに恵まれ、子育てをしながら7年ほど前からイ草を使った雑貨をつくり始める。
初めてつくった商品は、今も人気商品の一つである「イ草香るしめ縄花飾り」。
専門にミシンなどを学んでいたわけではないので、直線縫いでできるブックカバー、名刺入れ、マットなどからスタートし、少しずつアイテムを増やしていったという。
地元のマルシェなどに出店したところ、評判がよく、他のイベントにも声をかけられるように。
謙さんは、結婚後も不動産会社に引き続き勤務していたが「マルシェへの出店の際、妻を手伝っていたんですが、イ草の話をするうちに自分も興味が募ってきて。それで不動産会社を辞めて、畳職人として義父に弟子入りしたんです」。
6年ほど前に工場の一角で販売コーナーを設けることにした。
その後も積極的にマルシェへの出店を続け、百貨店からも声をかけられように。
さらには東京のイベントやギフトショーにも出店し、東京への販路も開拓していった。
2016年には「イ草香るブックカバー」が「2016グッドデザインしずおか」にも選出され文化賞を取得。
2020年には全国の「LOFT」での取り扱いがスタートしている。
「松葉畳店」では100種類程度の縁(へり)の取り扱いがある
畳の縁(へり)も今は実にさまざまで、全国シェア約8割を占める岡山県が取り扱う縁(へり)だけでも4000種類程度あるという。(「松葉畳店」が取り扱うのは100種類程度)
最近人気のアニメに登場する格子柄といった流行りの柄もある。
「松葉畳店」が東京のデザイナーとコラボしてイ草の田んぼや花などをモチーフにオリジナルでつくってもらっている縁(へり)もある。
確かにこんな素敵なイ草商品がなければ、畳店を訪れる機会はほぼないと言って等しい。
「伝えたい想いが強くて。お客さんと畳とを繋げたいと思っています。ですので、できる限り来店したお客さんにはイ草の魅力を伝えるようにしています」と謙さんは話す。
「今後も新しい商品開発をしていきたい」と話す伊藤さんご夫妻。
イ草や畳の魅力をどんな形で展開していくのか、今後が楽しみだ。
「松葉畳店」の詳細はwomo店舗ページをチェック
編集部の気になる新店 WOMO編集部が今いちばん気になるニューオープン・リニューアル店をピックアップ。