【チカゲ コーヒー ロースタリー(Chikage Coffee Roastery)】女性焙煎士による繊細な味わいとストーリー性が魅力の自家焙煎コーヒー店が2021/6/15(火)清水区清水町にオープン
静岡市清水区の次郎長通りの裏手、巴川と海が交わる通りの近くにオープンした「チカゲ コーヒー ロースタリー(Chikage Coffee Roastery)」。季節や天候を感じられるよう焙煎したコーヒーは、少しずつクチコミが広がりつつある。焙煎士の濱田智景(はまだちかげ)さんにお話をうかがった。
2021/6/15(火)OPEN! グルメ・清水「チカゲ コーヒー ロースタリー(Chikage Coffee Roastery)」
「チカゲ コーヒー ロースタリー(Chikage Coffee Roastery)」のコーヒーは女性焙煎士ならではの感性あふれるテイスト
取材に訪れた日は、しとしとと小雨が降り、暑さが穏やかな夏の昼下がり。倉庫かなと思わしき小さな建物にかわいらしい看板がついている。扉を開けると、「いらっしゃいませ」と女性焙煎士の智景(ちかげ)さんが笑顔を向けてくれる。中はきれいなブルーグレーで塗られ、植物も置かれており、センスを感じる内装だ。
さっそく智景さんが「Summer Time Blend」と名付けられたコーヒーを淹れてくれた。
「沸き立てのお湯は熱いので、ポットとポットの間を何度か移し替えて温度を下げるんですよ。お湯の温度が高いと、えぐみで出てしまうので」。
コーヒーの解説には“夏の夕暮れの暑さが和らいだほっとできる時間に、まったりと飲みたくなるようなブレンド”と書いてあり、取材した日のように暑さがやわらかな雨の日にもぴったりだった。パプアニューギニアとブラジル、タンザニアの豆を中深煎りにしたものだが、口に含むとふわっといろいろな味が広がる。鮮度がよいというのもあるが、とても繊細で細やかな味と香りがする。ほっとする飲み心地だ。
「ブレンドは単一産地では出せない味が出せるんです。私はそれに季節の風景と情景をコーヒーで表現しているので、同じ豆の種類でも、季節によって違う味になるんですよ。同じ産地でもつくられた年やその土地の気候によって豆の状態や味も違います」。
たとえば春なら、“春の芽吹きや暖かさ、キラキラした明るさをイメージ。軽やかな酸味と華やかな香り”の「春の息吹ブレンド」。梅雨なら“梅雨の雨上がりに山肌を登っていくやまぎりをイメージ。バランスが良くスッキリ。そして香り高いブレンド”の「梅雨のやまぎりブレンド」。それぞれにイメージソングも記されているが、詳細は店頭で確認してみてほしい。
コーヒーに添えてあるシナモンサブレは静岡市葵区大岩にある「アトリエ プティカラン(ATELIER PETIT* CALIN)」のクッキー。1枚60円、2枚100円と単品でも販売している。
おしゃべりに夢中になっていると、ホットコーヒーが冷めてしまったが、それはそれでおいしい。
「冷めると変な酸味が出ることもありますが、うちのコーヒーは冷めても味がなじんて甘味があっておいしいと思います」と話す。
「チカゲ コーヒー ロースタリー(Chikage Coffee Roastery)」は夜カフェも営業
「チカゲ コーヒー ロースタリー(Chikage Coffee Roastery)」のクラフトコーラもおすすめだ。
「昔は体に悪いイメージがあったコーラですが、もともとはさまざまなスパイスが入ってつくられるもの。滋味深い味わいでミネラル豊富な黒糖を使ってつくってみたいなと思ってつくり始めました」。
シナモン、カルダモン、グローブ、バニラビーンズ、レモン、黒糖を煮出して手づくり。香りがいいドリンクだ。
金曜・土曜日限定で夜カフェを営業することもある。
「会社帰りの女性、ご夫婦、ご家族連れなどに多くご利用いただいています」。
静岡市清水区船越南町の「ルシャンボラン(LE CHAMP VOLANT)」のクロックムッシュに、サラダ、ピクルスなどが入った夜カフェ限定メニュー。アルコールも提供しており、テイクアウトメニューもある。
「以前は鷹匠にあったルシャンボランさん。オーナーさんがとても素敵な方で、夜カフェをやりたいと話したら、クロックムッシュをつくってくださることに。オーダーを受けてからオーブンで焼くので、熱々の状態で提供しています。一週間頑張ったご褒美として、仕事帰りなどにアルコールとともにゆっくりおいしいものを食べていただければと思っています」。
※新型コロナウルスの感染拡大状況により、夜カフェやアルコールの提供、テイクアウトの対応状況が異なる。詳細はお店のInstagramで確認を
「チカゲ コーヒー ロースタリー(Chikage Coffee Roastery)」のコーヒー豆は小ロットで焙煎
コーヒーの焙煎には、プレミックスとアフターミックスがある。プレミックスは生豆の状態でブレンドして一緒に焙煎し、アフターミックスの場合は産地ごとに異なる焙煎をしてからブレンドしていくもの。
「うちではプレミックスで焙煎しています。アフターミックスでは、酸味・苦味などそれぞれの個性を活かしてブレンドしていきますが、プレミックスの場合はそれぞれの個性が焙煎によって引き合い、吸収。まとまりがよい豆に仕上がるんです」。
コーヒー豆を注文すると、智景さんが1枚1枚デコレートした袋に入れてくれる。「文具も好き」と話す智景さん。ブレンドをイメージしたマスキングテープを貼り、数種類のペンを使用し、手描きでささっと仕上げていく。袋を再利用したくなるくらいかわいい。
「うちは小さな焙煎機を使用しているので、200gから都度、焙煎することができます。30分ほどお時間はかかりますが、お好みのブレンドをおつくりすることもできますよ」。
こんな感じのコーヒーが欲しいという要望があれば、200gという少量でも焙煎してもらえるのは嬉しい。
「チカゲ コーヒー ロースタリー(Chikage Coffee Roastery)」のオーナーは大阪でコーヒーを学んできた
静岡市出身の智景さんは、進学とともに大阪へ拠点を移す。時はちょうどコーヒーのセカンドウェーブの頃。
「子どものころに母が淹れてくれた、インスタントコーヒーに砂糖と牛乳を入れた甘いコーヒーが大好きでした。コーヒーに興味を持つようになったのは、それがきっかけだったと思います。大人になって、某有名コーヒーチェーン店で砂糖なしの生クリームがのったカフェモカを飲んだんですが、コーヒーの苦味がおいしくて。それでその店で働きたくなったんです」。
そのコーヒーチェーン店で働きながら、コーヒーへの見識を深めた。バッグヤードでは、スタッフ同士でコーヒーやアレンジコーヒーと食べ物とのペアリングを考えたり、どんなカスタマイズが合うか試したりなど、コーヒー談議に花を咲かせていた。
「コーヒーにはさまざまな産地があり、その味の違いを自分の言葉で表現してみたりしていました。ぬれせんべいとのペアリングも考えたりしたんですよ。お客さまからのこんなことできないかという要望にはできる限りYesで応える。メニューで悩んでいたら、飲みたいと思っているものを一緒にお探しする。すごく素敵なお店でした。私の人生の中で、ここで学んだ経験は本当に大きいです」。
妊娠・出産を機にコーヒーチェーン店を退職。子どもが10歳になるまでは子育てに専念していた。やがて子ども大きくなり、コーヒー業界への復帰を考える。
「以前働いていたコーヒーチェーン店も好きだったんですが、どうせなら違うところで働いてみようかなと思いました」。
この頃、ちょうどコーヒー業界はサードウェーブの頃。智景さんが次の職場として選んだのが、自家焙煎コーヒーを仕入れてハンドドリップした本格的なコーヒーを提供するカフェだった。
「大阪にあるカフェなのですが、若い男の子の焙煎士が焙煎したコーヒー豆を使っていたんです。当時は若い人が焙煎をしているという印象がなくて、若い人でも焙煎ができるんだなということに驚きました。焙煎に興味が湧き、半年間の焙煎講座に申し込みました」。
講座終了後、受講仲間とともにイベントに出店。その時につけた屋号が現在の店名にもつながる「チカゲ コーヒー(Chikage Coffee)」だった。
「友人の紹介という形で、コーヒー豆の注文やコーヒーの淹れ方のワークショップの依頼などをいただくようになりました。大阪での仕事も増えてきていたのですが、2019年になり、静岡に戻ることになりました」。
「チカゲ コーヒー ロースタリー(Chikage Coffee Roastery)」が次郎長通り商店街でお店を出したワケ
智景さんの実家が静岡市葵区美川町にある中華料理店「金泉軒」を営んでいたことから、お店の空いた物置を改装し、そこで焙煎をスタート。「金泉軒」のレジ横に豆を置いてもらったり、大阪のお客さんからのオーダーにも対応したりしていた。
ある時、三保のイベントに出店した際、ご縁があり、次郎長通り商店街の会長と知り合いになった。
「実店舗を持っていなかったので、買いたいと思ってくださった方が買いに来ていただける場所がなくて。そんな時、次郎長通り商店街の会長さんが空き物件を紹介してくださったんです。パン屋の工房だった場所で、物も残され、散らかった状態ではあったのですが、ちょうどよいサイズだと思ったんです」。
こうして2021年2月から店舗の改装をDIYではじめた。商店街の会長夫妻が内装の大部分を手伝ってくれたという。
「とてもセンスがよくて、DIYレベルではないですよね。初めは3月31日が一粒万倍日(いちりゅうまんばいび)というとても縁起のよい日でこの日にオープンできたらと思っていたのですが改装が間に合わなくて。この日は代わりに“豆入れの儀”として、ご近所のみなさんにコーヒーをふるまいました」。
次の一粒万倍日であった6月15日にオープンすることとなった。
「チカゲ コーヒー ロースタリー(Chikage Coffee Roastery)」のアイスコーヒーやカフェインレスコーヒーも注目
「チカゲ コーヒー ロースタリー(Chikage Coffee Roastery)」の水出しアイスコーヒーは一晩かけて仕込んだもの。アイスコーヒーは好きな豆をオーダーが入ってからハンドドリップで抽出してくれるので、どちらも香りがいい。
「カフェインレスのコーヒー豆って、どうやってつくられるか知っています? 薬品を使って除去したものもあるみたいなのですが、日本では輸入禁止になっています。うちで使用しているのは、メキシコの天然水のみを使って除去した豆なんです。カフェインレスのコーヒーは、妊娠中の方が飲まれることも多いので、私自身の妊娠の経験から、安全なものを使いたいなと思っているんですよ」。
コーヒーチェーン店で飲んだカフェインレスのコーヒーは物足りない味がしたという智景さん。「チカゲ コーヒー ロースタリー(Chikage Coffee Roastery)」で提供しているものは、コーヒーとしての味わいをより感じることができる豆だそうだ。
智景さんと話していると、女性ならではの視点と、半年かけて講座で学んだ知識深さが伝わってくる。これまで数多くのコーヒー店を取材してきているので、それなりに知っているつもりではいたが、今回の取材で初めて聞いたコーヒーの話も多い。智景さんの柔らかな雰囲気もあり、いろいろと聞きやすく、とても学びが多い取材だった。
【MENU】
●ブレンドコーヒー……ハンドドリップホット550円/ハンドドリップアイス638円
●ストレートコーヒー……ハンドドリップホット715円/ハンドドリップアイス803円
●カフェオレ……ホット660円/アイス715円 ※+55円で豆乳に変更可能
●水出しアイスコーヒー……880円
●カフェインレスコーヒー……ハンドドリップホット550円/ハンドドリップアイス638円
●カフェインレスカフェオレ……ホット715円/アイス770円 ※+55円で豆乳に変更可能
●チカゲコーラ……700円
●お茶(ハムステッドオーガニック紅茶ダージリン/カーミエンオーガニックルイボスティー)……ホット550円/アイス638円
●キッズドリンク(ミルク/ジュース)220円
●夜カフェプレート ドリンク付き……1650円 ※夜カフェ営業日限定
※その他、スイーツメニューあり。日により異なるので店頭で確認を
チカゲ コーヒー ロースタリー(Chikage Coffee Roastery)の詳細はwomo店舗ページをチェック
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