【萩原こうじや(はぎわらこうじや)】明治創業のこうじ店が甘酒を使ったドリンクやテイクアウトメニューなども用意し2021/7/26(月)藤枝市岡部町にリニューアルオープン
藤枝市岡部町にある明治23年創業の「萩原こうじや」が装いを新たにリニューアルオープン。糀(こうじ)や味噌、金山寺味噌、甘酒などといった従来商品に加え、甘酒を使ったドリンクや「ビビンバ丼」などのテイクアウトメニューもスタート。「以前のお店ではずっと取材は断ってきていたので、実は今日が初めての取材なんですよ」という萩原家のお母さま・美子(よしこ)さんと、娘さんの優奈(ゆうな)さんにお話を伺った。
2021/7/26(月)OPEN! グルメ・藤枝市岡部町「萩原こうじや(はぎわらこうじや)」
「萩原こうじや(はぎわらこうじや)」は若い世代の人も楽しめるおしゃれなお店
藤枝市岡部町にある明治23年創業の「萩原こうじや」。木をふんだんに使用し、懐かしさと新しさをミックスしたような居心地のよい店内には、昔ながらの手づくりの製法で、熟練の職人がつくる糀(こうじ)や味噌、金山寺味噌、甘酒など糀屋ならではの商品が並ぶ。
甘酒を使った「甘酒ヨーグルト」「甘酒バナナ」などのドリンクをはじめ、「ビビンバ丼」や「キーマカレー」といったテイクアウトメニューも用意。
「実は甘酒が苦手」という優奈さんが、健康にもよい甘酒を苦手な方にも飲めるようにと考案したのが「甘酒バナナ」。バナナを使用することで、甘酒独特の風味をやわらげている。「甘酒ヨーグルト」は甘酒とヨーグルトのダブルの発酵パワーを使った飲み物。甘酒も多めに入っていてより豊かな風味が味わえるので、甘酒が好きな方や健康に気をつかっている方にもおすすめだ。
「ビビンバ」や「キーマカレー」は、毎朝手づくりしており、多くはつくることができないため、数量限定。多くがお昼までに売り切れてしまい、余裕があれば追加でつくることもあるそう。「ビビンバ」は優奈さんが好きだったことから美子さんが醤油こうじや塩こうじを使ったレシピを考案。お肉を醤油こうじで、ナムルを塩こうじで味つけし、糀特有の丸みと深みのある味になっている。また、「キーマカレー」は隠し味に甘酒を使用していて、ほんのり甘味があり食べやすい辛さになっているそうだ。
「萩原こうじや(はぎわらこうじや)」の塩こうじ、醤油こうじもおすすめ
「萩原こうじや」の糀は、優奈さんのお祖父さまが今も毎日手塩にかけてつくっている。それ以外の味噌や金山寺味噌を仕込んだりするのは美子さんのご主人や美子さん、優奈さんが用意するという3世代でつくっているそう。
「糀は温度が高くても低くてもできない。新しいお店になって、環境がよくなったので、温度や湿度管理もしやすくなった。以前よりおいしい糀ができるようになったよ」と10月で83歳になるというお祖父さまは話す。
お祖父さま、肌がとてもつやつやですねというと「そうなんですよ。糀室(こうじしつ)に入ると、私たちも肌質がよくなったような気がするんですよ」と美子さんと優奈さんは笑う。
新店舗では、これまでは時々しか店頭に出なかった「塩こうじ」や「醤油こうじ」も常時並ぶようにした。醤油こうじ、塩こうじの使い方がわからないという方のために、料理が得意な美子さんが作成したレシピも無料配布している。醤油こうじの卵かけご飯、鶏むね肉の塩こうじ焼きなど、どれも簡単につくることができておいしそうだ。
「金山寺味噌」は茄子・大根・生姜といった野菜がゴロゴロと入っている。煎(い)った大豆を石臼で挽(ひ)くという、とても手間がかかる工程でつくっているため、大豆の食感や香りが引き立ち、おいしく仕上がっている。一般的には砂糖が入っているものが多いが、お客さんからの要望で、砂糖ありのほか、砂糖なし、砂糖半分のものも用意した。
「萩原こうじや(はぎわらこうじや)」の糀は熟練の職人が昔ながらの製法でつくっている
明治の創業当初と同じ、昔ながらの製法でつくっているという「萩原こうじや」の糀は、その日の気温、湿度などの状態を見分け、機械ではなく熟練の技で手間を惜しまずつくられている。こうじ屋によっては、エアコンやストーブに頼り、簡易化するところもあるそうだ。
そんな熟練の職人がつくる糀は発酵パワーが強く、密閉状態になるビニール袋では熱を持ってしまうため、包装には紙袋を使用しているほど。最近はスーパー等でも糀を販売しているので知っている方もいるかと思うが、糀は一般的にビニール袋に入れられて売られている。
そんな発酵パワーが強い糀や味噌は人気。根強いファンが多く、インターネット販売はしていないが、遠方からわざわざお店を訪れる人もいるという。
「萩原こうじや(はぎわらこうじや)」実は廃業するつもりだった?!
実は「萩原こうじや」は廃業にする予定だったという。
「糀の仕事は本当にたいへんなんです。昔ながらの製法で手づくりしているので、つきっきりで作業する必要があります。義父が高齢で、主人が定年になるまで時間もあることから、もう待てないという話になったんです。そんな時、娘が『私が継ぐ』と言ってくれたんです」。
優奈さんは大学を卒業後、一般企業へ就職。最近結婚したばかりの24歳。
「廃業の話は何年も前から出ていた話ですが、主人とは『昔からやってきた糀づくりをつないでいきたいね』という話をしていたんです。お客さまからも『やめないで欲しい』という声が多かったことも、決断の一因となりました」と優奈さんは話す。
若いながらに実家の稼業を継ぐ決意をした優奈さん。よく実家の仕事を手伝っていたのかと思いきや、
「味噌をつくったのは、実は小学生のときに学校の自由研究で1回つくったくらい。でも、例年11月に開催される『東海道岡部宿にぎわいまつり』は高校生の頃から販売を手伝っていて、接客自体は好きなんです。学生時代から付き合っていた主人も、お祭りの手伝いをしてくれていたんですよ。
でも、実はお味噌汁はそんなに好きではなくて。でも、うちの味噌自体は好きで、味噌だけをよくつまみ食いしていました」と笑う。
実は2020年の年末に、お祖父さまが一度、倒れてしまったのだという。
「祖父はすぐに回復したので今はもうすっかり元気なのですが、『教えてもらうならもう今しかない』と改めて実感しました」。
ただ、家族の中では迷いも多かったそうだ。
お祖父さまの住宅兼店舗となっていた以前の建物は、大正から建っている建物だったので、老朽化と耐震性の問題から建て替えは必須だった。
「義父が倒れる前から建て替えの話は進み、娘たち夫妻も店を継ぐと言っていたのですが、主人をはじめ、本当に続けられるか迷い続けていました。でも娘だけはやると言っていましたね」と美子さんは話す。
「今はまだ仕込みの手伝いをする程度なのですが、少しずつ覚えたいと思っています」と優奈さんは話す。
「萩原こうじや(はぎわらこうじや)」の今後の展開
「ゆくゆくは味噌づくり教室もできらたらと考えていますが、場所を検討中なんです。また、糀を活用し、身近な材料を使ってつくることができるレシピも発信していきたいですね。味噌や塩こうじ、醤油こうじを使ったその家庭ならではの味をつくってもらえたら」と美子さんは話す。
優奈さんは「ドリンクメニューを増やしていきたいですね」と話す。
「糀をもっと広めていきたい」と語るお二人。比較的年配の方には糀文化は浸透しているが、若い世代は糀に触れる機会が少ない。20代前半である優奈さんが、これからどんな形で糀の魅力を発信していくのかも興味深い。
お店はまだオープンしたばかり。これからどんな展開をしていくのかとても楽しみだ。
【MENU】
●自家製味噌……大770円、小410円
●金山寺……430円
●自家製黒豆味噌……460円
●醤油こうじ……400円
●塩こうじ……350円
●金時豆……150円
●甘酒の素……小370円、大850円
[量り売り商品]
●生こうじ……100g140円、500g630円、1kg1200円
●金山寺こうじ…2.1kg2750円、4.2kg5350円
※お米、もち米の量り売りもあり
[テイクアウト・イートインメニュー]
●甘酒ヨーグルト……380円
●甘酒バナナミルク……380円
●豆乳甘酒…360円
●アイス甘酒ミルク…330円
●黒豆茶……180円
●ビビンバ丼……590円
●キーマカレー……590円
編集部の気になる新店 WOMO編集部が今いちばん気になるニューオープン・リニューアル店をピックアップ。