【第67回】感性を刺激する独創的な映画3選
そのセンスの爪の垢はどこに売ってますか?
筆者:こしあん
映画・ドラマ、Bリーグ、読書、お笑い、カメが大好き。
特技はイントロクイズ(80年・90年代ソング限定)。
怖がりのくせにホラーとミステリーが大好きで、生まれ変わったらFBI捜査官になりたい。
休日にどれだけ家にこもっていてもまったく苦にならない超インドア派。
ゆる~い解説で好きな映画(ときどきドラマ)を紹介していきます。
アーティスティックな映像世界にただただひたる
暑がりで寒がり、変温動物のような私が一年でいちばん好きな季節・秋。快適!!!
秋はやっぱりアートですよね。秋の夜長に芸術がバクハツしている映画はいかがでしょうか?
普段は眠りまくっている感性を呼び覚まし、唐突にコンテンポラリーダンスを踊りながら階段を下りたくなるような作品を集めました。
『アメリ』(2001年)
もう20年も経つんですねぇ……。そうか……20年か……しみじみ。
公開当時、世界中でアメリブームが巻き起こりましたね。
オドレイ・トトゥのみずみずしくキュートな魅力がスクリーンからあふれ出し、女子たちはみんなアメリのトリコでした。
▼『アメリ』予告編はコチラ
久しぶりに観ましたが、とても20年前の映画とは思えない……。当時とまったく同じ気分にひたれました。ほどよいレトロ感と新しさ。どの時代の人にも刺さる名作です。
ダークな緑色の背景、真っ赤な服に真っ赤な口紅、前髪パッツンおかっぱ頭のアメリがニヤリ。
あぁ、この髪型フレンチボブっていうのか……。
来世は毛先を遊ばせたフレンチボブが似合う女性に生まれ変わりたいです。
クレームブリュレの焦がしたカラメル、スプーンで割って食べるのもマネしました。『アメリ』観た人はもれなく全員、これやりたくなりますよ。
それから、「アメリ缶」というプレミアムDVDボックスも買いました。
海外のお菓子のような缶の中に、クレームブリュレ型のキャンドルとか、劇中に出てきた世界を旅するドワーフからの手紙とか、いろんな特典が入っていて、とにかくオシャレでかわいい。
この「アメリ缶」を持っているだけで、オシャレ偏差値が15くらい上がったような気分になってました。
空想大好き、人とのコミュニケーションがやや苦手な不思議ちゃん・アメリ。周りの人たちをちょっと幸せにするような、かわいいイタズラを仕掛けるのが生き甲斐。
そんなアメリが、証明写真機のゴミ箱から拾った他人の写真を集めてアルバムにしている青年・ニノに恋をする……。
映像も音楽も凝っていて、ポップでオシャレな遊びゴコロがいっぱい。
パリの街並みも絵画のようで、いちいちときめいてしまう。
ひとふりのスパイスが効いた、シニカル加減も絶妙。
そして、ささやかな幸福感に包まれるラストシーン、なんてチャーミングなんだ!!!
フランス映画に対する苦手意識が変わる、きっかけになった作品でもあります。
日本人が逆立ちしても側転しても勝てそうにない、圧倒的なフランス人のセンスに脱帽。
『ファンタスティック・プラネット』(1973年)
日本とはまた違う、ヨーロッパらしいアニメーション。アニメというより、動く絵画みたいな独特の世界観。
1973年制作でこのセンス、スゴいとしか言いようがない。
不気味なのに芸術的な世界に、ものすごく引き込まれます。
▼『ファンタスティック・プラネット』予告編はコチラ
何だか分からないけど、子どもの頃、こんなふうに幻想的で怪奇的な絵本や昔話を見たり、描いたりしてたかも?……もっと自由にいろんなことを想像していた、あの頃の気持ちがよみがえるような感じ。
雰囲気が何かに似てるなぁと思ったけど、「こびとづかん」ですね!
アバターみたいな青い体に赤い目の巨人・ドラーグ族。
人間は、ドラーグ族が手でつかめるサイズ。
はじめは人間側の感情で観てるけど、でも実際の人間は、ネズミやゴキブリのように人間を扱うドラーグ族側と一緒だよな、と思い始める。そしてなんか、ゴメンなさいって思う。
生物、植物、建物、機械……すべての造形が摩訶不思議。瞑想シーンとかもすごく好き。
とにかく、独特で不思議な世界にひたれる70分。
自分の中のイマジネーション・スイッチがカチカチと押されました。
『パプリカ』(2006年)
私にとってパプリカと言えば、空前絶後の大ブームとなったあの歌でもなく、カラフルでオシャレで食べやすいピーマンでもなく、この映画です。
定期的に観たくて観たくてふるえちゃう中毒性の高い映画。
以前にご紹介した『東京ゴッドファーザーズ』の今敏監督によるアニメーション。この作品が遺作となりました。
罪悪感、嫉妬、不安、欲望、希望。
抑圧している感情が夢となり、極彩色のパレードとなってあふれ出す。
♪昨日見た夢 今日の夢
浮かれ浮世の憂さ晴らし
神も仏も宗旨替え
浮かれ浮世の憂さ晴らし
パレードの口上のセリフまわしとリズム、訳の分からないポップな気持ち悪さがたまらなく好き。
鳥居にお神輿、まねきねこ、カエル、人形、だるま、ロボット、冷蔵庫、甲冑、世界の神々、紙吹雪……。
音楽も色使いもしゃべり方も笑い方もグニャグニャした動きも最高。
こんな悪夢なら見てみたい。
夢と現実がごちゃごちゃになるところや街を飛び回る疾走感、言いようのないゾワゾワ感などは、同監督の『PERFECT BLUE』に通じるものがあります。
幻想的な映像をひたすら浴びながら酔いしれる作品。
イマジネーションの壮大さとセンスにひれ伏します。
そして映画愛もたっぷり。
クセが強い作品ほど、ハマった時の「これ、好きいぃぃぃぃぃ!」な高揚感は、何ものにも代えがたい唯一無二のもの。
「もっと自由に生きろ! もっと人生を楽しめ!」そんな言葉が天から降ってくるような作品。ふれたことのない心のツボがグイグイッと刺激されるような、新しい映像体験を。
WOMOシネマ伝道師こしあんの『ぐるぐるシネマ迷宮』 筆者だけの思い出調味料満載の懐かし作品から、あまり共感を得られないようなディープな作品まで、密かな魅力いっぱいのシネマ迷宮へようこそ。出口はたくさんあります。