【読者座談会】正しく知ろう。暮らしの中の放射線とは?
womo × asten コラボのスペシャル座談会を実施。
放射線は、言葉のイメージから難しいもの、怖いものというイメージを抱くwomo読者が多いかも。けれど、実際には暮らしのさまざまなシーンで活用されていたり、目に見えないだけで私たちのまわりに常に存在しているもの。そんな放射線について考えるきっかけになる座談会がwomo × astenのコラボで開催された。放射線について教えてくださるのは、東京都市大学理工学部原子力研究所客員准教授の岡田往子(ゆきこ)さん。
司会はフリーアナウンサーの長谷川玲子さん。womoモニターからは海野文香さん、海野百香さんが参加した。
参加者
【講師】岡田 往子さん
東京都市大学理工学部原子力研究所客員准教授。日本大学農獣医学部水産学科卒業。千葉大学博士(理学)修得。高純度材料や考古学資料の微量元素の分析や福島支援(20km圏内の放射線測定、放射線教育など)、群馬県赤城大沼周辺の放射線測定にも力を注いでいる。
【司会】 長谷川 玲子さん
体が不調だった時に何度もレントゲンを撮る機会があり、被ばく量の不安を医師に相談した経験がある。いいことも悪いこともきちんと知って、正しく怖がることが大事だと考えている。
【womoモニター】海野 文香さん
静岡市葵区在住。ジャガーランドローバー静岡でショールームアテンダントとして働く傍ら、モデルとしても活動。放射線には怖い、体に悪いというマイナスイメージを持っている。
【womoモニター】海野 百香さん
静岡県中部在住。県内でモデルやレポーターとして活躍する。生活の中で放射線を意識することも、身近な人と話題にすることもない。言葉を聞くと怖いと感じる。
【astenサポーター】 南條 さとみさん
小学生2人のお母さん。レントゲン検査での被ばくが気になっている。
【astenサポーター】 平井 裕子さん
3人の子育てが一段落。福島の原発事故後、静岡でのお茶の風評被害が気になった。
暮らしの中に普通に存在している放射線
SBSラジオの番組「IPPOセレクション」では、10月27日から3週にわたって、岡田往子さんを招いた「暮らしの中の放射線」が放送された。参加者たちはその内容を聞き座談会に参加した。
長谷川)放射線に対して、まずは率直な意見を聞かせてください。
文香)全く知識がなく、怖いというマイナスイメージです。今日は専門家の話を直接聞きたいと思って参加しました。
百香)私も日常では考えたこともありません。福島の原発事故で怖いものという決めつけから、余計に考えることを避けているのかも。身近な人と話をすることもないですね。
岡田)地球上にあるおよそ90の元素の中には、不安定な状態で存在しているものもあります。それが安定な状態になるために出すのが、放射線です。放射線は自然界のさまざまなところから出ています。目には見えませんが、私たちは、宇宙から、大地から、食べ物から、そして空気からも、常に放射線を受けています。そして、日本では食べ物から受ける放射線が一番多いんですよ。
食事はバランスよく。数値の単位もしっかりチェックを
astenサポーターのふたりは現在子育て中。野菜は調理前に丁寧に水洗いするなど、食べ物から受ける放射線には敏感になっているという体験談が。
岡田)例えば、土に付いた放射性物質は洗えば取れますが、食材そのものに入っているものは取り除けません。食べ物からの放射線は主にカリウムから出ています。カリウムは、植物にも動物にも私たちにも必要な栄養素です。このカリウムには3つの仲間がいて、そのうちカリウム40だけが放射性物質です。でも、私たちが体内に取り込む時に、カリウム40だけを排除することはできないので、カリウムのすべてを取り込み栄養として使い、余った分は排出する。これを繰り返して、体の中ではほぼ一定の割合を保っています。「放射線が怖いから食べない」ではなく、成長や健康、美容のためにも、偏食をせずバランス良く食べることが重要なんですよ。
百香)食べる物に気をつけなくちゃと思いましたが、極端に神経質になる必要はないんですね。不安だから食べないよりは、適量をバランス良く食べて健康的でいた方が断然いいです。
岡田)水分が抜けると放射性物質の量は濃縮されます。ここでの注意は、乾燥したものは比較的高い数値に“見える”ということ。例えば干し昆布には、1kgあたり2000Bq(ベクレル)の放射性物質が含まれています。ですが、干し昆布1kgを一度に食べることはありえないですよね。こういった単位を見て判断してほしいんです。静岡の方は緑茶をよく飲みますが、お茶は抽出するので放射性物質の量は茶葉の値よりも低くなります。
※Bq(ベクレル)とは、放射性物質が放射線を出す能力を表す単位。
文香)干し昆布の数値は衝撃でしたが、そういう仕組みなんですね。私も職業柄、食事バランスは大切にしています。女性は妊娠、出産もあるので、健康な体は元気な子どもを生むためにも必要です。それに、お母さんが放射線に対する正しい知識を持っていれば、子どもにも食育の一環で教えてあげられますよね。
長谷川)現在、一般に流通している食品で気をつけるものはありますか?
岡田)福島の事故で拡散された放射性セシウムについては、事故以降に基準ができ、栽培にも検査にもかなり気を使っていますから、現状で流通しているものは大丈夫です。
文香)私、甘いものが好きでよく食べるんです。甘いものは放射性物質を多く含んでいるということはないですか?
岡田)それはないですよ。砂糖の原料はサトウキビやビートなど農作物なので、それなりにカリウムは含まれます。つまり他の野菜と同じです。
けれど、「それなら放射線は怖くない」と手放しで安心はしないでくださいね。私たちは毎日少しずつ自然界から放射線を受けていて、日本では一年間に平均2.1 mSv(ミリシーベルト)の放射線を受けています。また、一度に100mSv以上の放射線を受けるとがんになる確率が上がることがわかっています。放射線は私たちのまわりに存在していますが、一度にたくさんの量を受けると危険だということは覚えておいてください。
※Sv(シーベルト)とは、人が放射線を受けた時、身体にどれくらいの影響が出るかを表す単位。1Sv=1000mSv
医療や産業で、幅広く活用される放射線
astenサポーターの南條さんはレントゲン検査時の被ばくを心配。医療に使われる放射線についても、岡田さんからわかりやすい説明が。
岡田)初期のレントゲンに比べ、現在は技術の進歩により、少量でレントゲンが撮れます。例えば、胸部レントゲンでは0.05 mSv。これは自然界から受け取る日本の平均年間被ばく量の約1/40です。臓器によってダメージの違いがあります。医療関係者は、それらを考慮して治療や検査を行っています。不安な時は医師に説明を求めて、安心してから受けてください。ちなみに私は帝王切開のために、おなかの子どもが9か月の時にレントゲンを撮りましたが、無事に生まれ、元気に育ちました。また、がん治療では、かなり強い放射線を用いますが、それは体の中でもごくごく限られた一部分に照射しています。
それから、放射線は医療以外でも、紙おむつや防火カーテン、自動車のタイヤ製造など、さまざまな分野で活用されています。放射線について、今は中学2年生から授業で学びますが、子どもたちには早めに放射線について学ぶ機会を作ってあげたいですね。
百香)私たちは授業で教えてもらうことがなく、知らないから、ただ怖いという先入観にとらわれていました。産業に活用されていることも今日初めて知りました。暮らしと放射線は切り離せないので、もっと知識をつけたいなと感じました。
文香)放射線の話は理科で習ったことと繋がっているとわかりました。イベントや授業でも正しく取り上げれば、放射線は楽しく学ぶことができるんですね。
3人が見ているのは「霧箱」。よく見ると、白い線が所々に浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返しています。
※霧箱とは、空気中の放射線がとおった跡を見ることができる装置。
その白い線(岡田さんが指をさしているところ)が、放射線がとおった跡です。
岡田)今、この瞬間にも飛んでいる放射線は、宇宙の誕生にも関係するロマンある存在です。宇宙線やX線、ガンマ線など、地球上にはいろいろな放射線が飛んでいます。全部覚える必要はないので、まずは私たちに関わることから徐々に覚えて、上手につきあってくださいね。
長谷川)放射線は私たちの暮らしの中に存在している。先入観にとらわれるのではなく、情報を得て、学んで、知識を深めることで、安心安全に付き合っていけるものなんですね。私も改めて、少しずつ学んでいこうと思いました。皆さんもぜひ、機会をつくって学んでみてはいかがでしょうか?
本日はありがとうございました。
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協賛・問合せ:静岡エネルギー・環境懇談会
静岡エネルギー・環境懇談会とは、エネルギー全般および環境(地球温暖化)ならびに放射線に関する知識の普及・啓発を⽬的として、講演会、小・中学校への出張授業、⾒学会などの活動や企画展などへの出展を行っています。