【yadokari からだにやさしそうなごはんとおやつ】心の真ん中で作ってくれるうれしいごはん
まちの案内人にお気に入りのお店やスポットを紹介してもらう、「わたしの散歩みち」。今まで知らなかった楽しみ方やディープな情報を見つけて、このまちの「好き」を再発見する散歩へ出かけよう。北街道周辺の案内人は「カレーと喫茶 あまりろ」の小亀さちさん。今回は、小亀さんのお気に入りスポットだという「yadokari からだにやさしそうなごはんとおやつ」を深掘りしてみた。
案内人:小亀さち さん
北街道界隈周辺の案内人は、『カレーと喫茶 あまりろ』の店主 小亀さちさん。テイクアウト販売のカレー店からはじまり、現在は店舗を構える中で知り合ったお店の方やよく行くお店など、“あまり人に教えたくない”というお気に入りのスポットをこっそり教えてもらった。
自然食・横内町「yadokari からだにやさしそうなごはんとおやつ」
自然とたどり着いた「料理をすること」
2021年9月にオープンした『yadokari からだにやさしそうなごはんとおやつ』。オープン間もないのに連日満席近い理由は、おいしい料理はもちろんのこと、店主の杉山亜希子さん自身の生き方にあると感じた。
数十種類もの食材がカラフルに盛り付けられた野菜中心のプレートに、もちっとした発酵玄米のごはんとお味噌汁。目からも、口からも、楽しめるひと時に心が癒やされる。
亜希子さんにとって、料理をすることは「自然なこと」だそうだ。元々肌が弱く、「なんでかな?」と考えたときに、日々食べているものに疑問を持った。
いまでこそ、自然食に関する書籍などたくさん増えたが15年ほど前は調べるのもひと苦労だった。玄米菜食をすれば調子がよくなるのか、お肉やお魚が体の中でどう作用するのか……。たくさんの試行錯誤のなかでたどり着いたのが「人それぞれ、合う食べ物は違う」という答えだった。
細い華奢な女性もいれば、体格のいい筋肉質の男性もいる。食べる量も違えば、食べたいものも、体に合うものも違っていて当たり前。
亜希子さん自身が「体に負担をかけずに、自分がおいしいと思えるもの」を追求していったのちにたどり着いたのが、野菜中心のごはんだった。
思いがけずも「おいしい!」と声を上げてしまった一つが、玄米、小豆、天日塩で炊く「発酵玄米ごはん」。玄米というと硬めのイメージがあるが、『yadokari』の発酵玄米ごはんはもちもちしっとり。
圧力鍋で玄米を炊いたあとに、ごはんをジャーに入れて発酵させている。小豆が発酵を促し、天日塩を煎った焼き塩がいい塩梅だ。
「圧力をかけることでごはんのエネルギーが高まるそうなんです。発酵した玄米は消化の負担が少なく、腸をよく動かすようです。敏感なひとは、腸がびっくりしちゃうこともあるので、やっぱり合う合わないは人ぞれぞれですね。栄養があって体に良いことも大切にしていますが、それよりもおいしいと思ってもらえたらうれしいです」
いまできることに向き合う大切さ
店をオープンするにあたり、大事にしたことは「自己資金で始める」ことと「そのままの自分を表現したい」ということ。自分自身の責任を負える範囲で、コツコツと目の前のことに向き合っていく。とてもシンプルで簡単なように聞こえるけれど、意外と難しいことである。
人は答えを見出したいとき、どうしても自分の中ではなく外に答えを追い求めがちだ。亜希子さんは、外に答えがないことを知っている。だからこそ、目の前の、今に、全力を注いでいる。
決して無理することなく、等身大の自分で、「よろこんでもらえたらうれしいな」「合うか合わないかは分からないけれど、食べてくれる人が調子良くなってくれたらいいな」と、純粋に今自分ができることを着実に続けている。
亜希子さん自身はそう歩むことは当たり前で当然のことかもしれないが、移り気な社会で生きている私たちにとってはとても眩しい存在かもしれない。
食べ終わったあと、「体がキレイになった気がする」「体に良いものを食べたから、自分を大切にした気がする」と言ってくれる人が多いそうだ。その理由は、食材がいい、調理法がいい、ということだけではなくて、「亜希子さんの心の真ん中がキラキラでピカピカ」だからな気がする。
調理法を学んだり、お菓子を試してみたり、盛り付けをアレンジしてみたり。そんな少しずつ積み重ねてきた経験が『yadokari』という居場所となり、料理という形になったときに、食べる人を元気づけるのではないだろうか。
自分のやりたいこと、できることをまっすぐに進む、そういう姿を見るだけで人は自然とパワーをもらえる。愛情を込められたごはんを通して、知らず知らずのうちにファンになってしまうのだろう。
「世間で体によいと言われているものを無理に食べなくてもいいんです。それぞれが好きなものを食べればいい。きっとそれが一番体にあう食事なんだと思います。そんな日々の中に、あえてyadokariを選んで来てくれるのはありがたいことです。ついでに体も少し軽くなるお手伝いがごはんやおやつを通してできたら、お店を始めてよかったなと思います」
案内人からのおすすめポイント
静岡に来てからずっとお姉さんみたいに仲良くしてくれた方が、念願オープンしたお店です。亜希子さんの作る料理は、素材の味を生かした、ホッとする味。
撮影:森島 吉直/モデル:鈴木 茉吏奈
フリーランスの編集・ライターとして雑誌や広告に携わる。次世代につなげたい伝統・文化や、大切に育まれた人柄・物事を、本質から伝えたいと日々精進中。
わたしの散歩みち まちの案内人が紹介するあのお店のこと、あの店主のこと。そして、このまちの「好き」を再発見する散歩へ出かけよう。