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妥協なき“カッコよさ”がここに/Toxic Works

妥協なき“カッコよさ”がここに/Toxic Works

まちの案内人にお気に入りのお店やスポットを紹介してもらう、「わたしの散歩みち」。今まで知らなかった楽しみ方やディープな情報を見つけて、このまちの「好き」を再発見する散歩へ出かけよう。青葉通り周辺の案内人は『Toxic Works』の間宮貴志さん。今回は、間宮さんのお店をご紹介。

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案内人:間宮貴志 さん
青葉通り周辺の案内人は、細かなパーツまでていねいにオリジナルで自転車を作り上げる自転車店『Toxic Works』の店主 間宮貴志さん。自転車で街を巡るからこそ発見した、とっておきの美味しい店を今回はご紹介。

自転車店・本通「Toxic Works」

どこにも売っていない一台を作る

両替町から本通を渡ったすぐの角にある自転車店『Toxic Works(トキシック・ワークス)』。店頭や店内には自転車や自転車関連のアイテムなどがずらりと並ぶ。カウンター奥のスペースには自転車を修理したり、カスタムしたりする作業場があり、一見「普通の自転車屋さん」のように思うが、一つひとつの自転車を何気なく眺めると「あれ?なんだこれは?」と驚きでいっぱいになる。ロードバイクやマウンテンバイクなど「よく見かける自転車」の一点一点が、すべてオリジナルなのだ。

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自転車店を始めて13年の間宮貴志さんは、簡単なパンク修理からフルカスタムでのオーダーまでも受ける。オリジナリティを追求し続けるのは「見たことのないものを作りたい」という想いが根底にあるそうだ。現在では全国のみならず海外までファンがいる間宮さんだが、たどってきた道こそが唯一無二。かつての情報のない時代に追い求めてきた理想が、今の間宮さんを形作っていた。

カスタム自転車1の画像

(提供:Toxic Works)間宮さんがカスタムしたオリジナルの自転車はどれも個性があり、ひとつひとつをじっくり眺めていたくなる。

カスタム自転車2の画像

(提供:Toxic Works)


オートバイや自動車の改造というのはよくあるが、自転車業界においてはめずらしい。スポーツ色が濃い業界だからこそ、性能を上げるカスタムは当たり前だが「見た目をカッコよくする」カスタムは数少ない。今注文を受けているお客さんの自転車は「60〜70年前のフレームに、サドルはママチャリ、ブレーキの部分にハーレーのパーツをカットして形づくり、再度磨き上げました」という斬新さ。話だけ伺うとびっくりするが、元からそのような自転車だったかのような絶妙なバランスで仕上がっている。そんな間宮さんのオリジナリティを求めて全国から「自分だけの自転車」の注文がくる。

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デザインしてもらったロゴをパーツに

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自転車のホイールハブ。細かいパーツまでこだわれるから、ひとたびハマると沼のようなおもしろさ

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塗装のカラーも豊富。ツヤやマットなど質感まで合わせるとパターンは数え切れない


“憧れ”を自分の手で現実に

自転車としての性能もきちんと兼ね備えた上でのカッコよさを追求する間宮さんの原点は高校時代にある。「ある時、ハーレーの改造車の雑誌を見て衝撃を受けたんです。"なんてカッコいいんだ!"と、自分も同じようなバイクを作ってみたいと、改造をはじめました。雑誌を何百回も読んでは研究していました」。
ひたすら家のガレージでオートバイをいじる日々。色を塗ったり、切ってみたり、磨いてみたりと、理想を追求し続けた。ときにはたった1冊の輸入雑誌を求めて富士市まで行くことも。今のように簡単に情報が入らなかったからこそ、本を大量に読み漁ったそうだ。「自転車の改造というのはオートバイのように見本がなかったので、このときの経験が今に生きていますね」

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自分のための自転車をカスタムしていたら、評判が評判を呼び知人から注文を受けるように。いよいよ自宅では手狭になったので店を構えることにしたのが13年前だ。当初は右も左も分からず、仕入れたいパーツの工場に「どうすればいいですか?」と電話をし、「まずはFAXを買ってから発注して」と教えられた。お金をためてFAXを買って発注をし、またほかの仕入先を見つけては連絡し、やり方を教えてもらう。

間宮さんがすごいのは「できることからやる」ところだ。「分からないから諦める」のではなく、とにかく相手に連絡する。カッコいいパーツを作るためには、日本だけではなく海外までも躊躇なく連絡を取る。そうやって一歩一歩道をつなげていき、今では70社近い取引先ができた。

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工具を使って一つずつ間宮さんの手で仕上げられる

「カスタムなので、1台仕上げるのに何社も必要なんです。大事なのは頭の中で絵をかけるか、ですね。頭の中でできた完成図を、どうやって現実にできるかを考えます。例えば、あそこの店のパーツを注文して、実際の自転車とのバランスが合わないならば僕が削って磨いて……と。できないものをやってみたい、ないものを作りたい。どうやれば頭のなかに思いついた理想を実現できるか、試行錯誤しています」

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好きを追い求めていく姿勢

「自分の思うカッコよさ」を、「この人の自転車には、ここをこうやって工夫したらよりカッコよくなるな」と転換し、一つのパーツも妥協することなく、ていねいに作っていく。ここまでこだわりを持てるのは、「人生を無駄にした時期があったから(笑)」だそうだ。「ひたすらスキなことに没頭していたおかげで、今につながっている。"遊び心"の基本を大事にしています」。

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アウトドア用のキッチンは、座って料理ができるスタイルに

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自転車のカスタムのほかにも、アメリカのインスタグラマーと自転車用のシューズの開発をしたり、オーダー家具メーカーとアウトドア用のキッチンを作ったりと、活動の幅は留まることを知らない。「何も思い付かなかったら平穏な日々が送れるのに……なんて時々思っちゃいますけどね(笑)けれど思いついちゃうので、やりきりたいし、きちんと実現させたい。困っちゃいますよね」と、間宮さんは笑うが、考えたことをすぐ実行に移す力こそが大きな魅力を生み出すのだろう。

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さまざまなアーティスト・デザインなどのオリジナルのTシャツなども制作する

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自転車のぺダルとにぴったりと合体するオリジナルのビンディングシューズブランドも展開中


撮影:森島 吉直/モデル:鈴木 茉吏奈

ライター
町 紗耶香

フリーランスの編集・ライターとして雑誌や広告に携わる。次世代につなげたい伝統・文化や、大切に育まれた人柄・物事を、本質から伝えたいと日々精進中。

紹介スポット

静岡市葵区

Toxic Works

「自分だけの自転車」をカスタムオーダー "遊び心"の基本を大事にする自転車店

更新日:2023/4/5
コラムシリーズイメージ

わたしの散歩みち まちの案内人が紹介するあのお店のこと、あの店主のこと。そして、このまちの「好き」を再発見する散歩へ出かけよう。

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