アウトドアギアと古着、発掘する楽しみを/LODGE
さまざまなキーワードでWOMO読者がおすすめするスポットを聞き込み調査&取材を実施。今回のキーワードは「アウトドアギアショップ」。静岡市葵区にある古着とアウトドアギアのお店、『LODGE(ロッジ)』へ取材に訪れ、店主の築地(つきじ)さんにお話をうかがった。
静岡市葵区駿河町通りに佇む、木造の外観が特徴的なお店『LODGE』。外にはビンテージのアウトドアチェアや薪が置かれ、山小屋風のドアが開いた先の店内には、たくさんのギアや古着が並んでいるのが見える。
アメリカのカリフォルニア州にある山脈、ヨセミテの山並みとお店のロゴがあしらわれた看板が、お店の雰囲気にもぴったりだ。
ゆっくりと店内へ足を運ぶと、奥のレジカウンターに座る店主の築地(つきじ)さんが「こんにちは」と出迎えてくれた。
『LODGE』は、アウトドアジャンルを中心とした古着とビンテージのアウトドアギアを取りそろえるお店だ。
古着好き、キャンプ好き、アウトドアで着たい服を探している人……さまざまなお客さんたちが『LODGE』へ足を運ぶ。特にアウトドア好きにはたまらない、宝箱のような場所だ。
「ビンテージ系のギアをそろえたい」「こんなキャンプスタイルが好き」「ある程度道具はそろっているんだけど、これを機にアップデートしたい」「今度行くキャンプにぴったりな服を探したい」初心者から慣れている人まで、要望はさまざま。築地さんは、お客さんの思いをていねいに聞き出し、それに合ったものを一緒に探してくれる。
ランプひとつとっても、さまざまな種類を取り扱う。お店に置かれたランタンは、すべて築地さんがオーバーホールし、使える状態にして店頭に並べているという。
1900年製造のオイルランプや、昔少年たちが手に持ちながらスケートを楽しんだというスケートランプ、炭鉱作業の時に使われていたランプなど、年月を経て、味わいを増したものたちも並ぶ。
一点一点違うものに出会える。『LODGE』はそんな場所でもある。
お店を始めたい!と思ってからは一直線
とにかく古着が大好きだったという築地さん。サラリーマンとして企業で働いていた頃から、古着屋を始めることをひっそりと夢見ていたという。
転機は築地さんが20代の頃。
「もし古着屋を始めるならば、一度は行っておかないと説得力がない」と、さまざまな洋服文化が生まれた国・アメリカへひとり渡った時だった。
驚くほど多くの洋服文化に触れて圧倒されたと同時に、自分が好きなものに囲まれる楽しさを知った築地さんは、「これを仕事にしたい」と強く思ったそうだ。
築地さんは日本へ戻ってすぐ、当時勤めていた会社の課長へ「すみません、会社辞めます」と一言。あまりに突然のできごとだったので驚かれ、一度は退職を止められたという。
そこから相談を重ね、年に2回はアメリカへ行く時間を確保してもらいながら、引継ぎなどを経て約4年後に退職。
25歳のとき、ここ葵区駿河町に『LODGE』を開いた。
25歳という若さでお店を開くことに不安はなかったのかと尋ねると、
「いや、めちゃくちゃありましたよ。接客も全然やったことなかったし、すごく不安でした」と築地さん。
その背中を押したのは、同じく静岡で古着屋を営んでいた知人だった。
古着屋のノウハウがなかった築地さんへ、商品のことや仕入れのルートなどの知識を教えてくれたという。
「なんとかなるっしょ」
そんなあっけらかんとした知人の言葉に助けられたそうだ。
LODGEらしさが生まれるまで
『LODGE』をこれからどんなお店にしていこうかと築地さんは考えた。
「静岡には既にいい古着屋がいくつかあって、今から似たような古着屋を初めても勝ち目がないと思ったんです。それなら、自分が好きだったアウトドアというジャンルに絞った古着を集めてみようと」
“アウトドアジャンルの古着”といってもかなりの幅があり、それぞれの年代で全然雰囲気や良さが違う。
『LODGE』のなかに身を置くと、それを感じることができる。
“アウトドアジャンルの古着”に関しての知識は、ほぼ独学で学んだという築地さん。当時、アウトドアをテーマにした古着屋は非常に少なかった。
お店を始めて一年目の店内には古着ばかりが並んでいたそうだが、キャンプなどの外遊びが好きな築地さんは、徐々にビンテージのアウトドアギアなどもお店に置くようになっていった。まだキャンプブームが来る前のことだった。そうしてお店に置かれるギアの数もどんどん増え、現在の『LODGE』の姿が出来上がる。
古いビンテージの道具と一緒に古着を売るというお店は少ない。品ぞろえに関しても、自社のギアや服をそろえるメーカーはあっても、個人のお店でここまでしっかりとそろっているところはあまりないだろう。
それが『LODGE』のカラーでもあり、強みでもある。
発掘する楽しさを味わって
『LODGE』は、「アウトドアギアを探していたけど、古着も気になってしまった」「誰かのプレゼントを探していたけど、自分のものを買ってしまった」そんな“発見”のある場所。
「何か一つだけを探しに来るのはちょっともったいないですよね。うちの場合、ギアならギア、古着なら古着しか見ないみたいな。服もギアもとても強い関係性があるし、新たなジャンルの発見に繋がると思うから、ぜひいろいろ探して見て欲しいんです」
近年では、自分の欲しいものがどこでどの値段で売っているかが簡単にに調べられるようになり、便利な反面、“発見”という体験が少なくなってしまった。
「僕が昔、古着を探したりするときは、このお店には何があるんだろう?とワクワクしながら見にいくのが楽しみだったんです。事前に何が置いてあるかわからない感じが、なんだかおもしろくて」
そんな築地さんは、『LODGE』のSNSにもすぐに入荷情報を出さず、少し時間を置いてからアップするそうだ。
以前足を運んでくれたお客さんが、「あれ!こんなのあったっけ?」と気づいて、また来てみたくなる。“発見”の機会を無くさない工夫をしているのだ。
最後に、築地さんはこう話してくれた。
「うちのお店がきっかけで、外遊びに興味を持ってくれたり、服に興味を持ち出したり……『LODGE』を起点にその人の何かが始まっていくのが、すごく嬉しいんですよね。これからも何かの“きっかけ”になれる、そんなお店でありたいです」
その人らしさやそこにある想い、空気感、手触りを大切に書いています。まちを歩いて、自分だけの“好き”を見つけることの楽しさを、文章を通して伝えられたら嬉しいです。