唯一無二のヴィンテージテントとの出会い/『CHATEAU CAMP』
さまざまなキーワードでWOMO読者がおすすめするスポットを聞き込み調査&取材を実施。今回のキーワードは「アウトドアギアショップ」。静岡市清水区三保にあるヴィンテージテントをはじめとしたアウトドアギアのお店、『CHATEAU CAMP(シャトーキャンプ)』へ取材に訪れ、店主の早内(はやうち)さんにお話をうかがった。
静岡市清水区三保の住宅街のなかにひっそりと佇む『CHATEAU CAMP(シャトーキャンプ)』は、ヴィンテージテントをはじめとしたアウトドアギアを取り扱うお店だ。
ネットショップもあり、好みのテントがあれば問い合わせや予約をし、店舗で実際に見ることもできる。細かい質感やデザイン、大きさなど、写真だけでは見えない部分を自分の目で確かめられるのも『CHATEAU CAMP』の魅力。
大きなテントが目印のお店へ足を踏み入れると、店主の早内(はやうち)さんが「こんにちは。お待ちしていました。ヴィンテージテントのコーナーはこちらですよ」と出迎えてくれた。
仕入れの状況により変動はあるが、現在『CHATEAU CAMP』で取り扱うテントの在庫は平均で30〜40個ほど。
ここへ足を運ぶお客さんの中には、ヴィンテージのアウトドアギアに慣れている人もいれば、「まだ新しいギアしか使ったことがなくて、ヴィンテージギアは初めて」という人も。ヴィンテージテントはとても大きいものや、張り方が複雑なものもあるため、店主に張り方から教わりたいという人も多くいるとか。
早内さんは、一人ひとりにていねいに張り方や手入れの方法を教えてくれる。
また、自分たちのキャンプギアを持ってきて、お店のスペースでヴィンテージテントと一緒に設営をすることもできるので、全体のイメージが沸きやすく、訪れる人たちの“理想のキャンプ像”への一歩を後押ししてくれる。
こういったヴィンテージギアへのハードルを下げる取り組みを行っていくことで、『CHATEAU CAMP』は、若者から年配の方まで幅広く愛されているのだ。
『CHATEAU CAMP』の“CHATEAU(シャトー)”は、フランス語で“城”という意味。ヴィンテージテントを通して、好きなものを集めた自分だけの城を作ってほしいという願いが込められている。
1階にはアンティークショップ『bon cote(ボンコテ)』も併設されており、ヴィンテージテントを見た帰りに寄る方もいる。古いもの・長く愛されてきたものが好きな人にとっては、気になるものが盛りだくさんで、見ていてとてもワクワクする。
ヴィンテージテントの魅力とは
ヴィンテージテントの輸入代行を行っていたことをきっかけに、かつてのオーナーがその世界にどっぷりとハマってしまったという。そこから徐々にヴィンテージテントの数が増えていき、2017年からヴィンテージテント専門店として『CHATEAU CAMP』を営業し始めた。現在の店主である早内さんも、ヴィンテージのカスタム自転車など、古いもの好きが高じてヴィンテージテントにも興味を持ち始めたのだという。
ヴィンテージテントのような大型のテントは、長期休暇を外で過ごすためのものとして、フランスで生まれたといわれている。普段家で使っている家具を持ち込み、ラグを敷いたりして食事などを楽しむスタイルが主流だったそうだ。
物によっては一人で設営できるものもあるため、1泊2日のキャンプでも気軽に使用することができ、現在のキャンプスタイルにもぴったりだ。
早内さんが思うヴィンテージテントの良さは、「デザインや形が唯一無二なところ」だという。量産されていないからこそのユニークな形、色柄、縫製のていねいさ、生産国によって違うテイストなど…その魅力は数えきれないほどある。
ただし、そういった良さもある反面、手入れや維持に手がかかるものも。早内さんは、ヴィンテージテントの魅力や良いところだけでなく、長く使い続けてもらうために、手入れの大変さや注意点、管理方法までしっかりとお客さんへ伝えているという。
どんどん自分のものになっていく感覚を楽しんで
テントは、仕入れてからすぐに店頭に並ぶわけではなく、まず早内さんが目を通し、破損箇所などを修理する。
中には説明書が入っていないものも多く、一度組み立ててその方法を把握するのだという。これが、かなり骨の折れる作業だそうだ。
ギアの一部は消耗品も含まれるため、取り替えのきくパーツを用意することもある。
しかし、オリジナル性を極めていく中で、破損箇所を自分で直したいという人もいるという。
「修理しすぎても、別物になってしまうんです。同じパーツがもう存在しない場合もあるので、うちであるもので直していくのか、自分で用意したものに付け替えたいのか、そのあたりはお客さんの思いを尊重したいですね」と早内さん。
ヴィンテージテントは、修理時だけでなく、自分の変えたいタイミングでパーツを変えていけるおもしろさもある。好みの布、ボタンなど、それぞれの箇所に愛着がどんどん湧いていくのだ。
もともと他の人が使っていたものが、どんどん自分のものになっていく感覚。
大切にすればするほど、手放したくない、唯一無二のテントになっていく。
「大切に使い続けられるものを選んでもらう」ための、早内さんのスタイル
早内さんと話していると、「自分はどんなキャンプスタイルが好きなんだっけ?」「好きなデザインはこういうものだよね」という自分の中のイメージが、自然とまとまってくる。
決してたくさん話すわけではない早内さんが、お客さんと接するときに大切にしていることは、「お客さん自身の好みや希望をしっかりまとめてあげること。そして、強制はしないこと」
例えば夫婦で来られたお客さんには、まずは夫婦の会話・相談を大切に見守る。そして、早内さんが両方の意見をまとめてみると、また新たに見えてくるものがあるのだという。
早内さんはこういった接し方を通して、いかに“想像を膨らましてもらえるか”を大切にしている。
「当日気になったものも、時間をおいてまた見に来てもらっても全然OKですよ。急いで決めるのではなくて、自分たちが大切に使い続けられるものを、じっくり選んで欲しいんです。だからこそ僕は、ここで考える時間を大切にしています」
『CHATEAU CAMP』が大切にしていきたいこと
幼い頃は山が多い地域に住んでいた早内さん。両親によくキャンプなどの外遊びに連れて行ってもらい、そのときの楽しかった記憶、感覚が今の仕事にもつながっているという。
『CHATEAU CAMP』に訪れる若い世代には、幼い頃の外遊びの楽しさが忘れられず、アウトドア好きになったという人も。そして自分でギアをそろえられるようになった今、ここへ足を運ぶのだとか。
外遊びの“楽しい記憶”は、こうして受け継がれ、広がっていく。親から子へ、友達から友達へ。これは、世界共通のものかもしれない。
最後に、これから『CHATEAU CAMP』をどういうお店にしていきたいですか?と尋ねてみた。
「まずは、ヴィンテージテントを自分の目でじっくり見ることができる場所であり続けること。そしてヴィンテージギア自体、どんどん無くなっていくものなので、今あるものを大切に修理して、次の世代に受け継いでいくことを続けていきたいですね。受け継ぎたいのは、道具だけじゃなくて、“経験や記憶”も。楽しく記憶に残る外遊びの経験のための、第一歩や中間地点でありたいと思います」
その人らしさやそこにある想い、空気感、手触りを大切に書いています。まちを歩いて、自分だけの“好き”を見つけることの楽しさを、文章を通して伝えられたら嬉しいです。