スパイシーなビリヤニを通して楽しむ、異国の食体験/Zelenshchik(ゼレンシック)
静岡市葵区六番町にあるビリヤニ専門店『Zelenshchik(ゼレンシック)』。ビリヤニ好きやカレー好き、スパイス本格派のお客さんから「ビリヤニってどんな料理?」というビギナーのお客さんまで、幅広い層から愛されるお店だ。店主の金馬(きんば)さんが、ビリヤニやスパイスの世界の魅力について教えてくれた。
「ビリヤニ」の専門店で、スパイスの世界に浸ろう
「ビリヤニ」を食べたことはあるだろうか。
インドの料理ということは広く知られていたとしても、その作り方や特徴まではまだメジャーではないと言える。インド料理店でその存在を知っても、注文するのには少し勇気がいるかもしれない。
しかし、静岡市に「ビリヤニ専門店」があると聞き、直感的にお店へ足を運んだ。
2019年3月に鷹匠に開店し、2022年4月に静岡市葵区六番町に移転した『Zelenshchik(ゼレンシック)』は、全国的に見ても数少ない「ビリヤニ専門店」。
『Zelenshchik』では、冷凍のビリヤニやカレー、少量から手に入るスパイスキット、ローフードなどの販売に加え、店内のレンタルスペースでヨガや料理教室などの「食と身体」に関わる活動も行っている。
ビリヤニ好きやカレー好きを中心に健康志向の人も多く訪れ、年齢層もさまざま。なんと80歳代の方も足を運ぶとか。
併設する工場でほぼ毎日ビリヤニを炊いているため、お店の中はスパイスの良い香りでいっぱいだ。
店内に並べられたビリヤニやカレーに心を奪われキョロキョロとしていると、店主の金馬さんが案内してくれた。
「こんにちは!来られるのは初めてですか?」
「初めて来ました。僕、ビリヤニはまだ食べたことないんですけど、スパイス系の料理は好きなので気になって」
そもそも「ビリヤニ」って?
「ビリヤニ」とはインド発祥の料理で、とても香ばしい匂いが特徴の「バスマティ米」を使用し、多くのスパイスと、チキンやマトンなどのお肉、魚介、野菜を一緒に炊き込んだものだ。パエリアや松茸ご飯と並ぶ、“世界3大炊き込みご飯”と称される。
本場インドでは、結婚式や誕生日などのお祝いの場で振る舞われることが多いのだそう。
インドの地方によって異なる、ビリヤニの種類
ビリヤニの種類は、大きく3種類。
パッキビリヤニ
ボイルドビリヤニ
カッチビリヤニ
同じインドでも、地方によって違った素材や作り方、違った味わいなのが興味深い。
ビリヤニに馴染みのない初来店のお客さんへも、金馬さんがひとつひとつ特徴を教えてくれる。どの種類もルーツや特徴を聞くとそれぞれが魅力的で、「どれからチャレンジしようかな?」と迷いつつ、ワクワク。
何度も訪れるうち、「前はこればかり食べていたけど、最近はこれが好きかな!」と“ビリヤニのマイブーム”も変化するそうだ。何度食べても新しい発見があるのも面白い。
『Zelenshchik』では、土日限定でビリヤニやカレーのランチも数量限定で提供している。食材が一番おいしい時期である“旬の食材”を使うことを大切にした、あらゆる種類のビリヤニやカレーを週替わりで楽しめる。
「スタッフが増えたら、土日だけじゃなくて平日もランチを始めようと思っています」と金馬さん。
金馬さんがビリヤニを作り始めたきっかけと、移転への想い
金馬さんは、過去に大病を患った影響で体の消化能力が低くなってしまい、それまで大好きだった日本米が少し重たく感じるように。
そんな時初めて食べたのは、当時習っていたヨガの講師がインド土産でくれた「バスマティ米」。その軽さと消化の良さに驚いて以来、好んで食べるようになったのだとか。
「バスマティ米が一番おいしくなる料理が、ビリヤニだと思ったんです。バスマティ米に惚れ込んだことがスタートで、ビリヤニを作るようになりました」
金馬さんお手製のビリヤニを親しい友人や間借り営業・イベントのお客さんへ振る舞う機会があったが、どれも大好評。「それならビリヤニ専門店をはじめてみようかな」と考えたのが開店のきっかけだった。
移転前の鷹匠の店舗では、テイクアウトのビリヤニが大人気に。
「完売が続くことが嬉しい反面、商品を提供できないお客さんがいるのがとても心残りでした。ビリヤニは大量生産が難しいですが、もっとたくさんの人に味わってもらいたいと思い、より大きな工場設備や冷凍ビリヤニを提供するための冷凍設備を設けられる広い場所への移転を考えたんです」
『Zelenshchik』の冷凍ビリヤニは、思うように旅行ができなかったコロナ禍を経て「おうちにいながら、お腹の中だけでもインド旅行を楽しんで欲しい」という金馬さんの想いから誕生した。
そんな『Zelenshchik』の味のこだわりは、“日本人に寄せすぎないこと”。
ホールスパイスたっぷり本格派のビリヤニを食べると、まさにインドにいるような気分に。鼻から抜けるスパイスの香りで、さらなる食欲と元気が湧いてくる。
「ビリヤニは好き嫌いの分かれる食べ物かもしれませんが、少しでもこのおいしさを知ってくれる人が増えたら嬉しいです」と金馬さん。
ビリヤニだけじゃない!『Zelenshchik』
ビリヤニだけでなく、『Zelenshchik』特製のカレーにも注目したい。
野菜をマッシュして煮込んだ爽やかな辛さのある「バジカレー」は、インドでも唯一パンと食べられているカレー。
インド人のソウルフード「ダールカレー」は、挽き割り緑豆を使ったまろやかでやさしい味わい。食べる直前にレモンを絞るのがおすすめだ。
さらに、金馬さんが製造するローフードの商品も。ローフードとは、熱に弱い食物酵素を壊さないよう低温で加熱処理をした食べ物のこと。
ローフード商品の「塗るアーモンド」と「塗るカシューナッツ」は、アーモンドやカシューナッツを生のまますりつぶし、クリーミーなペースト状にしたローヴィーガンバター。金馬さんはお店を始める前から、この商品の製造に携わっていた。
常温商品の棚には、他にも全国からセレクトしたスパイス関連の商品がずらり。
出かけよう、“お腹の中のインド旅行”へ!
おうちで過ごす、ゆっくりとしたある休日。
「お腹減ったなあ。ちょっとパンチのあるものが食べたい」と家中の食べ物を探すと、冷凍庫に『Zelenshchik』で購入した「チキンカッチビリヤニ」と「チャナマサラカレー(ひよこ豆のカレー)」が。
「過去の自分、ナイス!」と、心の中でガッツポーズ。
「冷凍ビリヤニの調理は、湯煎なら少しもっちりとした食感に、電子レンジならパラパラとした食感に仕上がります」と金馬さんから教えてもらったので、どちらも試してみたいが、今回は電子レンジで。
金馬さんの言う通り、お米はパラパラと、さらにチキンはしっとり仕上がり、幸せなスパイスの香りが漂う。
彩りにパクチー、そして味のアクセントにレモンを添えて、お供のドリンクにはスパイスたっぷりの甘いチャイを合わせてみた。ビリヤニのお供には、コーラやミルクコーヒーもおすすめだとか。
ゴロっとしたチキンをスプーンでほぐし、パクリと一口。
「う…うまい!止まらない…!」
あらゆるスパイスの旨味に加え、程よい辛さとしっとりほろほろのチキンが絶妙。
金馬さんが言っていたように、他のお米料理と比べてもさらっと軽く食べられる印象だ。
レモンを絞ってみると酸味とスパイスがマッチして、また違ったおいしさに。
金馬さんおすすめの「チャナマサラカレー」は、トマトベースのカレーにひよこ豆がゴロゴロと入って、香ばしい玉ねぎが食欲をさらに掻き立てる。しょうがやニンニクがよく効いていて、あっさりながらも食べ応えのあるカレーだ。
「けっこう辛さが効いてて、体がポカポカしてきた」
食べ進めるごとに、じんわりと汗をかいてくる。辛さは食べ進めるうちに慣れてきて、素材そのものの美味しさが際立つように。
「ふぅ〜どれもおいしかった!今度行ったら別のビリヤニやカレーも試してみようっと」
日常の中にあるこうした新たな食体験は、とても貴重で楽しい。
みなさんも『Zelenshchik』でいろんなビリヤニやカレーを試して、気軽に“お腹の中のインド旅行”をしてみてはどうだろう。
『Zelenshchik(ゼレンシック)』
営業時間/11:00〜18:00
休業日/月曜・火曜
電話番号/050-8883-5988
住所/420-0076 静岡県静岡市葵区六番町4-5
駐車場/あり 店舗前2台、隣敷地内3台