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意外と知らない災害リスク。想定外の「まさか」に備える防災・対策ガイド -台風編-

意外と知らない災害リスク。想定外の「まさか」に備える防災・対策ガイド -台風編-

強風と大雨によって、ときに甚大な被害をもたらす台風。その影響は停電や浸水だけでなく、予想外のトラブルや二次災害を引き起こすことも。気象庁によると、台風は年間のうち7〜10月が最も多く、特に注意が必要な時季。事前にリスクを知り、身を守るための対策を学ぼう!

監修は、子育て防災アドバイザー・ふじのくに防災士の高良 綾乃(たからあやの)さん

沖縄県出身、静岡県三島市在住。三島市防災士会会長。東日本大震災の際、仲間と共に支援物資を送ったものの、被災地で必要な物資はめまぐるしく変化することを知り、そこから猛勉強。ふじのくに防災士、食育指導士などの資格をもち、子育て防災アドバイザーとして、防災知識に関するウェブライター、静岡各地の防災セミナー・防災クッキングの講師などの活動をしている。

高良 綾乃さんのInstagramはこちら

高良さんが考える、台風災害の5つの「落とし穴」とは?


「鈴木さんこんにちは! 子育て防災アドバイザー・ふじのくに防災士の高良(たから)です」


「高良さんこんにちは、今日はよろしくお願いします! 最近、台風の発生や接近に関するニュースを見かけることが多くなりました。台風被害のニュースを見ると、『備えておかないと!』と意識はするのですが、台風時の対策や過ごし方ってあまり想像できなくて」


「なるほど。たしかに地震などと比べると、台風については知らないことが多かったり、“きっと大丈夫だろう”と思ってしまったりすることがありますよね」

「台風によって停電や断水が発生することがありますが、実際にそれがどんなところまで影響を及ぼすか、イメージしにくいかもしれません。また、強風によって思いもよらないものが飛んでくることも。さらには、外出時の危険、避難所生活の落とし穴もあるので、知識のある・なしでは、大きな差になるんです」


「避難指示が出てから慌てだす自分が想像できちゃいました……」


「でも大丈夫! 台風は急に発生するものではありません。きちんと事前にリスクと対策を知っておけば被害を最小限にできます。まずは台風による停電・断水・飛来物・外出時の危険・避難所生活の落とし穴について詳しく学びましょう」


「はい!よろしくお願いします」

台風による停電


「台風による停電は、電線が切れたり電柱が倒れたりすることが原因で、復旧までにかかる時間はそのエリアや被害規模によってそれぞれ。携帯電話が充電できない、電化製品が使えないのは当然ですが、特に困るのは冷蔵庫です」

「でも、食品が傷むからと中のものをむやみに外に出すのはNG。停電してもある程度冷たい状態を保ってくれるので、ドアの開閉を最小限に抑えることのほうが大切です。冷凍庫はものが多い方が冷却効率が上がり省エネになるため、普段から多めに入れておく『フェーズフリー(※)』の対策法がよいでしょう」
※日常時と非常時を区別せず、普段使いのモノやサービスが、災害時にも役立つように設計された考え方

「また、前日までにペットボトルの水を凍らせておくこと。これが保冷剤として機能しますし、断水の場合はそのまま飲料水としても使えます」


「停電で意外なものが使えない、ということはありますか」


「車の浸水や飛来物の被害を避けたいと思っても、ガレージのシャッターが電動の場合は停電になると動きません。これは機械式駐車場も同じ。天気予報をチェックして、車をガレージから出して高台に移動させておく、シャッターの電源を手動に切り替えておくなど、早めに対策をとることが有効です」


「オール電化の住宅はどうなるのでしょう……」


「オール電化の場合は熱源が電気のみですので、停電によってお湯が沸かせない、お風呂に入れないなど、“何ができなくなるか”をまず把握しておくこと。そのうえで、カセットコンロや汗ふきシート・ボディシートといった代替アイテムを常備しておくとよいでしょう」

台風による断水


「台風によって水が使えなくなるのも心配です」


「台風による断水は、浄水場の停電や浸水による被害、水道管の破損などによって起こります。停電同様、被害規模によって復旧までの期間は異なりますので、普段から水をストックしておくことが大切。他に注意したいのはトイレです」

「断水から復旧した後は、排水管内の空気圧の変化や詰まりによって、トイレや排水口から水が逆流しやすくなっています。そのため、すぐにトイレの水を流すのは危険です。まず、便器に溜まっている水が「ポコポコ」と音を立てていないか、蓋の裏側が跳ねた水で汚れていないかを確認してください。この音は、排水管の詰まりによって行き場を失った空気が噴出しているサインと考えてください」


「なるほど。その場合はむやみに流さず、自治体などに相談するのがよさそうですね」


「その通り。また集合住宅の場合、上の階は電力でポンプを動かし、各階に水を供給していることが多いため、停電によって断水する恐れがあります。『増圧直結給水方式』『貯水槽水道方式』などがそれに該当しますので、現在お住まいの住宅の仕組みについては事前に把握しておきましょう」

台風による飛来物


「台風特有の飛来物による被害ですが、どんなことが起こり得るのでしょうか」


「飛来物は自身が被害を受ける側にも、与える側にもなるということが特徴的。トタン屋根やアクリル板、植木鉢などが飛ぶのはよくあるケースです。まずは台風が来る前に、リスクのあるものを屋内にしまう、場合によってはくくりつけるなどの対策をしましょう。台風時は小石が飛んできただけでガラス窓が割れる可能性があります」


「できる対策について教えてください」


「窓にシャッターがある場合は早めに閉めておきましょう。ガレージのシャッターと同様に電動シャッターは停電で動かなくなるため、手動に切り替える方法を把握しておくことも必要です」

「シャッターがない場合は窓ガラスの飛散防止対策を。ホームセンターや100均などに売っている飛散防止フィルムを貼っておけばまず安心。貼り方のコツは窓ガラス・フィルム両方をたっぷりの水で濡らすこと。空気が入らずきれいに貼ることができます」

「養生テープも便利。理想は全面ですが、それが難しいなら窓枠の四辺と対角線に貼りましょう。ただ、養生テープは台風が近づくと品薄になりがち。その場合は窓ガラスに段ボールを立てかけたり、カーテンを閉めてテーブルや椅子などで押さえるだけでも効果は期待できます」


「万が一窓ガラスが割れたとしても、室内でケガをしないようにするのが大切ですね」


「そうですね。小さなお子さんがいる場合、日当たりがいいからと窓辺にベビーベッドを設置していることも。台風の際はきちんと内側に寄せるのも忘れずに」

冠水時の外出の危険性


「家の外にいる場合の危険についても教えてください」


「大雨による冠水によって、いつもの道や風景が一変します。側溝や用水路との境界線が分かりづらくなるので、通り慣れているからといって対策せずに外へ出るのは危険。また、一見水深が浅くみえても、思わぬ段差によって足を取られたり、ときにはマンホールの蓋が開いていて落ちてしまったりという危険性もあります」

「トンネルや橋の下など、冠水しやすいスポットは自宅周辺5kmくらいまで、事前に把握しておきましょう。といってもハザードマップに細かい情報は出てきません。SNSで過去の投稿を調べたり、ご近所同士で情報交換したり。街の情報に詳しいタクシー運転手などに聞くのも手です」

「冠水時の外出は避けたいですが、水位がふくらはぎ以下でどうしてもという場合は様子を見ながらゆっくりと進むこと。その場合、ヒザ下まである長靴などで対策しましょう。長靴ひとつとってもベーシックな長靴から、持ち運び・着脱しやすいタイプ、鉄板の入ったタイプなど、形や特徴はさまざまです。冠水時の歩行を考えると、足にフィットする細身の脱げにくいタイプがおすすめです」

「靴の上からカバーできるタイプの長靴は、急な雨で靴を濡らしたくないときでも便利です。職場や車内などに置いておくとよいでしょう。ただ、どれも一長一短なので、普段から履き慣れておき、シーン別に使い分けることをおすすめします」

避難所生活の意外な困りごと


「避難所生活で実際に困るのはどんなことでしょうか」


「実際にわたしが体験して感じたのは、いかに他の人に迷惑をかけないか、そして、いかに子どもと一緒に静かに過ごすかです。今の子どもたちはスマホやゲームなどを使いこなしていますが、災害時にはそれらが使えないことが多いため、電気を使わずに遊べる暇つぶしグッズが重宝します」

「お絵かき帳や本、パズル、ボードゲーム、意外とおりがみも集中して遊べますね。絵を描いて行う『絵しりとり』は、大人も一緒になって、静かに盛り上がれるのでおすすめです」


「避難所での非常食の選び方にポイントはありますか」


「お隣さんに迷惑をかけないことが鉄則かと思います。カップラーメンなど匂いがするもの、音がするものは避けたいところ。台風での避難は基本一晩のことが多いので、例えばドライフルーツやナッツ、カロリーバー、温めずに食べられるレトルトパウチ食品などが◎。どこでも買えて、手軽で便利です」


「あと、避難所では靴の履き違えが多いんです。こんなふうに名前を書いておくことも意外と大切なんですよ」

高良さん流「台風対策やることリスト」


「思ってもいなかったリスクや落とし穴があってびっくりしました!」


「最後にまとめるとこんな感じでしょうか。普段からこのような『やることリスト』を準備し、いざというときはこれを見ながら家族みんなで準備するのがよいでしょう」

最後に、高良さんからのメッセージ


「台風と地震の大きな違いはリードタイムがあること。事前に情報を入手し、リスクを知ることによって、十分な対策ができるんです。これがひいては地震といった大きな災害時への予行演習になることも。『やることリスト』まで落とし込んで、家族みんなが安心して過ごせるようにしましょう」


「“なんとなく”ではなく、具体的な対策によって被害を最小限にすることができるんですね。さっそく実践してみたいと思います。高良さん、本日はありがとうございました!」

※本コラムに掲載されているグッズは高良さんの私物であり、特定の商品を推奨するものではありません

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更新日:2025/9/2

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