あのCMのロケ地をめぐる、用宗の“すてき”な場所
最近テレビや静岡駅大型ディスプレイで流れている『静岡ガス』のCM。どこか懐かしい映像は、静岡の港町・用宗に住む人の暮らしや、お店の魅力が切り取られており、画面の向こうにまだ知らない用宗があるようだ。CMに登場した3店舗をめぐり、用宗の“すてき”な場所を再発見してみよう。
JR東海道静岡駅から電車に揺られて約7分。あっという間に到着する用宗は、静岡の街並みとはまた違い、のどかな風景とゆったりとした空気感が印象的だ。路地裏を散策しながら海へ向かう。打ち寄せる波音と潮風が心地よく、キラキラとひかる水面が美しい。
初めてのSUP体験で非日常を味わう『クラブサリーズ』
最初に訪れたのは『クラブサリーズ』。
『クラブサリーズ』では、マリンアクティビティを気軽に楽しむことができる。
今回は、初めてのSUP(サップ)にチャレンジ。
SUPとは、サーフボードの上に立ち、一本のパドルで左右を交互に漕ぎ、海などの水面を進むウォータースポーツ。スタンド・アップ・パドルボードの頭文字をとって「SUP」と呼ぶ。
初心者でも楽しむことができる、近年人気のマリンアクティビティだ。
今回体験したジャンルは、ゆっくりと海の上を散策する「クルージングSUP」。
ボードとオール、ライフジャケットは貸出可能で、濡れてもいい服装やレギンス、サンダルなどで簡単に参加ができるのも嬉しい。
「SUPは、ボードに安定感があるのでバランスがとりやすく、子どもから大人まで楽しめるマリンアクティビティです。用宗の海という最高のロケーションの中、SUPの楽しさを体感してほしいですね」と、店主の仁科さん。
さっそく体験スタート。まずは岸でオールの漕ぎ方をレクチャーしてもらい、慣れてきたら海へ移動する。
さっそくボードへ乗ってみると、思った以上に安定感があり驚いた。ライフジャケットを着ているので、万が一海に落ちた場合でも安心だ。
オールを漕ぎながら、水の推進力を使い、ゆっくりと進んでいく。波音を聞きながら、爽やかな青い海に包まれたような穏やかな気分になれる。
テトラポットの間から見える遠くの海と水平線は、砂浜から見るそれよりも雄大に感じる。
徐々に慣れてきたので、恐る恐る立ち上がってみると、初心者の私でも簡単に立つことができた。
太陽に照らされた波に揺られながら、次第に心がゆるんでいく。こんなにゆっくりとした休日はいつぶりだろう。夢心地の時間はあっという間に過ぎていった。
「マリンアクティビティは、楽しいだけではなく、地域と人ををつなげる力があります。SUPをきっかけに仲間をつくり、他の地域へアクティビティをしに出かける方も、大勢います。用宗の海からはじまる、新たなつながりを提供できる場をつくっていきたいですね」
穏やかな漁港の風景と天然温泉に癒される『用宗みなと温泉』
『クラブサリーズ』を後にして、次に向かったのは、『用宗みなと温泉』。
漁港のすぐそばにあるという珍しいロケーションとその美しさが最大の魅力だ。
「ここには用宗の代表的な風景があります。肌で温泉を、目で景色を感じながら、用宗の良さを存分に体感してほしい」と、館長の渡辺(わたなべ)さん。
『用宗みなと温泉』では、通常のサウナよりも汗をかきやすいといわれる遠赤外線サウナや、100%天然温泉の露天風呂などを楽しむことができる。
ミネラル豊富な水が使用され、保湿効果も抜群だ。
館内に併設された『アオサギ食堂』では、麺類や丼もの、アルコールなどのドリンクも楽しむことができる。
温泉に入るとお腹が減ってしまうのはなぜだろう。誘われるように席についた。
『アオサギ食堂』のおすすめは、イタリアンレストランで修行したという女性シェフ考案の「唐揚げ」。こだわりの店内仕込みで、衣はとても香ばしく、中は鶏肉の旨味が凝縮されている。
「唐揚げ単品 選べるソース」は、柚子胡椒マヨ・スウィートチリ・梅しそのソースから選ぶことができ、とても人気のメニューだ。
今回選んだのは、一番人気の「柚子胡椒マヨ」。あつあつの唐揚げはボリュームたっぷりで、そこにかかったマヨネーズのコクと、柚子胡椒の爽やかさが絶妙だ。
用宗の代表的な特産品とも言える、ふっくらとした釜揚げしらすも味わうことができる。
潮風が気持ちいい「富士見テラス」は、風呂あがりに涼むのにぴったりの場所だ。
『アオサギ食堂』のフードやドリンクを持ち出すこともでき、晴れた日は遠くに富士山、目の前に漁港を眺めながらいただくことができる。
『ワックワック売店』では、県内外のお土産が用意されている。中でも、サウナとお風呂好きに向けて作られたオリジナルTシャツがおすすめだ。デザインはなんと館長の渡辺さんが担当。くすっと笑える、ユーモアのあるキャラクターは、フィンランドのサウナの妖精をイメージしたそう。
お風呂上がりに、懐かしい牛乳瓶を手に取る。
港を眺め、まるで旅先に来ているような気分だ。
「『用宗みなと温泉』は、特別な日だけではなく、何気ない日にも訪れたくなるような、“日常になじむ存在”でありたいと思っています。ここに来て、ふっと肩の力を抜いて欲しいですね」と、渡辺さん。
温泉とサウナ、ここでしか食べれない味、そして美しい風景に癒される至福のひと時だった。
“親切な干物”をみんなの食卓に『かねいち干物店』
最後に訪れたのは、『かねいち干物店』。お店に訪れると、奥から店主の仁科さんが「こんにちは。ゆっくり見ていってね」と気さくに声をかけてくれた。
仁科さんは干物の“鮮度”にこだわり、仕入れた魚は必ずその日にさばく。そうすることで臭みがなく、身がきゅっとしまったものができあがるのだ。
そして、何十年も継ぎ足された“秘伝”の漬けだれに浸し、一つひとつ手で干していく。じっくりと熟成したこの漬けだれも、おいしさの秘訣だ。
さらに、『かねいち干物店』の干物は通常よりも骨が少なく、炙った身に箸を入れると、ほろほろと簡単にほぐすことができる。
魚嫌いになってしまう主な理由に“骨を取り除く作業の煩わしさ”があるが、仁科さんの作る干物は、製造段階でしっかりと骨が取り除かれているので、豪快にかぶりついても、のどに刺さる心配がほとんどない。
「コンセプトは、“親切な干物”。小骨が苦手で魚を食べられなかったお子さんが、おいしいと言って食べたと聞くと嬉しくてたまらないよ」と、仁科さん。
機械乾燥ではなく、しっかりと日光に当てて干すことで、アミノ酸などの栄養素がより豊富に含まれた干物に仕上がるそうだ。だからこそ仁科さんは、創業当時から徹底して日干しにこだわる。
干物はすべて完全無添加。保存料・着色料などは使わず、酸化防止にはお茶の葉カテキンを使用しているので安心。
用宗の潮風と太陽に照らされて、旨味がぎゅっとつまったここだけの干物ができあがる。
おすすめは、海を目の前にして楽しめる「海鮮バーベキュー」。
仁科さんが店頭でのバーベキューを始めたのは、干物を通してみんなに用宗の美しい景色を体感してほしいという想いからだった。
「ここの景色、素敵でしょ。せっかく来たんだから、うちの干物を味わいながら、ゆっくりしていってほしいな」
炭火でじっくりと焼かれた干物の香ばしさに、食欲をそそられる。
焼き立てをぱくりと一口。凝縮された旨味がじゅわっと広がって、あまりの美味しさに笑みがこぼれた。
仁科さんのていねいな作業のもと、用宗の太陽と潮風で仕上がる絶品の干物を、ぜひ味わってみてほしい。
“港町”としての昔ながらの風景と、そこになじむ新しい風景。そこには用宗を愛する多くの人が日々訪れる。
静岡ガスのCMに登場した3店舗をめぐり、少し用宗の印象が変わった気がした。
このまちにまた訪れたいと思ったのは、非日常と日常が入り混じる楽しさを感じたからだろうか。
今回紹介をしたスポットが映るCMはこちら。どのお店が、どのシーンで登場しているか、ぜひ探してみてほしい。