静岡市美術館「NHK大河ドラマ特別展 どうする家康」11月3日(金・祝)〜12月13日(水)まで開催
戦国乱世に次々と起こる予期せぬ出来事に、逃げることなく答えを出し続け、泰平の世の礎を築いた徳川家康。本展は「どうする?」をキーワードに、その生涯において重要なターニングポイントとなった合戦や出来事の数々を、豊富な資料を通してひもといていく。WOMOでは、戦乱を生きただけでなく文化や芸術を愛し、外交を通じてゆたかな世を作り出そうとした徳川家康の人物像や本展の見どころをご紹介。
大河ドラマ「どうする家康」(NHK)で盛り上がりを見せる静岡市
2023年大河ドラマでは、約40年ぶりに「徳川家康」を題材にした「どうする家康」が放送されており、家康が生涯の3分の1を過ごした静岡市は大きな盛り上がりを見せている。静岡浅間神社境内には「どうする家康 静岡 大河ドラマ館」が2024年1月28日まで開館中。「静岡市歴史博物館」では、企画展「駿府城と徳川家康」が10月28日から開催されるなど、家康関連の展覧会が続々と開かれている。
「静岡市美術館」で11月3日(金・祝)から開催される巡回展「NHK大河ドラマ特別展 どうする家康」は、東京、岡崎での開催を経て、静岡が最後の開催地となる。国宝・重要文化財を多数含む110点余りの作品を一堂に見れるチャンス!この機会に静岡市美術館に足を運んでみよう。
必見!「静岡市美術館」最多の国宝・重要文化財約50点を展示
今回の1番の見所は、豊富な文化財の数々。国宝6点、重要文化財約45点を筆頭に、全国の県・市指定の文化財も多数含む貴重な資料が一堂に会する。中でも「関ヶ原の合戦」で着用し、「大坂の陣」でも身近に置いたと伝わる徳川家吉祥の鎧「歯朶具足(しだぐそく)」や受け継がれてきた刀剣、装束、調度品など、静岡会場限定出品の遺愛品たちは必見!
誰しもが教科書で見たことのある文化財をこの目で見れる貴重な機会だ。
「関ヶ原の合戦」で着用した徳川家吉祥の具足
重厚感のある出で立ちの「歯朶具足(しだぐそく)」。「関ヶ原の合戦」の前に、家康の夢に出てきた大黒天をモチーフに作られた。派手さはないが、静かな迫力が感じられる。家康にとって、「関ヶ原の合戦」に勝利した際に着用していた思い入れの深い具足だったのかもしれない。後に、「大坂の陣」に持っていったという逸話が残る。神仏や縁起物を大切にした、家康らしいエピソードだ。
家康に数々の決断を迫った織田信長の姿
織田信長の肖像画といえば、教科書で見たことがあるという人が多いだろう。面長で鼻筋が通っている顔は、武将信長のイメージより穏やかな顔をしているように感じる。狩野元秀(宗秀)「織田信長像」は、中国から伝来した竹の繊維の紙に描かれている。保存状態が良いため、絵柄をしっかりと見られるのが嬉しい。
なお、会期後半の11/17〜12/13には、信長の下で安土城の障壁画などを手掛けた狩野永徳の筆とされる「織田信長像」(大徳寺蔵)が展示される。
神となった家康に捧げられた太刀「太刀 銘 真恒(さねつね)」
死後、神として家康を祀り、久能山東照宮の社殿完成と同時に、徳川秀忠が奉納した名刀だ。平安時代に作られたという古い歴史を持ち、厳選された唯一無二の刀である。武将にとって名刀は、命に代わる存在といってもいいほど価値あるものだった。人の命は尽きても物は世に残る。800年あまりを経ても輝きを失わない神秘的な美しさと迫力を体感してほしい。
信玄、信長、秀吉、家康ゆかりの名宝を多数展示
武田信玄、武田勝頼、織田信長、豊臣秀吉など、徳川家康に幾多の試練を与えた武将たちの肖像画やゆかりの品々をはじめ、「長篠の合戦」、「小牧長久手の合戦」、「大坂の陣」など、家康にとって転機となった合戦の様子を描いた絵画資料の数々を紹介。
長篠で武田勝頼軍を撃破!初期合戦図屏風の貴重な作例
江戸時代は、合戦屏風が盛んに描かれていた時代。この絵は江戸時代の初期に描かれ、本来は対になるもう一つの屏風があったと推測されている。「長篠の合戦」の様子が細やかに描かれ、ひときわ目に留まるのは、家康の本陣を意味する金の扇。緑と赤のコントラスト、金の色合いなど高い芸術性を感じられる。
天下統一を成し遂げた豊臣秀吉の姿
織田信長の死後に天下統一を成し遂げた豊臣秀吉。秀吉の死後、豊臣家は「大坂の陣」によって家康に滅ぼされた。この肖像画は、画面上部の賛から秀吉の三回忌に描かれたことがわかる。細やかな筆使いと色使いが印象的だ。
戦場に輝く金の扇
合戦時に使用され、家康が敵に対して自分の存在を示すために使っていた金の扇。
同時に味方を鼓舞し、士気を高めて勝利への道を指し示した。扇子のように畳むことができ、竿に立てて使用したという、考え尽くされた機能性も興味深い。革に金箔を貼り付けた扇子は、華やかで洗練されたデザインだ。
家康が愛した駿府の暮らし
江戸幕府を開いた後、わずか2年で征夷大将軍の座を三男の秀忠に譲り、駿府に活動の拠点を移した家康。引退後も秀忠の後ろ盾として、幕府の基礎を固めていった。
家康が愛用していためがね
家康が愛用していためがねは、中国または長崎で作られたとみられるもの。モダンで洗練されたデザインは、家康の美意識の高さを物語っている。貿易でもたらされた数々の品は、家康の暮らしを彩っていたのだろう。伝統文化を大切にしながら、新しいものも積極的に取り入れていた姿からは、好奇心旺盛な人物像が思い浮かぶ。
洗練された粋なデザイン
能を好んだ家康が着用した可能性がある着物。芸能を鑑賞するだけでなく、自らも舞っていたことには驚きだ。袖と首元には、三つ葉葵の家紋が。粋なデザインが美しい。のちに、この着物は狂言鷺流の家元に贈られたと由緒書が残されている。
駿府で進められた出版事業
学問と読書を好んでいた家康は、良質な書籍を後世に伝えるため、出版の事業に着手し、最初に完成した『大蔵一覧集』はお寺にもおさめるよう指示したという。武将、政治家というイメージが強いが、文化や教養を守るためにも行動していたのだ。
神格化された家康の軌跡をたどる
戦乱の世の終焉を見届けた家康は、駿府で鷹狩などを楽しむ余生を送る。
1616年2月に鷹狩の最中に発病し、同年4月17日、駿府城で生涯を閉じた。
その亡骸は久能山に埋葬され、後水尾天皇の勅許を得て「東照大権現」として神格化された。
家康亡き後、悲しみに暮れる駿府城内を描く
保存状態が良く、鮮やかな色彩が印象的な絵巻。布団の上には、駿府城で亡くなったばかりの家康が横たわっており、悲しみに暮れる人々の姿が描かれている。女性たちの着物の絵柄の細やかさや、優れた構図も見所の一つ。天下泰平の時代を築きあげた家康の最期のワンシーンである。
徳川家鎮護の願いを込めた、晩年の愛刀
家康が晩年に愛用していた名刀。罪人の試し斬りを命じた際、切れ味がよかったと聞くとたいそう満足したという。そんな家康は、亡くなる前日に刀にまつわる遺言を残していた。
「自分の臨終の際は、この刀を枕刀にするように。久能山に納め、鋒を西国に向けて立てて置けば、剣威をもって末代まで徳川家を護るだろう」
死後もなお天下泰平の世を願い、未来を見据えていた家康らしい遺言である。
家光の夢に現れた家康の姿
死後、神となった家康の肖像画である。家康の孫である三代将軍・家光は、家康の死後も尊敬し、心の拠り所にしていた。こちらは、そんな家光の夢に現れた家康の姿を絵師に描かせた図様を受け継ぎ描かれたもの。徳川家を守るかのように佇む姿からは、穏やかな風格を感じられる。後に徳川慶喜家に伝来し、代々大切に保存されてきた。
「NHK大河ドラマ特別展 どうする家康」へ足を運ぼう!
本展は、戦乱を生きた武将としての家康の素顔だけでなく、文化や芸術を愛した文化人としての側面も堪能できるのがおもしろい。その心根にあるものは、人々の平和な暮らしを願う一人の人間としての姿だったのではないだろうか。
見どころ満載なので、じっくり見るため時間に余裕を持って行くのがおすすめだ。
知れば知るほど、家康に対するイメージだけでなく、私たちが暮らす静岡の見え方も変わるかも。
貴重な文化財や資料を通して、家康が生きた時代とその背景をじっくりと堪能しよう。
2回目以降の来場では、有料観覧券の半券を提示すると200円引きになる「リピーター割引」もあるので、ぜひ利用してみては。
展覧会情報
大河ドラマ特別展 どうする家康
■会期/2023年11月3日(金・祝)〜12月13日(水)
※会期中、一部展示替えあり
■開館時間/10:00〜19:00(展示室は最終入場18:30)
■休館日/11月20日(月)
■会場/静岡市美術館(静岡市葵区紺屋町17-1 葵タワー3階)
■駐車場/なし(近隣の駐車場を利用)
■アクセス/JR静岡駅北口から徒歩3分
■問合せ/054-273-1515
■HP:https://shizubi.jp/
その他さまざまなイベント、本展限定のグッズ販売を予定。
音声ガイド
ナビゲーター:広瀬アリスさん
大河ドラマ「どうする家康」で於愛の方を演じる女優・広瀬アリスさんが、展示作品の魅力をていねいに紹介。