もしも災害が起こったら?ペットを飼う家庭のための防災について考えよう
災害が起こった時のための備えや心構えはしているつもりだったけれど…大切なペットを守るためにはどうしたらよいのだろう?ペットの犬や猫と一緒に被災したときの避難の方法や、災害に備えて用意しておきたいものなどを実践的にご紹介!
監修は「認定NPO法人 まち・人・くらし・しだはいワンニャンの会」代表 谷澤 勉さん
「認定NPO法人 まち・人・くらし・しだはいワンニャンの会」
静岡県中部の志太榛原地区(焼津市・藤枝市・島田市・吉田町・牧之原市)を中心に活動する動物愛護団体。不幸な犬猫を減らすのはもちろんのこと、人も動物たちも住みやすい地域づくりを目指し活動する。また、災害時のペット避難や飼育などについて広報も行う。
「認定NPO法人 まち・人・くらし・しだはいワンニャンの会」
「鈴木さんこんにちは、まち・人・くらし・しだはいワンニャンの会の谷澤です。今日はよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします!私は将来、犬を飼いたいと思っているのですが、ペットがいる家庭で対策すべき防災の知識がありません。備えておくべきことなど、自分にできることを教えて欲しいです」
「ペットを飼う際には、もしも災害が起きてしまった時に飼い主とペットの安全が確保できるよう、日頃から備えておくことが重要です。2024年1月1日に起きた能登半島地震では、避難所でペットが受け入れてもらえなかった例、脱走して迷子になってしまった例など、さまざまな報道がなされていました」
「非常時なので、現地も混乱しますよね」
「そうですね。避難所では『ペットを飼っている人』『飼っていない人』さまざまな人が一緒に生活をすることになるため、ペットの受け入れにもさまざまな意見が出ることが想定されます。有事に備えて、飼い主ができることを一緒に考えていきましょう」
谷澤さんに聞く「ペットがいる家庭での防災対策、防災グッズリスト」
「こちらは非常時に持ち出すための防災グッズです。飼い主の防災バッグにプラスして、ペット用のグッズも入れておきます。猫の場合は、このようなペットキャリーバッグに入れて避難します。“いざ”というときに重くて運べない、ということにならないように、最小限の荷物にまとめましょう」
「どれくらいの量を備えておけばよいのでしょうか」
持ち出し用のペットフードは犬も猫も3日分が目安です。トイレシーツは5枚程度準備しておくと良いですね」
「持ち出し用は3日分が目安ですね。備蓄用はどうでしょうか?」
「備蓄用は1か月分を準備しておくと安心です。災害が起こった時、私たち飼い主には救援物資や支援がありますが、ペットのための救援物資は届かないことを想定して備えてください。普段使用しているものを大容量でストックし、なくなる前に補充する日常備蓄(ローリングストック)を実践すると良いですよ」
ペット防災備品チェックリスト
「備蓄品以外にも、緊急時に避難するために準備しておきたいことがたくさんあります。まず、犬や猫の場合は首輪は室内でも外さず、飼い犬を登録した際に配布される鑑札(かんさつ)や迷子札は常時つけておくようにしてください。飼い主の住所や連絡先を記載しておくことで、迷子になってしまったときに連絡をもらえるかもしれないですよね」
「なるほど。首輪についている黄色の布は何ですか?」
「これは猫用の迷子札です。猫の場合は鑑札がないので、このように自作して首輪につけておくと良いですよ。そして、普段から、ダニやノミの駆除などの健康管理をしっかりしておくことも大切です。狂犬病予防接種、ワクチン接種など、基本的な感染症予防をしておきましょう」
マイクロチップ・鑑札・迷子札のちがい
「“備え”というのは備蓄品だけではないんですね」
「そうですね。犬の場合は日ごろからトレーニングをしておくことも必要です。吠えないでいられること、“待て”をしてケージやクレートに入って静かに待っていられること、“おいで”で呼び戻しができることなど、しつけは普段の生活で少しずつ身につけておきましょう」
「リードは身近なところに置いておき、災害が発生したらすぐにつけるようにしてください。大型犬や中型犬は、普段おとなしくても恐怖のあまり人間を攻撃することもあります。引き網をつけてコントロールできるようにしましょう。小型犬や子犬はキャリーバッグやクレートに慣らしておくと良いですね」
「すべてのペットに共通して言えるのが、近所の方たちとの情報共有の大切さ。どこの家にどんなペットが何匹いるのか、情報交換をしておくことで、緊急時や飼い主の不在時に、お互いの助け合いが可能になります。また、地域の防災訓練にペット同伴で参加し、災害時にペットと避難してくることを自治体や自主防災組織に理解してもらうことも必要です」
「飼い主側からの積極的なコミュニケーションや働きかけも重要なんですね」
ペット防災やっておきたい事リスト
災害が起きた!「ペットと避難するときの注意点」
「もしも災害が起こってしまったら、まずやってほしいことは、“自分の身の安全を確保”。それから小型の動物はキャリーバッグに入れ、置き忘れて避難してしまわないように、責任者を決めて必ず連れて出ます」
「練習してみるとキャリーバッグに入ってくれませんでした…。普段から慣らしておかないと、緊急時に嫌がって入ってくれない子もいそうですね」
「その通りです。災害時に隠れて捕まえられない可能性もあります。それならば、普段から猫の避難場所をつくってあげるのはどうでしょう。そこにキャリーバッグを置いておくのです。居心地の良い場所にしてあげれば寝床になり、隠れ場所にもなるので、いざ猫を連れて避難というときに探しやすくなるはずです」
「大型犬は、姿を確認したらすぐにリードをつけておきます。それから被害や避難所についての情報収集をして、避難の準備をします」
「もし自宅に置いてきたペットが行方不明になってしまった場合は、被害が落ち着いてから自宅に餌を置き、“自宅付近で”名前を呼ぶなどして探します。動物は帰巣本能がありますから、戻ってきてくれる場合があります。
逆に、慌てて自宅から離れた場所で声を掛けてしまうと、そこに飼い主がいると勘違いして迷子になってしまう場合があるので注意してください。」
避難所以外のペットの避難場所
ペットを連れて避難所へ。「そのときに気をつけることは?」
「ペットを連れて避難所で過ごすときの注意点はありますか?」
「自宅が居住可能であれば、避難所に行かずに自宅で過ごすことが一番です。もしも避難所で過ごすことになってしまった場合、避難先での過ごし方にルールはなく、各自治体や自主防災組織の方針に従うしかないのが現状です」
「ペットを飼っていない家庭とも共同生活をするとなると、気をつけなければならないこともありそうです」
「できる限りまわりの被災者とトラブルにならないようにしきりをつくったり、糞尿の適切な処理や臭いのケア、衛生面や健康管理にも気をつけましょう。被害が小さかった地域のボランティア団体や獣医師会などが、ペットの一時預りをしてくれることもあります」
「ペットを飼っている人もそうでない人も、お互いが余裕がない中で少しでも助け合えるように、ストレスを減らす工夫が必要なのですね」
「避難所にはペットが苦手な人もいるはずです。ペットと避難所で過ごすことには、さまざまな意見があるでしょう。災害が起きたら、もちろん人命が第一優先。そうでなくてはペットの命も救えませんから。
ただ、不安の中、ペットの存在に支えられている人がたくさんいるのも事実です。わたしたちが今できることは、皆が思いやりを持って助け合える仕組みを、官民が連携してつくりあげることではないでしょうか」
WOMOスタッフも、ペット防災に取り組み中!
くじらくん/猫・オス
準備しているもの
ウェットティッシュ、防臭袋、ペットフード、携帯用簡易トイレ、トイレスコップ、おもちゃ
「防災グッズを揃えようとしたきっかけは、SNSでペットと被災した方の投稿を見たこと。リアルな声を参考にさせてもらっています。また、避難場所での糞尿トラブルの対策として、トイレグッズや防臭袋はしっかり準備しています。実際に被災された方のSNS投稿でおもちゃが必要だったと書いてあったので、私も猫が使い慣れているものをもう1つ用意しました。フードはローリングストックをして、いつ災害が起きても困らないようにしています」
天春(てんしゅん)くん/犬・オス
準備しているもの
クレート、狂犬病予防注射済票
「避難所では放し飼いができないので、小さい時からクレートの中でじっとしている訓練を行いました。また、狂犬病予防注射を打っていることが証明できないと避難所に入れない場合があるので、狂犬病予防注射済票も準備しています」
ほかにも、防災をもっと身近にするためのコラムを発信中!
静岡県出身のフリーランスのライター&エディター。よく食べよく笑うことが日々の糧。「案ずるより産むが易し」の精神で前のめりに活動中。