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今、学んでおきたい!暮らしに関わるエネルギーのこと vol.2

今、学んでおきたい!暮らしに関わるエネルギーのこと vol.2

前編では、国内の発電にはさまざまな方法があり、そこに「エネルギーミックス」の考え方があると学んだWOMOモニターの2名。後編では、身近な電気と「エネルギーミックス」の関係について、引きつづき名古屋大学教授の吉橋幸子さんに話を聞いた。

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今、学んでおきたい!暮らしに関わるエネルギーのこと vol.1

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講師とWOMOモニターをご紹介

【講師】

吉橋 幸子(よしはし さちこ)さん

名古屋大学核燃料管理施設(大学院工学研究科総合エネルギー工学専攻)・教授。大阪大学大学院工学研究科修了。大阪大学博士(工学)。がん治療のための中性子発生装置の開発に取り組むとともに、放射線の生体影響についても研究を行っている。休日はサーフィンでリフレッシュ。

【WOMOモニター】

鈴木 茜(すずき あかね)さん

藤枝市在住のグラフィックデザイナー。趣味はサウナ。最近引っ越しをして電気料金の違いに驚いている。


孕石 香菜(はらみいし かな)さん

静岡市在住。趣味はキャンプと、最近習い始めたギター。エコカーや電気自動車にも興味あり。

日本で主に使われている発電方法と、その仕組みを確認


「『エネルギーミックス』とは、『いろいろなエネルギーを組み合わせて電気を供給する考え方』とお話ししました。ここで発電の仕組みを確認しておきましょう。

日本の発電の仕組みはどれも基本は同じで、タービンという装置の中にある羽根を回し、同じ軸でつながっている発電機で電気をつくります。わかりやすいのは、風で羽根を回す風力発電ですね。
火力発電は、なにかを燃やして水を沸騰させて、その蒸気の力で羽根を回します。原子力発電は、なにかを燃やす代わりに核分裂で出る熱エネルギーで水を沸騰させます。地熱発電はマグマの熱で温められた地下水、つまり温泉の蒸気を使います。
水力発電は、高いところから低いところに水を落として羽根を回します。水は自然由来のものなので、再生可能エネルギーに含まれます」

イメージ図


「太陽光発電はちょっと異なっていて、発電パネルに太陽の光を当てて、そのエネルギーを電気に変えています」


「火力発電で燃やす『なにか』って、何ですか?」


「石油とか石炭ですか?」


「そうです!あともうひとつ、天然ガスもあります。液化天然ガスの『LNG』って言葉、聞いたことありますか?」


「聞いたことはありますが、何かわからなかったです。天然ガスのことなんですね」


「はい。火力発電は、このような化石燃料を燃やして発電をしています」

日本のエネルギー自給率は、わずか13.3%


「火力発電は化石燃料を使うため、CO₂排出量が多いのが問題です。それ以外にも、発電に使われる国産エネルギーの割合を示すエネルギー自給率にも影響してくるんです。日本のエネルギー自給率って何%くらいだと思いますか?」


「う〜ん、低そう…。30%くらいかな?」


「輸入している石油や天然ガスを使う火力発電に頼っているから、10%くらい?」

出典元:資源エネルギー庁「日本のエネルギー エネルギーの今を知る10の質問」を基に作成


「孕石さん、ほぼ正解ですね。2021年度で13.3%です。これは、OECD(経済協力開発機構)38か国中37位なんですよ。理由もその通りで、火力発電に頼っているからです。
でも、2010年度のエネルギー自給率は20%を超えていました。今はなぜ低くなってしまったか、わかりますか?」


「夏の暑さが厳しくなって、電気の使用量が増えたから、エネルギーもたくさん輸入するようになった?」


「それもあるかもしれませんね。もっと決定的な原因になることが起こりました」


「もしかして、2011年の東日本大震災ですか?」


「そうです。昔、原油価格が値上がりして、世界中でオイルショックという混乱が起こりました。海外の情勢が不安定になり石油の輸入量が減ると困るので、日本は原子力発電所をつくり、火力発電を減らしていったんです。
そして、2011年、福島第一原子力発電所の事故が起きたことで他の地域の原子力発電所も停止し、震災直後は6〜7%くらいまで自給率が下がった時期がありました。その後、再生可能エネルギーを増やしながらも、再び火力発電が中心になっています。
火力発電に使われる石油、石炭、天然ガスは、ほぼ海外からの輸入。じゃあ、海外からエネルギーを運んでくるのに、どんな問題があると思いますか?」


「輸送の費用がかかりますよね。それに、輸出国が自分の国でたくさん使っていたら、日本に来る分が減ってしまう」


「その国と仲が悪くなったら、輸出してもらえなくなることもありそう…」


「2人とも、すごい!まさにその通りです。今は石油のほとんどは中東諸国からの輸入。石炭、天然ガスはオーストラリアやアメリカ、カナダからの輸入が多いですね。そうした国と仲が悪くなったら輸入がストップする可能性があります。それから、海上輸送の途中で海賊に横取りされてしまうこともあるんですよ」


「現代でも海賊がいるんですか!?信じられない」


「あとは、世界情勢も関係してきます。2022年、ロシアのウクライナへの本格的な侵攻以降、電気料金が上がったと多くの人が実感していると思います」


「海外から燃料を運んでくることはリスクが高くて、それが電気代にも影響するんですね」

発電方法の違いが地域の電気料金の差を生む


「じゃあ、ちょっと身近なところで電気代の話をしましょうか。2010年度と比べると、今は60%くらい値上がりしています。これも火力発電に頼っているからなんですね。日本国内でも地域などによって電気料金が違うって知っています?」


「そういえば、先日引っ越しをして、地域によって結構変わるんだなって感じました」


「その差はなぜだと思います?」


「住んでいる人の数とか?」


「え〜、なんだろう?わからないです」


「実は、発電方式の違いで変わるんです。高いコストがかかる燃料を使う火力発電は、当然高くなります。現実に、関西電力は電気代が安いのですが、関西は再稼働している原子力発電所があるから、火力発電中心の会社よりも安いんです。
原子力発電所は、危険とか怖いという意見があります。一方で、電気代が安くなるというメリットもあるんです」


「発電方式の話と、家で使う電気とを一緒に考えたことはありませんでした」


「エネルギーの問題と家庭の電気は、なかなか直結しにくいかもしれないですね。でも、電気代の変動を調べていくと、どんなエネルギーの割合で電気が供給されているのかで、すごく変わっていることがわかります」


「海外でも同じですか?」


「電気代の値上がりは、日本だけでなく海外でも同じような状況です。資源が豊富なアメリカや、原子力発電の割合が高いフランスは、電気代が安いですね」

出典元:資源エネルギー庁「日本のエネルギー エネルギーの今を知る10の質問」を基に作成


「ヨーロッパは大陸なので、パイプラインや電線を張り巡らせて、石油や天然ガス、電気を国同士で融通できます。資源の多くはロシアが持っているけれど、ウクライナへ侵攻をしているので、供給には不安があります。ちなみにドイツは2023年4月に自国の原子力発電所を廃止しています」

未来の『エネルギーミックス』の姿を考える


「いずれにしても、『CO₂の排出量は削減しよう』というのが、世界の共通認識です。でも、日本は現状のままでは、世界で決められている要求に達しません。そこで、政府が掲げた、2030年度に向けたエネルギーミックスの割合目標の達成を目指しているのです。
2022年度の段階では、火力発電72%、原子力発電6%、再生可能エネルギー22%、でしたよね。日本政府は、2030年にはどんな割合にしたいと思う?」


「火力20%、原子力20%、再生可能エネルギー60%くらいかな」


「私は、結構変わらないんじゃないかと思う。火力67%、原子力8%、再生可能エネルギーは希望も含めて25%」


「両極端な意見で、なかなかおもしろいですね。政府の目標は、火力発電40%程度、原子力発電22%程度、再生可能エネルギー38%程度です」

出典元:資源エネルギー庁「日本のエネルギー エネルギーの今を知る10の質問」を基に作成


「再生可能エネルギーを増やすにしても、太陽光パネルを増やすには、お金や土地がもっと必要になりますよね。発電効率も余程の技術革新がなければ、大きく変わることはないでしょう。

風力発電は、周辺地域への風車の騒音問題がある。水力発電は、これから大規模なダムを建設するのは難しい。こうして考えると、再生可能エネルギーはあと6年で劇的に変わることはないと思われるので、現実的に考えて38%くらいが上限ということですね。火力発電を減らして、原子力発電も22%くらいまでは引き上げたいというのが、今の国の考え方です。

2030年度が近づいてくると、ニュースや報道で、もっとエネルギーの話題が出てくると思います。その時に、なぜこの目標数値になっているか、その理由を改めて考えてみてくださいね」


「現在と過去の数値を比べられて、エネルギーミックスのことをより理解できたと思います。2030年以降も、再生可能エネルギーの割合は増やしていけるんでしょうか?」


「増やしていきたいですよね。再生可能エネルギーを増やすために、いろいろなことが考えられているんですよ。騒音問題がある風力発電は海上への設置が研究されているし、私が見学に行った地熱発電所は、発電に使わない温泉を温泉地にきちんと還元することで共存できています。
発電にはタービンの羽根が回れば良いので、波の力や潮の満ち引きを活用できないかという研究もされています。もっと小さな電気なら、圧力で発電する装置を人がたくさん歩く改札に設置する実証実験が行われたりしていますね」


「『エネルギーミックス』って、本当にとても大事なことなんですね。今の日本では、どれかひとつのエネルギーが欠けても電力が不足するかもしれない。だから、比率を考えて上手に活用して、それで私たちが快適に生活できているんですね」


「火力発電は多いと思っていたけれど、想像以上に多かったです。電気ってなんとなくエコにつくられているイメージがあったけど、実際はそういうわけではないということもわかりました」


「一般的には、ひとつのエネルギーだけで発電できればいいんじゃないの?と考えがちだと思います。でも今までにお話してきたように、世界情勢による影響も受けるので、やっぱり、いろいろなエネルギーを組み合わせて使う必要があるんです。
政府や私たち研究者も、最適解を考えているということを知ってもらえたならうれしいです」


「地球温暖化の問題もあるので、未来に向けて火力を減らしつつ、再生可能エネルギーを伸ばしつつ、って感じですね。今日初めて聞いた発電方法もあったので、いろいろな背景を知って電気のことを考えるのはおもしろかったです」


「今、電気自動車に興味があるのですが、排気ガスを出さなくても結局は充電するために電気をつくってCO₂が出るから、何でも電動にすることがいいわけではないんですね。電気は自然に湧き出てくるものと、あまり意識していなかったので、これからは大事に使おうと思いました」


「そうですね。スイッチを押せば電気は流れてくるし、使いすぎると電気代が高くなるって、その程度の認識の人は多いと思いますよ。世界中を見ても、これだけ電力が安定している国はあまりないんです。近年の猛暑は歓迎したくないですが、電気やエネルギーのことを考える一つのきっかけになるなら、少しは我慢できる…かな(笑)」


「吉橋先生、今日はありがとうございました!」

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■応募期間:2024年8月27日(火)~9月30日(月)
■注意事項:当選者の発表はプレゼントの発送をもって代えさせていただきます。

更新日:2024/8/20

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