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週末「おうちで防災訓練」を実際にやってわかった"わが家"に必要な備えとは?
昨今の地震や竜巻といった自然災害を受け、これまで以上に高まる防災意識。食料や防災グッズを各家庭で備える一方で、ひと通りそろえたことで安心し、いざというときに"使えない"という事態も。そこで今回、読者代表が「おうちで防災訓練」にチャレンジ。ライフラインが制限された中でのリアルな体験談をレポート。
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体験したのは水上さん4人家族

左から:読者代表 水上さん、長男(7歳)、次男(5歳)、水上さんの夫
今回の「おうちで防災訓練」は、電気・ガス・水道が停止したという想定で、土曜日の夜から日曜日の朝までサバイバル体験。普段から備蓄していた防災食の味や量、防災グッズの使い勝手、その他の気づきなどをリアルに紹介。
アドバイスするのは、防災の専門家 高荷 智也(たかに ともや)さん
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静岡県三島市在住。「備え・防災アドバイザー」「BCP策定アドバイザー」として、講演・執筆・コンサルティングを請け負い、メディアにも出演。心配性で怖がりな性格で、常に災害に不安を抱えていたことから独学で防災について学び始め、そこで身につけた知識を周りの人にも知ってほしいとの思いでアドバイザーとなる。備え・防災について発信する自身のYouTubeチャンネル「死なない防災!そなえるTV」はチャンネル登録者数18万人を超える。
今回の訓練で使用する水上家の備蓄品

「完璧に揃えているわけではないんです」と話す水上さん。水上家では、普段の買い物のついでに少し多めにストックしておく「ローリングストック」を基本に、無理なく続けられる範囲で備えている。
食料は、子どもたちが食べ慣れているレトルト食品やお湯を注ぐだけで食べられるアルファ化米が中心。水は飲料用として2Lペットボトルをケースで常備し、不安な時の心の支えになる甘いものも少し多めにストック。
衛生面では携帯トイレの他にボディシートやドライシャンプー類を。停電に備え、火を使わないLEDランタンと両手が自由になるヘッドライトを準備している。
電気・ガスなし、カセットコンロで防災食

今回「おうちで防災訓練」を実践したのは9月下旬。夏の蒸し暑さが残り、日が落ちれば家の中はもう真っ暗。もちろんエアコンや扇風機は使えないので、窓を開け、うちわで順番にあおぎ合いながら夕食づくり。
防災食はインスタントのみそ汁や、お湯で温めるレトルトパウチの汁もの、ご飯などを中心に備蓄しているという水上さん家族。「温めるだけ」「お湯を注ぐだけ」といった手軽な調理法が魅力だが、つくる前からさっそくちょっとした困難が。



「部屋が思っていた以上に真っ暗! 懐中電灯やランタンといったアイテムを準備していましたが、照らされる範囲はごくごく狭く、防災食のパッケージに書かれている説明を読むだけでも一苦労。光源は少し大きめのものを用意しなきゃと感じました」
「用意していた懐中電灯が途中で点かなくなるというアクシデントも。定期的に動作確認をしなきゃと痛感。電池の予備数もチェックする必要がありそう」


「懐中電灯などをペットボトルに近づけると光量がアップするという豆知識を思い出し、実際に試してみました。たしかにテーブルが一段階明るくなったような」


調理にはカセットコンロと電池式のストップウォッチが大活躍。みんなで火の元の安全、お湯の吹きこぼれ等に気をつけながら、いよいよ実食。

夕食は、アルファ化米の五目ごはん・わかめごはんといった米類と、きのこ汁・豚汁・けんちん汁などの汁ものに、おかずの肉じゃがをプラス。量・味は全体的に家族から好評だったという今回のラインアップだが、意外なところに落とし穴が。

「(災害食に付属していた)スプーンが小さくて食べづらかった。あと、量が多くて、ごはんを少し残してしまった」

「カトラリー付きの防災食が便利かと思いきや、子どもでも使いづらいサイズだったので、やはり割り箸やスプーンといった類はある程度準備しておく方がよさそう。また、すぐに取り出せるよう、しまってある場所を家族で共有しておくのも大切ですね」
「ものによっては大人が食べてちょうどよいくらいの量なので、家族構成や普段の食事量によって、調理する防災食の数を考える必要がありそう。今回は子どもはごはんを、家族全体では汁ものを少し残してしまい、携帯トイレで処分することに。実際には貴重な食料となるので、こういった事態は避けたいなぁと」
「普段の流れでお皿に盛り付けちゃいましたが、あとから"片付けが大変!"と気がつくことに。実際は容器にラップを巻くなどして、食後のこともイメージしておかなきゃと感じました」


非常食でおなじみのアルファ化米は、これまでにも何度か食べたことがあったという水上さん。白米など味付けがないものは、普段から食べている梅干しなどと合わせながら食べたという。

「アルファ化米は普通においしい。汁ものや肉じゃがの味付けが多少濃かったので、白米でもちょうどいいかも」
「ただこれが毎日となると飽きてしまうので、和食だけではなく、パンやパスタといった洋食も含め、バラエティ豊かにストックしておきたいなと感じました」

「たしかにわが家よりも味付けが濃く、いつもより水を飲む量が多かった気がする。青汁など、食物繊維が摂れる補助食品もあるといいなぁ」
<高荷さんより>ワンポイントアドバイス!
ランタンや懐中電灯などを選ぶ際には「LED」がおすすめ。これは長寿命で明るく消費電力が小さいため。普段から頻繁に使用するなら「充電タイプ」を、非常時のみに使うなら「乾電池タイプ」を選ぶとよいでしょう。
今回の「おうちで防災訓練」では、思いのほかランタンが暗くて困ったという経験をされています。では、もっと明るいランタンを用意すれば解決するでしょうか。答えはYES……とは言い切れません。室内全体を明るく照らすランタンは、キャンプなどアウトドア用に販売されているものの、お値段もそれなりに高額。各部屋に用意するとなると、なかなかの出費になりかねません。
そこでおすすめなのが、ひとり1つ、乾電池で光るリーズナブルなランタンを用意すること。自分専用の明かりがあれば、トイレに着替え、就寝時など、好きなところへ持ち運んで使うことができます。大型ランタン1つよりも、小型ランタンで光源を分散させることが有効です。
臭いは? 使用感は? 非常用トイレにチャレンジ

普段なかなか使用する機会のない非常用トイレ。その種類は、折りたたみ・組み立て式のタイプやコンパクトな携帯タイプなどさまざま。今回水上さん一家は、普段使っている洋式便器にセットするタイプのトイレを試してみることに。

使ったのは防臭袋が付いたタイプで、便器に黒色のビニール袋を引っかけ、そこに凝固剤を入れ、用を足したあとに袋ごと処分するというもの。当然トイレも電気はつかないので、家族総出で設置をスタート。


「トイレの便座に引っかけるのがむずかしくて、ビニール袋が何度も落ちてしまった」

「洋式トイレの形状によっては、便座にビニール袋を引っかけるところがなく、適宜工夫が必要だと感じました。引っかけが甘いと、用を足している間にビニールが落ちてしまう」
「非常用トイレの凝固剤は、おむつなどにも使われている給水ポリマーなので、誤ってトイレにこぼしてしまうと、配管が詰まる原因に。うまくビニール袋に入れなければ、と思ったより設置に慎重になり、時間がかかりました。子どものトイレサインを見逃さず、早めにトイレで準備をする必要がありそうです」


「一番心配していた臭いは、特に気になりませんでした。消臭袋が付いていたからですかね。普段使い慣れているトイレだったので、使用感もそこまで気にならず。便器が用意できない場面で使用する簡易便座付きポータブルトイレや組み立てタイプにも慣れておく必要がありそう」
「ヘッドライトがあったのでよかったです。今回は家族で協力して設置しましたが、これがひとり暮らしだったり、女性の生理のタイミングだったりしたら大変。手の届く範囲にナプキンやサニタリー袋などを置いておくのが大事ですね」
<高荷さん監修>ワンポイントアドバイス!

非常用トイレは少なくとも「ひとり1日5回×7日分」を目安に用意するのがマスト。ひとり暮らしなら35回分、夫婦なら70回分、4人家族なら140回分といった感じです。ただ、長期の断水やトイレ以外での使用を考えると、ひとり当たり「50回入りの非常用トイレ1箱」を準備しておくと安心。
在宅避難の場合、日頃からトイレットペーパー、ウェットティッシュ、ゴミ袋なども用意しておくようにしましょう。一方、避難所や車中、屋外でトイレを使用する場合は、プライバシーを確保するグッズも必要。ポンチョは最低限、余裕があればポップアップ式の簡易テントなどを用意しておくのがおすすめです。また、目隠しとしてきちんと機能するのか、事前に確認するのも忘れずに。夜間に目隠し内で明かりを点け、素材が透けないかチェックしておきましょう。
備蓄水で歯磨き&ドライシャンプー
水道が使えない想定で歯磨きにも挑戦。トイレ同様、断水時は水が流せないため、30mL程度の少量の水で歯磨き。その後吐き出した水は、新聞紙やティッシュ・バケツなどへ。後でまとめて処分する。


「暗闇なので、子どもの仕上げ磨きが大変でしたね。今回は半日ですが、これが何日も続くとなると、当然虫歯になるリスクも。普段から磨き残しなく丁寧にブラッシングできるようにしておかないといけないですね」
「大人の場合、歯磨き粉を使うかどうか、使う場合はその量は工夫しないといけないですね。歯磨き粉なしで磨く場合は、マウスウォッシュがあるといいのかも」

また、今回はドライシャンプーにもチャレンジ。ドライシャンプーとは水やお湯を使わずに髪や頭皮をさっぱりさせるもの。災害時だけでなく、体調不良などでお風呂に入れないときなどにも便利。スプレーやパウダー、ジェル、泡などさまざまなタイプがある中で、今回は手袋タイプを使用。

「これは使用感がイマイチ。髪の毛がベタつく感じが気になったので、少しの辛抱なら、逆にシャンプーしない方がよいのかも。個人的には、フローラルな香りが強いのも苦手でした」


「思った以上によかったのは、ボディシート。まだまだ暑い時期だったというのもありますが、さっぱり感が心地よく、気分的にもスッキリ。大人は少し大判タイプのシートを常備してもいいかもしれません」
「どんなタイミングで被災するかわからないという点では、メイク落としの方法も考えなきゃですね。わたしは普段ぬるま湯でメイクを落としていましたが、ふき取りタイプのアイテムを用意しておくべきだと思いました」
<高荷さん監修>ワンポイントアドバイス!
断水対策において重要なのは、水とアイテムを組み合わせて準備すること。飲料・食事用の水や最低限の衛生用品は、ペットボトルなどで準備することになりますが、生活用水すべてをそれでまかなうのは困難。そのため、断水を見据えた道具がポイントになります。

歯磨きの場合、今回のように歯ブラシを使用すると水の処理がネックに。そこでおすすめなのが「ペーパー歯磨き」。指に巻き付けるもの、指サック型などさまざまなタイプがあり、歯ブラシの代わりに口腔内を清潔に保つことができます。
入浴の場合、ドライシャンプーは今回のように好みが分かれるアイテムです。その他のおすすめは、香料などが含まれない「長期備蓄ボディタオル」。これは5年ほど保管ができる大判のウェットタオルで、大きなおしぼりの感覚で身体を拭くことができます。夏場は汗を拭き取るだけでも快適さを感じられるので、少し多めに準備してもよいでしょう。消費期限が迫った場合は、来客時や行楽時のおしぼりとして消費すると無駄になりません。
体験まとめ 〜あると便利なもの・必要だと感じたもの〜

一夜明け、陽の光にほっとする水上さんファミリー。今回は半日の体験だったが、それでも十分な気づきがあったよう。

「真っ暗で、いつもひとりでできることが難しくて大変だった。ライトで照らし合いながら、みんなで協力してやるのが大事だと思った」

「夜はテレビが観られなくてつまらなかった。暇だったけれど、いつもよりみんなとお話ができたのはよかった」


「テレビなどの娯楽がないので、自然と就寝時間が早くなりましたね。その場にあるものをどうやったら活用できるかなど、防災についてアイディアを出し合ういいきっかけになりました」

「夕方〜朝という限られた時間ですが、"どう感じるか"、"なにが大変か"を実際に体験できたのは大きいですね。例えば、ライトは白色系よりも暖色系の方が落ち着くといいますが、災害時においては心の拠りどころにすらなる。そんな、普段気にもとめないことが、大きな違いになると思うと、防災訓練は1回やれば終わり、ではないなと痛感。次回は冬の時期に挑戦したいと思います」

[実際の使用量(家族4名合計/夕方〜朝)]
●携帯トイレ:約4回分
●水:5L(2Lペットボトル2.5本分)
[あって便利だったもの]
・ストップウォッチ
・うちわ
・乾電池で動く家電
・ヘッドライト
[今後必要だと感じたもの]
・発電機やポータブル電源
最後に、高荷さんよりメッセージ
停電・断水によって在宅避難をする際、特に問題となるのが、暑さ・寒さ対策。普段使っているエアコンや扇風機、電気ストーブなどが使用できなくなると、場合によっては命に関わることも。静岡は比較的温暖ですので、冬は厚着や毛布・使い捨てカイロなどで対策できますが、近年、夏は電気なしで暑さをしのぐことが難しくなっています。

そこで増えているのが、ソーラーパネルとポータブル電源をセットで準備するご家庭。出力100W程度のソーラーパネルと、バッテリー容量500Wh程度のポータブル電源を組み合わせることで、長時間の使用が可能に。スマートフォンの充電や充電式ランタンはもちろん、USB式の扇風機など、夏場の暑さ対策にも役立ちます。近年、性能の向上と価格の低下が進んでいますので、セール時期に購入を検討してもよいでしょう。
防災の本番は災害時ではなく、平時。災害が起きてから慌てても、できることはごくわずか。今だからこそ、どのような準備や対策も行えます。この記事を参考に、在宅避難に必要なアイテムを検討してみてくださいね。
※本コラムに掲載されているグッズは高荷さんと水上さんの私物であり、特定の商品を推奨するものではありません
【中部電力×WOMO】見て・作って・おいしく学ぶ、親子の防災イベント開催!

2025年も地震や台風など、自然災害が多発。親子で楽しみながら、いざという時に役立つことを学べる防災イベントを開催。ぜひご応募を!
★参加無料
★親子30組
★応募締切:2026年1月4日(日)
※小学生3年生以上を対象とした内容のため、未就学児の方のご参加はご遠慮ください
※応募多数の場合は抽選とさせていただきます
イベント概要
●日時:2026年2月11日(水・祝日) 10:00~12:30
●場所:静岡県地震防災センター (静岡市葵区駒形通5-9-1)
●駐車場:あり
●定員:親子30組
[内容]
9:45~ 静岡県地震防災センター1階受付
10:00~ 第1部
静岡県地震防災センター 見学
南海トラフ地震などの脅威を知ろう
震度7の地震を体験してみよう!
11:05~ 第2部
・パッククッキング!
おかず蒸しパンをつくって、食べよう。
・チラシ容器と新聞紙スリッパをつくろう
12:30 終了
[問合せ]
くふうしずおか編集部
054-275-3330(平日9:00~17:00)
