
今、学んでおきたい!暮らしに関わるエネルギーのこと vol.2
前編では、日本国内で行われている発電方法と、そのために使われるエネルギーについて学んだWOMOモニターの佐藤さんと山田さん。後編では電気の安定供給と、安全性や環境適合についても考えながら、「エネルギーミックス」について、名古屋大学教授の吉橋幸子さんに話を聞いた。
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今、学んでおきたい!暮らしに関わるエネルギーのこと vol.1
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■応募期間:2025年12月9日(火)~2026年1月22日(木)
■注意事項:当選者の発表はプレゼントの発送をもって代えさせていただきます。
講師とWOMOモニターをご紹介

【講師】

吉橋 幸子(よしはし さちこ)さん
名古屋大学核燃料管理施設(大学院工学研究科総合エネルギー工学専攻)・教授。大阪大学大学院工学研究科修了。大阪大学博士(工学)。がん治療のための中性子発生装置の開発に取り組むとともに、放射線の生体影響についても研究を行っている。休日はサーフィンでリフレッシュ。
【WOMOモニター】

佐藤 みか(さとう みか)さん
静岡市在住。自宅で仕事をする web ライターのため、電気代が気になる。猛暑でのエアコン使用で月に1万円を越えてしまった月もあるそう。

山田 かなこ(やまだ かなこ)さん
静岡市在住。休日は家で8時間ゲームをすることも。こまめに照明を消す、エアコンの設定温度を適切にするなど、日常で節電を心がけている。
発電方法がひとつだけだったら、電気の供給はどうなる?


「ここからは、エネルギー自給率と、電気の安定供給について考えていきます。
日本のエネルギー自給率は低い、というお話をしました。エネルギー資源を海外から輸入する際、タンカーでの海上輸送など常にリスクが伴います。エネルギー資源はみんなが欲しいので、海峡を通るときに船が襲われる危険もあります。ヨーロッパなどの大陸では、国をまたいでつながっているパイプラインで、産出国から天然ガスが送られてきます。電気も電線がつながっているので、自国の発電量で不足する分は他国から買うことができます。でも、どこかで遮断されると、とたんに電気が回ってこない。どこの国でも、いかにエネルギーを調達するかが課題です。
そこで、エネルギー自給率を高めて安定した発電をするためにも、いろいろなエネルギーを組み合わせて使う『エネルギーミックス』の考え方が重要になります。例えば、太陽光や風力を使う再生可能エネルギーだけでいいとか、安定している火力だけでいいという考えもあると思うんですね。
でも、本当にそれでいいのでしょうか?ひとつのエネルギー資源に頼ることは、何が問題なのか考えてみましょう。
まず、火力発電だけだとどうですか?」

「石油や天然ガスなどが輸入できないと、安定して電気がつくれなくなってしまいます」


「CO₂がたくさん出るから、地球温暖化防止にもならないですね」

「そうですね。ではここで火力発電の仕組みについて考えてみましょう。火力発電は、燃料を燃やしてどう発電しているか考えたことはある?」

「燃やして生まれた熱を、水で冷却する…?」

「タービンを回すとかって、学校で習った気がする。自分で自転車を漕いで発電する体験で」

「ああ、あった!じゃあ、熱を冷やすんじゃないね」

「燃料を燃やして水を温めると、どうなりますか?」

「温度が上がって、水蒸気になって、それでタービンを回すんだ!でも、なんで水蒸気なんですか?」

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「熱い蒸気のエネルギーをタービンで回転する力に変換して発電しています。燃やす量を変えれば、発電量を調整できるのが、火力発電の利点です。この仕組みは原子力発電も同じです。原子力発電の場合は、何かを燃やすのではなく、ウランが核分裂する時に発生する熱で水を蒸気に変えます。
じゃあ次に、原子力発電だけだとなにが問題になりそう?」

「やっぱり危険性かなぁ。事故が起きた時に身の危険が高まる」


「エネルギー自給率は高くなるけど、どこか一か所の事故で原子力発電所が全部が止まってしまうと、電気がなくなっちゃう!?」

「じゃあ、再生可能エネルギーだけだとどうでしょう?」

「天気や時間によって供給ができなかったり、不安定になる」

「そもそも電力が足りない気がする」


「そうですね。地球には優しいし、自分たちも安全と考える人もいる一方で、不安定で電気が足りないかもしれないと思う人もいます。そこで、ひとつのエネルギーだけに頼るのは心配だから、いろいろなエネルギーをバランスよく使いましょうという『エネルギーミックス』の考え方が必要です。
もうひとつ、エネルギー自給率の他に考えなければならないのが、1日の中でどの時間帯に一番電気を使うかということです。現代社会では夜の使用量が多くなってはいますけど、基本的には昼間がピークになっています」
1日の電気使用量から考えるエネルギーミックスのこと

「再生可能エネルギーで一番多いのは太陽光発電だけど、それは1日の中のどの時間帯で発電していると思う?」

「一番使用量が多くなる昼間ですよね」

「そうですね。これを仮に太陽光発電だけにしたら、晴れた日の太陽が出ている時は充分だけど、夜や雨や曇りの日はどうしましょう」
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「その分を風力でまかなうと言っても、雨で風も吹いていない日は電気がない…」

「それが再生可能エネルギーの一番のデメリットです。
お友達の家はあまり太陽光パネルを付けていないという話もあったけど、太陽光パネルを導入している住宅も多いし、日射時間が長い地域には、メガソーラーもあります。そのため、逆に天気の良い日には、電気の供給が需要を上回ってしまうこともあります」

「家で使う分以上に発電したら売るという話を聞いたことがありますけど」

「最近は蓄電池に貯めて夜に使う方法もあります。でも、ずっと雨続きだと充電した分を使い切ってしまうことも考えられますよね」


「だからといって、火力だけでいいとも思えないです」

「火力発電は電気が必要な時は燃料をたくさん燃やして発電すればいいので、安定供給という点では優れています。でも、CO₂排出の問題がある。
原子力発電は、発電方法は火力発電と同じだけど、調整が難しいんです。一度発電を始めたら、一定に保っておきたいんです」

「でも、1日の使用量に合わせて考えると、ピークに合わせたら夜間の電気は余分だし、低いところに合わせたら、ピークの電力をまかなえないですよね」

「その通り。こうした理由でも、エネルギーミックスが重要になるんですね。今はどう組み合わせて、1日の使用量に合わせていると思う?」

「昼のピークは再生可能エネルギーでなんとかして、夜は火力、原子力でまかなっている感じかな」

「昼間、一番電気の使用量が多いところは、再生可能エネルギーをMAXにする?」


「うーん、最低ラインは安定している原子力で、残りは再生可能エネルギーを多めにして、足りない分は火力も使う」


「私は、いろいろな発電方法でつくった電気をタンクのようなところに一度全部集めて、先につくった電気から順番に使っていけば、1日中必要な電気が供給できると考えました」

「おお、すごくおもしろい発想です。でも、現状の技術では、日本全国でつくった電気を全部貯めることはできないんですよ。だから発電所で今つくった電気を使うんです。ちなみに、家庭用の蓄電池は以前より安くなってはいるけれど、とはいえまだ高価なので普及率は低いです」
エネルギーは身近な話題。時々情報のアップデートをして
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「エネルギーミックスは、電気料金にも関わってきます。火力発電の割合が増えると、その分電気代が高くなります。今は、最低ラインの半分くらいまで原子力発電と水力発電等を活用しています。水力発電の中でも揚水発電では、昔は電気代が安い夜間にダムに水を汲み上げて昼間発電していたけれど、最近は太陽光発電が増えてきたので、昼に余剰の電気でダムに水を汲み上げて夜に発電するようにもなってきました。また、日中太陽光発電で多く発電できるときは火力発電を抑えて、天気が悪い時は火力発電を増やしています」

出典元:資源エネルギー庁「日本のエネルギー エネルギーの今を知る10の質問」を基に作成

「それから、もうひとつ、災害時に備えるという視点で考えてみましょうか。原子力発電所の事故もそうだけど、何らかの理由で火力発電がストップすることもあるし、長雨で何日も太陽が出ないことも考えられますよね。
CO₂を減らしつつ、みんなが安全だと思えて、かつ、停電が起きないように調整するのがエネルギーミックスだと考えれば、もう少し身近に感じられるんじゃないでしょうか」

「知らないことが多くて、勉強になりました。自分事にならないと、積極的に情報を得ようとはしないですね」

「電気のことは、意外と自分事なんだけどね(笑)」

「電気料金が上がるって聞いたら文句を言うのに、なぜ上がるのかは全然考えたことがなかったです」

「これからは、エネルギーについて自分でも調べてみます。家で使っている電気も、再生可能エネルギーの電気プランを扱っている電力会社があれば、乗り換えてみようかな」
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「原子力の発電電力量の割合は今6%くらいしかないのに、私たちはふたりとも20%くらいあると思っていました。火力や再生可能エネルギーよりも原子力発電が多いイメージを持っていて、実際とのギャップはなぜだろうと気になりました」


「2010年度は原子力の発電電力量の割合は25%くらいありましたよ」

「教科書の図では、火力の次に原子力が多かった記憶があって、それが20%ぐらいだったんだよね」

「2011年以前は、太陽光のパネルの普及や効率がどこまで上がるか未知数で、それよりも、エネルギー自給率アップのためには原子力発電だという考えでした。その後、地域で使えるような小規模な発電方法が開発されたり、太陽光発電はパネルよりも薄いシート状のものが開発されたりするなど、技術も進歩しています。
基本的なエネルギーミックスの考え方は変わらないけれど、技術革新に応じて再生可能エネルギーの割合はさらに増えるかもしれないですね」

「家では電気をこまめに消すなど、節電を心がけているんですけど」

「少し前までは、省エネ家電に変えるなど家庭での節電が消費者に根付けば、電気使用量が減ると考えられていました。でも最近は、AIとかデータセンターなどで大量に電気を使うので、世界的にエネルギー消費が増加しています。だからこそ、エネルギーのことはみんなで考えなければいけない状況になっているんです」


「情報はアップデートしていかないとだめですね」

「何年かごとにでも「エネルギーって今どうなっているのかな」と最新情報をチェックしてもらえたらいいかなと思います」

「エネルギーミックスという言葉は今日初めて聞きましたけど、それぞれの発電方法の特徴を知って、1日の発電量の図を見たら、ひとつの発電方法に頼ってはいけないと改めて理解できました。火力は減らさないといけないけれど、必要だからゼロにはできないということも」

「CO₂排出量の目標をクリアできる範囲なら、火力発電も必要かなと思いますね」

「私は電気についてあまり知識がなくて、学生のころも科学は苦手だったし。でも、先生の説明がわかりやすくて、昔は理解できなかった話が頭の中にするする入ってきました」

「エネルギーって聞くと難しく思うけど、電気は身近なものですからね」

「生きていく上で絶対に必要な知識を学ぶ機会になってよかったです。あと2年後くらいに、また最新の情報を教えて欲しいです!」

「興味を持ってもらえて、本当によかったです。今日はありがとうございました」
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「今、学んでおきたい!暮らしに関わるエネルギーのこと vol.1、vol.2」を最後まで読んで、もっと知りたいことや、役立ったことなど意見や感想を書いて応募すると、抽選で10名にweekendの『焼き菓子詰め合わせ』をプレゼント。
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