
もしもの時、女性の心と体をどう守る?避難所での防犯対策と"本当に役立つ"防災アイテム
普段から揺れ動きやすい女性の心と体。災害が起きたとき、「生理になったらどうしよう」「着替えや下着は確保できるの?」と不安に感じることもあるはず。今回は、そんな女性目線の防災がテーマ。健康・衛生・防犯という観点から、女性に必要な備えや心構えを知り"自分の身は自分で守る"という意識で備えよう。
監修は、静岡県被災者支援アドバイザーの鈴木 まり子さん

静岡県浜松市在住。「有限会社タイキなくらし」取締役。浜松の企業が手をつなぐ災害支援ネットワーク「はままつnanet」代表世話人・事務局長。静岡県被災者支援アドバイザー。本業はファシリテーター・研修講師。東日本大震災におけるファシリテーションの仕事をきっかけに、自治体などに向け「災害・防災のためのファシリテーション研修」を行っている。
被災地のリアルから考える、鈴木さんの提案する女性視点の防災とは?


「加藤さん、こんにちは! 静岡県被災者支援アドバイザーの鈴木です」

「鈴木さんこんにちは! 今日はよろしくお願いします。防災について学ぶなかで、やはり不安を拭いきれないのが、トイレや衛生面、性犯罪リスクなどといった女性ならではの悩み。周りに妊娠中の友人や女性でひとり暮らしの知り合いなどから、有事の備えや過ごし方について、心配の声が多く聞かれます」

「女性ならではの心配が尽きないですよね。わたしはこれまで東日本大震災や能登半島地震、最近では2025年に発生した牧之原市の竜巻災害の現場に赴き、現場のリアルを体験してきました。そこで感じたのは、性別にかかわらず"当事者意識と知識をもつ" "自分に合った備えをする"ということの重要性でした」

「当事者意識と知識…。なんとなくは想像できるものの、正直なところ、リアリティをもってイメージできているか不安です」

「想像してみるのが防災の第一歩。その不安を解消するために、わたしが実際にみてきた被災地のようすから、一緒に考えてみましょう」
生理用品だけではない、女性に必要な災害時のアイテム


「わたしが見てきた被災地では、防災責任者や避難所担当者が男性、というケースが多く、それによる課題が多く見受けられました。そのひとつが支援物資の配布について。代表例である生理用ナプキンは、多くの男性がその必要性を認識しているものの、使い方や必要個数まで把握しているというケースは稀。避難所によっては、おむつの横に置かれていることもありました」

「たしかに、男性の担当者からもらいにくいとか、個数制限でやりくりに困ったという被災地のニュースを見たことがあります」

「ほかにも、化粧道具やネイルのリムーバー、ハンドクリームなど、女性視点の物資が届いてはいるものの、男性の担当者では使い方がわからなかったり、アレルギー等の可能性を踏まえたりして、配布されなかった事例も。"当事者不在"ということが、アンバランスを起こしてしまうのです」

「こんなときだから、自分の身なりなんて気にしちゃいけないって思ってしまいそう…」

「そんなことはありませんよ。東日本大震災の被災地で多く聞かれたのが"化粧ができなくて嫌だった"という女性たちの声。避難所にはご近所さんや顔見知りもいるため、自分のすっぴんを見られるのが精神的につらかったと。当事者である女性が声を上げ、アイディアを出し合うことで、解決する課題もたくさんあるんです」
「また、女性にとって必要なアイテムというのは、本当に人それぞれ。数日顔を洗わなくても平気な人もいれば、眉毛は絶対に描きたい、つけまつげは必須という人など、定義はできません。だからこそ、自分専用の防災備品リストをつくること。自分の24時間を振り返って"これがないと無理"というものは、備えておきましょう」

「自分にとっての必要最低限は何か、ということですね。ちなみに鈴木さんにとっての必要な備えは具体的に何ですか」


「わたしの場合は基本、自宅に備蓄しているので、外出時の"もしも"に備え、一時しのぎ的な防災ポーチを持ち歩いています。生理現象をガマンするのが一番難しいので、携帯トイレを3つ。冬の時期にはカイロや簡易ブランケットも。衛生グッズでは歯ブラシや圧縮タオルなど。意外と便利なのがシャワーキャップで、髪の毛を守る用途はもちろん、紙皿に巻くラップの代わりになったり、水を汲む容器になったりもします」


「小腹を満たすためのお菓子や、甘みを欲したときのためにスティック状のハチミツなんかも入れています。ほかにも、防犯のためのホイッスルやブザーも女性にとっては重要ですね」


「まとめるとこのくらいのサイズに。バッグも防水のものを選ぶとよいでしょう。これなら、万が一の場合、水を汲むバケツ代わりにもなります」

「これなら、メイクポーチのように普段から持ち歩けそうです」
女性が意識しておきたい避難所のリスク


「避難所での生活では、まわりの視線……とくに男性の視線が気になることもあります」

「災害が起きた際、多くのみなさんが避難所生活を想像しますが、それは選択肢の最終手段。自宅で過ごせるのが一番ですし、それが難しければ、親族・知人の家に身を寄せたり、車中泊をしたり。わたしがサポートした被災地だと、安全なエリアのホテルを自腹で予約して過ごしている方もいました。リアルな話、避難所に残る若い女性はほとんどおらず、妊娠中の方はなおさら。災害時にどこで暮らすのか、選択肢を増やしておけるとよいです」

「それでも、避難所で生活せざるを得ないときは、どうしたらいいのでしょうか?」

「まずはプライバシーの確保ですね。近年はテント式や段ボール式のパーテーションを活用するところが増えてきました。そうでない場合、例えば学校が避難所なら教室のいくつかを女性専用にするなど、区分け次第で工夫できます。これもまた、当事者でないと気づけないこと。女性複数人で避難所担当者に提案するなど、積極的に働きかけましょう」

能登半島地震の際の、珠洲市の避難所(鈴木さん提供)

「衛生面や体調管理も心配です」

「女性の場合は特にデリケートゾーンが心配ですよね。とはいえ、実際何日もお風呂に入れない、下着を洗えないことも多々。そんなときは、おりものシートがおすすめ。これなら下着にセットしておいて、汚れたら取り替えることで、ある程度清潔に保てます。また、生理の経血漏れが不安なときは、紙おむつという選択肢も。トイレが使えない場合にも便利です」

「おむつ…ちょっと抵抗がありますね」

「わたしは3歳児用のおむつを使ってみたことがありますが、漏れもなく快適でした。先ほどお話したシャワーキャップ同様、用途にこだわらないのも被災地での生活を乗り切るコツ。防災対策の一環として、一度使って慣れておくといいでしょう」
「実は、この"慣れ"というのが重要。以前びっくりしたのが、一緒に被災地支援に行った女子大学生が夜に過呼吸を起こして。それが複数人に連鎖し、一晩眠れずに看病したことがありました。その原因が、なんと雑魚寝。隣に他人がいる、知らない音がするという環境での就寝が初めてで、体調に影響が出たようです。お子さんがいる方などは、キャンプやお泊まり会などを経験させておくことも視野に入れてみてください」
自分の身は自分で守る、災害時の防犯対策


「考えたくはないのですが、被災地での窃盗や性被害といった犯罪についても耳にします」

「悲しいことに、罪を犯す人にとって、被災地や避難所は"チャンス"になり得てしまうんです。これはもう、自分の身は自分で守るしかないということに尽きますね」

「それが現実なのでしょうか…」

「知っておいてほしいのは、災害による恐怖や不安によって、男女共に正常な判断ができなくなっている可能性があるということ。特に性被害においては、悪意ある意図的な犯罪行為の他、本能的に咄嗟に手が出てしまったというケースも。以下の防犯対策はほんの一例。考えすぎと思わず、思いつく限りの対策をすることが大切です」
●ひとりで行動せず、周りの女性と協力して複数人で活動する
●夜間や暗がりで行動するときはヘッドライトや防犯ブザーを携帯する
●パーテーションやカーテンによる間仕切りは、シルエットが透けていないか確認する
●着替えやトイレなどのときはケープを着用する
●個室や車などの密室は、先に誰もいないか確認する、入ったらすぐカギをかける
●催涙スプレーなどの護身グッズを用意しておく など
普段から考えたい"意識の備蓄"


「そのほか"性別役割"という課題についてご存知ですか?」

「初めて聞きました。どんなことでしょう?」

「さきほどお話したように、意思決定の場が女性不在だったり、被災地の食事の準備に女性だけが呼ばれたり。その逆で、力仕事は男性だけが招集されることが多いのが現状です。もちろん、適切なシーンもありますが、日常の振る舞いがこういった場で無意識に現れるということ。わたしはこれを"意識の備蓄"と呼んでいて、普段からジェンダーによる役割分担を見直しておく必要があると感じます」
最後に、鈴木さんよりメッセージ


「災害時だからというよりも、普段から心がけておきたいことばかりでした。本日はありがとうございました!」

「そう、避難は"生活"なんです。防犯については、一般的に女性は力が弱いので各種対策を取っておいて損はありません。備えについては世間の情報を鵜呑みにせず、"自分だったら"とイメージしましょう。平時に防災アイテムを使ってみることで、よりリアリティをもって準備できるはずです」
※本コラムに掲載されているグッズは鈴木さんの私物であり、特定の商品を推奨するものではありません
