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【第15回】バレンタインに観てはいけない《劇薬》恋愛映画2選

カカオ95%・ビター&ビターなラブストーリー

筆者:こしあん
映画・海外ドラマ、読書、お笑い、カメが大好き。特技はイントロクイズ(80年・90年代ソング限定)。
怖がりのくせにホラーとミステリーが大好きで、生まれ変わったらFBIのプロファイリング捜査官になりたい。
休日にどれだけ家にこもっていてもまったく苦にならない超インドア派。
ゆるい解説と小学校から上達していないイラスト(ときどき)で、好きな映画を紹介していきます。

カップルで観たら気まずい恋愛映画2選

バレンタインデーまであと2週間。みなさん、みぞみぞしてますか~?
バレンタインには苦い思い出しかない私が今回ご紹介するのは、きゅんきゅんするような「あま~~~い」ラブストーリー……ではなく、まるでバレンタインに呪いでもかけるかのような、カップルで観たら気まずいトラウマ映画、怒涛の二連発!

バレンタインを前にドキドキしている人も、「こんなめんどくさい行事、誰が考えたんだよ、チッ」と思っている人も、観るか観ないかはあなた次第です!

ブルーバレンタイン(2011年)

ここはあえて汚い言葉を使わせていただきます。
この映画を簡潔にまとめると、無自覚な(←これポイント)アバズレ、クソビッチ女の身勝手さに振り回された、正義感と責任感は強いけれど幼稚な男の哀しいお話。
見終わった後、かなりブルーな気分になります。

夫婦仲が破綻している現在の一日と、出会いから結婚までの幸せな過去を交差させながら描くという見せ方はとても良く、何より、主役二人の演技は素晴らしい。

夫のディーン役は、今年のアカデミー賞最有力候補『ラ・ラ・ランド』のライアン・ゴズリング。
妻のシンディ役は、『ブロークバック・マウンテン』で注目されたミシェル・ウィリアムズ。

観る人の状況や立場によって、だいぶ受け止め方が変わる話。
私はとにかく妻のシンディにイライライライラ……。

もちろん、夫のディーンにも非はあります。どうしようもない男ですが、実はディーンは出会った時からこういう男で、ほとんど変わっていないのです。そんな男を選んだのはシンディ自身。変わったのはシンディで、夫をこんなふうにさせたのはシンディのせいでもあると、私は思うのです。

ただ、シンディにも同情する部分はあります。あんな両親だったら、確かにあんなふうになっても仕方ない。ここで親を反面教師にできていれば、負の連鎖を断ち切れたのに……。

愛が失われていったのではなく、二人のあいだに最初から愛なんてないんです。本人たちはそのことに気付いていないかもしれないけれど、この結婚は打算。盛り上がった勢いで何の覚悟もなく結婚し、幼稚で愚かなまま傷付け合い、娘を悲しませた。

この映画の教訓は……

良くも悪くも、結婚すると女は変わるけれど、男は変わらない。
盛り上がったまま勢いで結婚せずに、冷静になってよく考えろ。
何の覚悟もなく結婚するな。

ですかねぇ。

ゴーン・ガール(2014年)

大好きなデヴィッド・フィンチャー監督の作品。

いや~、後味悪うぅぅ! でもそこがまた良し。だからこそ生々しくて現実味があり、ゾクゾク感が倍増なのです。

幸福そうな結婚5年目の夫婦、ある日、妻が突然失踪する。過激なマスコミ報道や夫の不審な行動により、悲劇の夫のイメージが崩れはじめ、「夫が妻を殺したのではないか?」という疑惑の目が向けられ……。

何を書いてもネタバレになってしまうので、レビューが難しいのですが、一言でまとめると、全米を巻き込んだ、未熟な夫婦の壮大でイタイ夫婦喧嘩。

途中まで、ある程度は予想ができるけれど、ここまでとは……いやぁ、スゴイ。
どんでん返しの向こう側にまだまだ道が続いていて、えーッ、そういう展開ですかー?! と驚くばかり。
夫婦のことなんて、どんなに親しい人も本当のところはわからないし、ましてや、マスコミやそれをテレビや新聞で見ているだけの視聴者がわかるわけがない。

結婚生活って難しくて、面倒くさいのが当たり前。
でも、余裕がなくなるとその前提を忘れてすれ違い、「なんで? どうして?」が増えていく。
相手の気持ち全部なんてわからないし、自分の全部をさらけ出してるわけでもない。だけど、自分でも気付いていない感情に、相手によって気付かされることもあったりする。

この映画の中で一番罪が重く、この悲劇の元凶となっているのは、妻エイミーの母親だと、私は思います。全く自覚がないところを含めて。

人間のいろいろな種類の愚かさ、怖さ、弱さなどを見せつけられる映画。

女の執念のような怖さに、これを観た男性はおそろしくて結婚をためらうかもしれませんね。
でも、違う視点から観ると、3周くらいまわってコメディっぽく思えてきます……。

【今日のまとめ】

バレンタインだというのに、スイートのかけらもない、苦い苦い、憂鬱な気分になる映画を紹介してしまいました。

どちらの映画にも共通するのは、男は鈍感で女は怖い!?
男が悪い! 女が悪い! ではなく、どっちもどっち、【両成敗】なのであります。

カップルで一緒に観たら気まずくなること山の如しですが、あえてこういう映画を観て、あぁじゃないこうじゃないと話をすることで、相手の本質や本音が見えてくるかも?
しかし……失敗しても責任は負えませんので、そうなってしまった時は景気付けに「バレンタイン・キッス」でも歌って、♪シャラララー♪とめげずに立ち上がってください。


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■ブルーバレンタイン(2011年)
監督・脚本:デレク・シアンフランス
出演:ライアン・ゴズリング、ミシェル・ウィリアムズ

■ゴーン・ガール(2014年)
監督:デヴィッド・フィンチャー
出演:ベン・アフレック、ロザムンド・パイク

隔週水曜更新。次回の更新は2/15(水)です。

更新日:2019/1/8
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