【第29回】クリストファー・ノーラン監督の想像力と創造力にひれ伏す作品3選
「ちょっと何言ってるか分かんないです」
筆者:こしあん
映画・海外ドラマ、読書、お笑い、カメが大好き。特技はイントロクイズ(80年・90年代ソング限定)。
怖がりのくせにホラーとミステリーが大好きで、生まれ変わったらFBI捜査官になりたい。
休日にどれだけ家にこもっていてもまったく苦にならない超インドア派。
ゆるい解説と小学校から上達していないイラスト(ときどき)で、好きな映画を紹介していきます。
クリストファー・ノーラン監督の想像力と創造力にひれ伏す作品3選
9月9日に公開され、大ヒット上映中の『ダンケルク』。『ダークナイト』『インターステラー』などで知られるクリストファー・ノーラン監督が実話をもとに描く戦争映画です。
『ダンケルク』の予告はコチラ。
私がノーラン監督の作品に初めて出会ったのは、2001年に公開された『メメント』。「なんだこの映画はーーー!」という大きな衝撃を受けたもんです。そして新しい作品が出るたびに、毎回「なんだこの映画はーーー!」となるんです。
CGを極力使わず、本物の映像にこだわることで有名ですが、「うそでしょ? これ絶対、CGでしょ?」というような映像も実際に撮影した映像だったりするので、最上級の褒め言葉として“変態”の称号を授けたいと思います。
ノーラン監督を超えるのはノーラン監督しかいない。映像も脚本も素晴らしく、映画という枠を超えた新しい体験をさせてくれる。数ある作品の中から、私好みの作品をなんとか3つに絞りました。
ダンケルク(2017年)
セリフはほとんどなく、おおげさなドラマもなく、徹底的に無駄を削ぎ落とし、音と映像だけで魅せる。
ものすごい臨場感。
説明などもあまりないので、例えるなら、いきなりタイムスリップして戦場に飛ばされて、目の前にいる兵士は敵なのか味方なのかもわからないまま、ギリギリの極限状態でとにかく生きろ、みたいな感覚。
これはもう【鑑賞】ではなく【体感】。
とにかく、音がスゴい。
ドイツ軍の姿をまったく映さないところも、戦争の恐ろしさを上手く表現してるなぁと思いました。あと、“カチカチカチカチカチ……”という時計の針の音で表す緊張感も素晴らしい。
【陸 1week】
ダンケルクの海辺で、ドイツ軍に狙われながら自国への脱出を図るイギリス軍兵士
【海 1day】
イギリス軍の救出に船で向かう民間人の親子と友人
【空 1hour】
救出作戦のため、ドイツ軍の攻撃を阻止しようとするイギリス空軍パイロット
この3つの時間軸が最後にひとつになる構成の素晴らしさったら!
軍人も民間人も、イギリス人もフランス人も。
それぞれの立場での苦悩に、涙がこみ上げてきて、止まらない。
胸が熱く、苦しくなります。
誰か一人のヒーローを描くでもなく、声高に戦争反対のメッセージを掲げるでもなく、お涙頂戴の家族愛を押し付けるでもなく、淡々と静かに、生き抜く人々を描くところが、私は好き。
今、観るべき映画。
インセプション(2010年)
人が夢を見ている最中に、その潜在意識の奥深くに潜り込み、相手のアイデアを盗んだり、別の感情を植え付けて操作するというSFアクション。大好きな今敏監督によるアニメ映画『パプリカ』のようでもあり、遠い昔に観たジェニファー・ロペス主演のサイコ・ホラー『ザ・セル』のようでもあり、とにかく、私好みのジャンルであります。
そして主演はレオ様ですから~~~~~。
最初に観たときはストーリーが難解で、ノーラン監督お得意の“なんの説明もない”まま話がどんどん進んでいくので、何度か「ちょっと何言ってるか分かんないです」状態になったけれど、2回観るとすごくよくわかる! このイマジネーションは、とにかく素晴らしいの一言。
そういうことか~と、すっと頭に入ってきて、めちゃくちゃ面白い! この感覚、すごく気持ちよかったんで、勝手ながら【ノーラン・ランラン現象】と名付けたいと思います。ノーラン監督作品は、2回目からが面白い。
ホテルの廊下で映像を回転させながら敵と闘うシーンがあるのですが、絶対にCGだと思っていたのに、実写だというから驚き!
無重力空間をセットで造っちゃったんだって! 何ソレ、すごすぎて怖いわ!
床が天井になったり、天井が床になったりする中で、闘いながら時間内に逃げるという技。このシーンを演じたジョゼフ・ゴードン=レヴィット、もう、宇宙飛行士になれますな。
ここで『インセプション』あるあるを一つ。
『シャッターアイランド』とちょいちょいごっちゃになる。
メメント(2001年)
私にとって初めてのノーラン作品。ものすごく斬新でスタイリッシュな映画でした。
主人公は、10分間しか記憶がもたないという短期記憶障害の男・レナード。発症以前の記憶はあるが、それ以降は記憶を失い、数分前の出来事もすべて忘れてしまう。そんなレナードが、妻を殺した犯人を捜し出すというクライム・サスペンス。
なんせ10分しか記憶がもたないので、ポラロイド写真を撮ってメモを書いたり、身体にタトゥーを入れたりして、大事なことを忘れないようにするも、人の顔も覚えられないから、誰を信用していいのかも分からない。そして自分自身のことも分からない。これって本当に恐怖ですよね。
この映画を観に行った時に、客席でお笑いトリオのインスタントジョンソンのじゃいを見かけました。後日テレビで、おそらくこの映画からヒントを得たであろう、すぐに記憶を忘れる男のネタをやっていたのですが、天然ボケっぷりが見事にハマっていて面白かったことを覚えています。
観る者の想像力と創造力を刺激し、スタイリッシュな映像美で魅了する。
そして観るほどにストーリーがよくわかり、新たな見解と発見が得られる。
「ちょっと何言ってるか分かんないです」ってなっても、あきらめないで!
2回観ればわかるはずだから~。
“時間と空間を操る映像の魔術師" ノーラン監督の世界にどっぷりハマっちゃうのです。
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■ダンケルク(2017年)
監督・脚本:クリストファー・ノーラン
出演:フィオン・ホワイトヘッド、トム・ハーディ、キリアン・マーフィ
公式HP
■インセプション(2010年)
監督・脚本:クリストファー・ノーラン
出演:レオナルド・ディカプリオ、渡辺謙、ジョゼフ・ゴードン=レヴィット
■メメント(2001年)
監督・脚本:クリストファー・ノーラン
出演:ガイ・ピアース、キャリー=アン・モス、ジョー・パントリアーノ
WOMOシネマ伝道師こしあんの『ぐるぐるシネマ迷宮』 筆者だけの思い出調味料満載の懐かし作品から、あまり共感を得られないようなディープな作品まで、密かな魅力いっぱいのシネマ迷宮へようこそ。出口はたくさんあります。