「歌」を通して、自分らしく居られる場所／カラオケBAR でりばりー

「今日は、なんか歌いたい気分だ」そんな日の夜の選択肢として紹介するのは、静岡市葵区両替町にある『カラオケBAR でりばりー』。バーに慣れていない人にも優しく心地よいお店の魅力や、店主の和泉（いずみ）さんとこれまでのお店のストーリーなどをご紹介。

歌いたい夜の過ごし方

大人数での飲み会帰りや、仕事終わりの帰り道。
自宅以外の場所で、肩の力を抜いてゆっくり過ごしたり、お酒を飲んだりする居場所が欲しいな…ふと、そう思ったことはないだろうか。

隠れ家のような居酒屋、夜喫茶、銭湯やサウナ…たくさん選択肢はあるけれど、

「今日は、なんか歌いたい気分だ」

と思って足を運んだのは、賑やかな両替町のビルの一角にある「カラオケBAR でりばりー」。
知り合いから教えてもらったこのお店。「ひとりでも楽しめるよ」と話は聞いていたけれど、いざ単独で足を運ぶとなると勇気がいるものだ。

エレベーターで7階へ向かうと、うっすらと暗いロビーの奥に照らされた「でりばりー」の文字。思い切って少し重いその扉を開けてみた。

ーーーー「いらっしゃい」と出迎えてくれたのは、店主の和泉（いずみ）さん。

「お店は初めてですか？カウンターでも、テーブルでもお好きな方へ」と穏やかな雰囲気で案内してくれた。せっかくなので、和泉さんとも話せそうなカウンターへ座ることに。

ここでは、お客さんはお酒やソフトドリンクを楽しみながら、自由にカラオケを楽しむことができる。

和泉さんが立つカウンターの後ろには、常連さんのウイスキーや焼酎のボトルがずらり。このお店が、たくさんの人に愛されている様子がわかる。

楽しげな雰囲気に身を委ねて

好きなお酒を注文し、常連であろう人の楽しそうに歌う明るい雰囲気にゆったり身を委ねたり、隣に座ったお客さんと店主との会話に自然と自分も混ぜてもらったりしながら、次第に輪が広まっていく。
気を遣わず、自分らしく居られる場所であることに、少し安堵した。

「お客さんが話しやすい雰囲気や、人見知りしないような空気感を心がけています」と話す和泉さんのお客さんとの接し方は、バーに慣れていない人にも優しく、心地よい。
初めて訪れた時には、さりげなく声を掛けてくれる良い距離感。何度か会話を重ねると、友達のような安心感があるのだ。

両替町にある1号店「カラオケBAR はぷにんぐ」の2号店という形で、2020年4月オープン。しかし、その時期はまさにコロナ禍真っただ中、1回目の緊急事態宣言が出され、開店から1週間あまりで休業を余儀なくされてしまった。

厳しい情勢の中で経営していくことは苦しかったが、お店の空気感や和泉さんを慕い、徐々に通ってくれるお客さんが増えてきたのだという。

オーセンティックな雰囲気で女性のお客さんや30〜40代に愛される1号店に比べ、カジュアルな雰囲気の「カラオケBAR でりばりー」は、20代からと比較的若い層に愛されながらも1号店のファンである30〜40代からそれ以上のお客さんも訪れるという。

「初めて来られる若い方も多いですよ。最初は誰でも緊張するとは思いますが、一度来てみてもらうと、そんなに気を張らなくてもいい場所だと知ってもらえると思います」

バーに立つようになったきっかけ

もともとはIT系企業で営業を担当していた和泉さん。なぜ、カラオケバーを始めようと思ったのだろう。

「営業時代にやっていた、ややこしい契約書類をまとめたり、事務や会計みたいなまどろっこしい作業が僕ちょっと苦手で。それよりも、わかりやすく“人と人”っていう関係性の『接客』のほうがが向いていると思ったんです」

歌が得意だった和泉さん。かつて1号店のお客さんだった時、オーナーに「それならここの2号店をやってみない？」と声をかけてもらったのだという。

お店に通うお客さんは、和泉さんのことを「ほんとうに裏表がなくて、商売的な関係性を超えて、誰からも慕われる人なんだよね。面白い男だよ（笑）」と楽しそうに話す。

「歌」を通してつくる仲間

「カラオケBAR でりばりー」では、さまざまな世代が混じり合い、「歌」を通して仲間を作ったり、自分にぴったりな居場所を見つけていく。

和泉さんと一緒に、自分も一曲歌ってみる。気分に任せ思い切り声を出すと、日ごろ溜まった鬱憤などは、どこかへ行ってしまった。

「カラオケBAR でりばりー」では、「初めまして」の人どうしがデュエットで歌ったりすることもあるという。

ここで交わされる「はじめまして」は、お店の外でのそれよりもきっとあたたかい。