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高齢の親の命を守る! 子世代が実家でチェックすべき防災知識

高齢の親の命を守る! 子世代が実家でチェックすべき防災知識

WOMO世代にとって、親の安全や実家の防災対策は、気がかりではあるものの、十分に話し合えていない話題のひとつでは。今回は「高齢者の防災」をテーマに、普段の備蓄や片付け、災害時の避難や防犯対策についてご紹介。親目線で防災を捉えれば、今までとは違った備えの必要性が見えてくるはず。

監修は、浜松防災士会会長の山岡美須永さん

浜松防災士会会長。静岡県ふじのくに防災士会会長。浜松北災害ボランティアコーディネーター。消費生活アドバイザー。阪神・淡路大震災をきっかけに、地域に根差した防災講師として活動。子どもから高齢者まで幅広い世代を対象に、防災啓発や避難所運営訓練などを実施。消費生活アドバイザーの視点も生かし、災害と詐欺被害防止の両面から、安心・安全な地域づくりに尽力している。

うちの親はひとりで逃げられる? 避難の判断基準


「池ヶ谷さん、こんにちは! 防災士の山岡です」


「山岡さん、今日はよろしくお願いします。年齢を重ねるにつれ、離れて暮らす親の健康や安全が不安になります。ものが多い部屋や、親の動作が少しずつゆっくりになるのを帰省のたびに見ると、災害が起きたら、逃げ遅れてしまうのでは……と」


「実際、災害時に高齢者が逃げ遅れるケースは少なくありません。身体能力の低下はもちろんですが、もうひとつの理由が『正常性バイアス』。経験則によって“大丈夫”と自己判断してしまうんです」


「たしかに、高齢者は自分の経験があるからこそ、他からの忠告を素直に受け入れるのが難しい側面はありそうですね……」


「だからこそ、普段から警戒レベルについて知っておくことが重要。災害時の避難については2026年防災気象情報が分かりやすく変わりました。5段階のレベル表示でレベル3相当の情報が出ると高齢者等避難の情報です。台風や大雨の時にレベル3の避難情報が出れば、、たとえ不発に終わっても、まずは逃げるということが大切です」


「“高齢者”って、65歳以上だったら避難したほうがいいということですよね」


「ここでいうレベル3の高齢者とは、数字的な年齢ではなく、“避難に時間を要する人”という意味。例え若くても、足腰の悪い方などは該当します。それに、自分のことを高齢者と認識するのは気持ち的にもハードルがあるもの。歩いて避難所まで行けるか、避難ルートを把握しているか、状況を判断できる認知機能が保たれているかなど、第三者から見て冷静に判断し、“レベル3になったら逃げる”という共通認識を、親子で持っておくと良いでしょう」


「たしかにそうですね。ただ、それでも腰が重くなってしまう親の顔が目に浮かびます」


「レベル4は“危険な場所から全員退避”となりますが、実際、水害でレベル3から4に繰り上がるまで数時間しかないこともありました。迷っていること自体が命取り。不発に終わってもいいんです。まずは逃げること」

「親にもプライドがあるので、例えば“過去にこんなことがあった”と事例をもとに語るとか、“近所の◯◯さんもそうするらしい”と近しい人の名前を借りるとか、工夫しながら根気強く伝えると良いかもしれません」

住まいの備え:避難経路の確保と暗闇を意識した対策


「自宅についても考えたいです。実家はとにかくものが多くって」


「はい。親世代は思い出深いものを捨てられない傾向があります。まずは平時から少しずつ整理を進めること」

「そのうえで、避難経路を妨げたり怪我をしたりしないよう、家具やモノの固定をしましょう。大きな地震では、ピアノほどの重さでも1メートル動くといわれています。家具は固定している家が多いかと思いますが、盲点になるのが食器など小物系の収納棚の中。滑り止めシートを敷くといいです」

「ちなみにわたしの場合、スリッパや眼鏡などを寝室の枕元に括りつけてあります。たとえばスリッパは、小さく丸めて巾着袋に入れ、その紐をベッドフレームにしっかりと結びつけておくといった具合です。軽いものは、地震で思わぬ方向に飛んでいってしまうので、最低限の小物も固定しておくことをおすすめします」


「また、夜の災害などで部屋が真っ暗になると、大きな怪我をするケースは少なくありません。そんなときには蓄電型の電球。蓄電なので停電時でも使え、種類によっては7時間ほど点灯し続けるものも。2000〜3000円程度で手に入るので、寝室と玄関など、複数備えておくと安心です」


「親と一緒に片付けをしながら、電球替えや家具の固定、場合によっては配置換えを手伝うのがいいかもしれませんね」


「そのとおりです。また、いざ災害が起きたとき、若い方は『ブレーカーを落とす』『ガス栓を閉める』といったチェックリストを頭の中で描けますが、高齢になるとそうもいきません。そういった意味で、感震ブレーカーも注目の防災アイテム。これは震度5強以上の揺れがあった際に自動で電気を遮断するため、通電火災※のリスクを減らせます。市町によっては設置に助成金が出るところもあるので、調べてみるといいでしょう」

※地震や台風などの災害による停電が復旧し、電気の供給が再開されたとき(通電時)に発生する火災

身体と衛生の備え:高齢者ならではの必需品


「防災バッグの中身について、親世代ならではのアイテムを知っておきたいです」


「まず、日ごろの持ち歩き、防災バッグ、備蓄品と皆さん混同されていますが、分けて考えましょう。防災バッグには、日ごろの持ち歩きアイテムにプラスして2〜3日分を準備します」

「高齢者ならではのアイテムとしてまず思い浮かぶのは薬で、普段飲んでいるものは最低1週間分ほど備えておくと安心です。災害時は処方薬が手に入りにくいため、命にかかわる持病の薬は特に重要です。医師や薬剤師に相談すれば、処方日数を長めにしてもらえる場合もあります」

「離れて暮らす親とは、お薬手帳の内容を写真で共有しておくとよいでしょう。わたしの場合、実物はビニール袋で保護し、薬類と一緒に携帯しています」


「ほかにも、普段から持ち歩くと安心なものはありますか」


「親世代にとって、口や目などの粘膜を乾燥から守るアイテムは非常に重要。目薬やリップクリーム、飲みもの、あめ、水不要の洗口液などを持っておくといいでしょう」

「また、下着が洗えず、デリケートゾーンから感染症になるリスクも。防災バッグには替えの下着はもちろん、洗濯用に折りたたみバケツなども用意しておくのをおすすめします」


「やはりどうしても荷物が多くなりますね」


「そんなときは、ポケットがたくさん付いたベストが便利。重たすぎる防災バッグは親世代にとっても負担になります。防寒になるうえ、ポケットごとに整理しながら持ち運べるので一石二鳥です」

食の備え:食べ慣れたものでローリングストック


「いちばん気になるのは食の備えです」


「食べものは“普段食べ慣れた食事”が鉄則です。特に親世代の身体は環境変化に適応するのが難しいもの。避難所ではパンやお米、カップラーメンなどの主食が中心になりがちですので、煮ものの缶詰や、野菜入りスープがあると助かります」

「ゼリー飲料やそうめんなど、スルスルッと食べられるものもおすすめ。そうめんは少量の水があれば数分で茹でられますしね。あと、保存食である梅干しは万能選手。唾液の分泌を促すだけでなく、食欲アップにもつながります」


「梅干しは思いつきませんでした。伝統食はすばらしいですね」


「さらに重要なのは、食べたら“出す”という身体の循環を止めないこと。トイレを我慢したり、水分や食事を控えてしまったりする方もいますが、それが脱水や血栓につながる危険性があります」

「携帯トイレやトイレットペーパー、消毒用ジェル、ごみ袋まで一緒に備え、使った後のことまで考えておきましょう。高齢者にとって、携帯トイレは粉で固めるタイプよりも、吸水シートタイプの方が扱いやすいかもしれません」


「食べることと同じくらいトイレも大切。年齢関係なく心に留めておきたいことですね」

家族の手が届かない場合の「ご近所連携」と「二次被害防止」


「離れて暮らしていると災害時すぐには親元へ行けません。子世代がほかにできることはありますか」


「家族だけで守ろうとせず、ご近所とつながりをつくることが大切。帰省時に近隣へあいさつをする、自分たちの連絡先を伝えておくなどできることはたくさん。気にかけてくれる人の存在が心の大きな支えになります」


「人とのつながりは、想像以上に大切なんですね」


「高齢者の場合、孤立すると心身の機能が低下しやすくなります。また、多いのはペットを理由に自宅避難を選ぶケース。避難所に連れて行けず心配な気持ちはわかります。ただ、何かあったときに気づかれにくく、最悪の場合、孤独死する可能性も。人同士のリアルな関係性が防災につながるということを理解しておきましょう」

「わたしは万が一のときに探せるよう、家族とペットの写真を備えています。連絡先を書いた『ヘルプカード』などを用意しておくのもいいですね」


「災害時は高齢者を狙った詐欺が増えるとも耳にします」


「被災直後の疲弊した心身につけ込み、高額商品を売りつけられたり、親切な修理業者を装った悪質商法が現れたり。宗教団体が近づいてくることもあります。怖いのが、避難生活を共にする内のひとりが購入してしまうと、集団心理で次々騙される、といったケースもありました」

「こういうときも大事なのが連携。ひとりで判断せず周りに相談すること。行政からの広報にも目を通し、お互いに声をかけ合えるつながりが、二次被害を防ぐ最大の力になります」

最後に、山岡さんよりメッセージ


「漠然とした不安から具体的な対策が見えてきて、少しホッとしました」


「そうですね。防災は特別なことではない、という認識は少しずつ浸透していると感じますが、高齢者防災の場合は特に、日頃の備えがそのまま命につながるということ。家の片付けから備蓄、ご近所との関係性づくりなど、小さな積み重ねが、“いざ”というときの安心に直結します。まずは親と防災について話すところからはじめてみてくださいね」


「山岡さん、本日はありがとうございました!」

※本コラムに掲載されているグッズは山岡さんの私物であり、特定の商品を推奨するものではありません

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更新日:2026/9/1

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